つよい体をつくる離乳食と子どもごはん 山田 奈美 (著)

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つよい体をつくる離乳食と子どもごはん

健康で丈夫な子どもに育てたい、と食にこだわるお母さんたちを応援します。

離乳食教室をしていると、「離乳食はいつから始めればいいですか?」という質問をよくいただきます。

答えは、「その子に聞くべし」。

教室に来られる方のなかには、4ヶ月早々から始めている子もいれば、1歳半になってもあまり進まない子もいます。ほんとに千差万別。

人それぞれまったく違います。むしろ違っていいのです。

食べる準備とは、消化能力が整っているかということ。よく「食べものに興味を示すようになったら離乳食の始めどき」などと言われますが、それだけでは不十分。

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目安としては、前歯が生え始めていること。よだれ(唾液)がしっかり出ていること。

この2つが離乳食を始めるうえでの重要なポイントだと思います。それ以前の早すぎる離乳食は、便秘や下痢、誤飲やアレルギーなどのトラブルを起こす一因となります。

赤ちゃんの胃腸はとにかく未熟です。

食べものを消化吸収する能力もほとんどありません。それまでは母乳かミルクの液体食だったのですから当然のこと。

少なくとも前歯の2本ぐらいは生え、よだれもいっぱい出るようになってから始めたほうが、胃腸の消化を助けることができるのです。

最初は歯ではなく歯茎を使って食べるのだから、歯は関係ないのではと言う人もいますが、乳歯が生えるということは、もう食べものが入ってきてもいいよという体の合図のように思えるのです。

なにより歯が生えてから始めたほうが、手間のかかるどろどろの流動食を与える期間が短くてすみます。

早めに固形食に進むことができますから。

早すぎる離乳食はトラブルのもと!?

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離乳食を始めるタイミングはどうやって見極めればいいのでしょうか。赤ちゃんは腸が未完成で生まれてくると言います。

大人と比べて腸管も薄<、消化能力もほとんどありません。

腸のバリア機能も未熟なため、病原菌や細菌などの異物(抗原性たんぱく質)も腸をスルーして全身に吸収されやすくなります。

これを抑えるのが母乳です。母乳に含まれる免疫グロブリンAという抗体が、胃腸の粘膜を保護し、ウイルスや細菌、アレルギーのもとになるたんぱく質から赤ちゃんを守ってくれているのです。

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母乳には赤ちゃんを異物から守るこんなすばらしい働きもあるのですね。

腸だけでなく赤ちゃんは口から胃、小腸、大腸、肛門までの消化管全体が未熟です。

唾液腺は2歳になってやっと成人と同じ構造になります。胃は出生時にはわずか50ml程度しか入りません。

食べものの消化吸収に必要な消化酵素を分泌する膵臓も未熟です。ですから消化できるのは、糖質とおっぱいに含まれる乳たんぱくと乳脂肪分のみ。

それ以外の栄養素の吸収はとても困難とされます。

2008年にはオランダやアメリカの研究で、離乳食開始が遅い子どものほうが、アトピー性皮膚炎や喘息、食物アレルギーのリスクが高いという結果が発表されました。

日本でも2012年に同様の研究結果が出されています。

でも、消化管の発達を考えれば、早いうちに離乳食を与えることが胃腸の負担になるのは容易に想像がつきます。

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栄養状態のよい健康な母乳であれば、赤ちゃんの消化管が食べものを受け入れる準備ができるまで、母乳のみで育てるほうが安心なのです。

むしろ、早くから消化しにくいたんぱく質や脂肪分などをとると、うまく分解されずに腸内に未消化で残り、それが血中に取り込まれてアレルギーの一因となるばかりか、全身に影響する可能性もあります。

赤ちゃんの腸は、1歳ぐらいで完成すると言われます。

それまではアレルギーを起こしやすい食品や消化のよくないものは避け、離乳食もゆっくりと始め、ゆっくりと進めるのがいいのです。

「全然、離乳食を食べてくれない」と悩んでいるお母さんも焦る必要はまったくありません。

子ども自身がまだ消化吸収できないから、本能的にいらないと感じているのであって、「ゆっくりでいいよ」と、教えてくれているのだと思います。

ミルクの場合も、腸の成長に合わせてゆっくり始めればいいのです。

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