EVガラパゴス 船瀬 俊介 (著)

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プロローグ

売り上げ三分の一! トヨタ絶望の衝撃予測――テスラ一六倍の爆速成長に追いつけるのか?

EV革命は一〇〇年に一度の大産業革命だ

VW、テスラ、2トップ独占

EV(電気自動車)は一〇〇年に一度の産業革命である。EV化の波に乗り遅れる。それは経済の沈没を意味する。大半の国民は溺死する。

その悪夢が日本に迫っている……。
「――二〇四〇年、トヨタの売り上げは、現在の一一〇〇万台から三五〇万台に激減する」

なんと三分の一への激落ぶりだ。衝撃予測が自動車業界を震撼させている。

それが「パイパー報告」(PiperReport)。アメリカの投資顧問会社パイパー・サンドラー社
が二〇二一年六月に発表した予測データだ。

予測シミュレーションによれば、世界新車販売に占めるEV割合は三〇年までに四五%、四
〇年には九四%を占める。

わずか一八年後、世界の自動車地図は、ほぼ完全にEVに塗り替わっている。

ここで重要なのは、トヨタ・プリウスなどのハイブリッド車(HV)が一切、含まれていな
いことだ。

HVは、ガソリン車(カーボン・ビークルCV)と電気自動車(エレクトリック・ビークルEV)の二つの機能を搭載している。

だから半分はガソリン燃料でCO2を排出する。よって〝ゼロエミッション〞(排気ガスを排
出しない)とみなされない。

つまりCVの仲間だ。当然、販売禁止対象となる。

「パイパー報告」によれば、わが「トヨタ」は現在の世界シェア一一%を四・三%に減らして
いる。

目を覆う没落ぶりだ。苛烈なEV競争に惨敗を喫しているのだ。

では――。

EV開発レースの勝者は、だれか?

トップは「フォルクスワーゲン(VW)」(独)だ。売り上げ九二〇万台。シェア一一・四%。 

二位は「テスラ(TESLA)」(米)。八二〇万台、シェア一〇・一%……。

この2トップが近未来の世界自動車業界に君臨する。中でもめざましいのが、テスラの驀進だ。

二〇二〇年の生産台数は約五〇万台。むろん、すべてEVだ。

それが二〇四〇年には八二〇万台……。わずか二〇年で一六・四倍もの爆速成長を果たしている。

そこには、CEOイーロン・マスクのカリスマ的経営手腕が遺憾なく発揮されている。

EU二七か国二〇三五年までにEV化

この時点で、世界大手メーカーは、すべて、完全EVシフトを完了している。

「……米自動車大手のゼネラル・モーターズ(GM)とフォード・モーターは、EVへの転換
に成功して世界シェアを維持している。一方、トヨタ自動車は苦戦し、市場シェアは現在の約
一一%から四〇年には、四・三%に低下する見通し……」(同リポート)

すでに世界のEVシフトは猛加速している。

二〇二一年、EU(ヨーロッパ連合)二七か国は二〇三五年までにガソリン、ディーゼル、
ハイブリッドのCO2排出車(CV)の全面禁止を決定している。

ここで全世界のEV化は、ガソリン車禁止をともなっていることに注目してほしい。

これは国家による強権力で、脱石油を加速していることにほかならない。

EUのEV化決定は、国際的連合においても、内燃機関車を追放する……ということだ。

さらに先進諸国のEV化は、そのEU決定すら上回っているのだ。

新車EV率、ノルウェー九〇%、日本二%の大差……

世界最悪のEVガラパゴス日本

次の図版は、主要国の「EV化スケジュール」だ。

ほとんどの国々が、ハイブリッドを含めCVは軒並み「販売禁止」である。この現実に驚かれるはずだ。

ノルウェーは二〇二五年までの販売禁止を公表している。

同国は、すでに二〇二一年時点で新車約九〇%がEVだ(PHEV含む)。

二〇二二年には新車販売一〇〇%がEVとなるのは確実。よって国家目標の大幅前倒しで、完全EV先進国となる。

ちなみに二〇二一年、日本の新車販売に占めるEVの割合は二%……。

じつに先進国ノルウェー九〇%に比べると四五分の一!

これほどまでにEV化で出遅れている国は、世界を見回しても日本だけだ。まさに日本こそ〝EVガラパゴス〞の称号(?)がふさわしい。

ノルウェー同様、最速二〇二五年を期限にCV販売禁止と定めているのがオランダだ。与党労働党が提案して、議会下院を通過している。

二〇か国「三五年禁止」に合意

つづいて禁止タイムリミットを二〇三〇年としているのが、スウェーデン、ドイツ、インド
だ。

とくにドイツは年間三〇〇万台強を売り上げる欧州屈指の自動車大国。だから三〇年という目標期限の意味は大きい。

二〇四〇年と余裕をもたせているのがイギリスとフランス。

しかしイギリスは、さらに二〇三五年と前倒しを決定。

「ガソリン車禁止、英など二〇か国超が合意」(『毎日新聞』二〇二一年一一月一〇日)

COP26(国連気候変動枠組条約、第二六回会議)議長国のイギリスは一一月一〇日、以下を
発表した。

「……二〇四〇年までに新車販売をEVなど二酸化炭素を排出しない〝ゼロエミッション車〞
に移行することで、二〇か国超が合意した」

賛同国は、イギリスほか、ニュージーランド、エルサルバドルなど……。

これら二〇か国は、「世界全体で四〇年までに、主要市場では遅くとも三五年までに、新車
販売すべてを〝ゼロエミッション〞にする」と合意した。

爆速驚嘆の最新EVメーカー 

さらに注目すべきは、中国の動向だ。

いまや年間販売台数は約二五〇〇万台というケタ外れの自動車大国だ。

それはアメリカの三倍強。経済成長いちじるしい同国は、さらにウナギのぼりで自動車販売
台数を急上昇させている。

中国は二〇一九年以降の「EV化スケジュール」を公表している。

それによれば、ガソリン、ディーゼル、ハイブリッド車とも販売禁止は行わない。

ただし「一充電三〇〇キロ走行可能なEVの台数比率で二〇一九年に二・三%、二〇二〇年に二・七%……と漸次、増加させていく」(工業情報化部)

その後も同国は逐次、EV化方針を発表している。

第二位の自動車大国アメリカは、中国にならっている。

「……五六〇キロ以上走行可能なEV台数比率を二〇一八年一・一%……二〇二〇年二・四%…… 二〇二五年、五・五%……と漸増させていく」 

欧州勢にくらべて慎重に見える。しかしEV競争の先陣を切っているのは米中二国なのだ。

その中でもきわだってゲームチェンジャーぶりを発揮しているのが、イーロン・マスク率いる「テスラ」だ。世界のEV開発競争レースでも、独走態勢といっても過言ではない。

中国勢もスゴイ……。若い新興EVベンチャーが、先行する「テスラ」に肉迫している。 

とくに「NIO」「BYD」「宏光」「Xpeng(小鵬汽車)」「Aion」の五強からは目が離せない。

これらEVメーカー爆速猛進ぶりには、ただただ驚嘆の一言だ。

中国のEV販売台数は、まさに〝爆発〞という形容がふさわしい。

二〇二〇年、約一二〇万台が二一年には三〇〇万台超と約三倍増。二〇二二年には六〇〇万
台にたっする。二一年度比で二倍増という爆増ぶりなのだ。

「テスラ」株、史上初の一兆ドル超えで爆騰……

二〇三五年世界のEV一一倍増

以上――。

世界のEV化猛驀進に、あなたは絶句したはずだ。

「初めて知った……」。当たり前だ。テレビ、新聞、さらには政府までもが、これら情報を故意に隠蔽してきたからだ。

日本国民に、これら真実を伝えてはならない。

わたしは、そこに深い悪意を感じる。

新車販売でのEV比率がノルウェー九〇%、日本二%……(PHEV含む)。

これは、どう考えても異常である。欧州では、ほぼ新車三台に一台はEVだ。これが現在では当たり前だ。

「……内燃車からの撤退を発表する自動車メーカーも増えている。今後、電動車へのシフトが
加速するとみられる。

HV(ハイブリッド車)、PHEV(プラグイン・ハイブリッド車)、EVが順調に伸びるが、車両価格の低下やインフラ整備により長期的にはEVが電動車の主役となる。

世界で二〇二二年にはEV販売台数がHVを上回る。二〇三〇年に、EVシェアは四五%、
二〇三五年には、EV販売台数が二〇二〇年比で一一・〇倍の二四一八万台に達すると予測す
る」(「パイパー報告」)

こうして二〇三五年にはEVがHVをも抜き去る。

ヨーロッパでも、完全EVが一年で五三・三%も伸びている。

これに対してHV(ハイブリッドEV)は七・二%減。水素燃料電池など代替燃料車は半減と明暗を分けている(「欧州自動車工業会ACEA」報告)。

その後、猛加速で世界市場を完全制覇する。

なかでも爆速の成長をとげるのが「テスラ」だ。

「……EVは二〇四〇年までに、従来の内燃機関車にとって代わる可能性がある。すでに世界一のEVメーカー『テスラ』は、この時点で高い市場シェアを維持している」(同)

パイパー社は、二〇二一年の「テスラ」目標株価を一二〇〇ドルとしている。

同年五月一八日、米株式市場で五七九ドルの年初来底値を付けている。

それが連日、連騰をつづけ、一〇月二五日には、ニューヨーク証券市場で株価が前日比で一二・六六%上昇、一〇二三ドルを記録。テスラ株は初めて一〇〇〇ドルを突破した。

時価総額も一兆二七〇億ドル。

この一兆ドル超えは、アマゾン、マイクロソフト、グーグルに次ぐ大記録だ。

一一月一九日、株価は一一三七ドル。まさに半年で倍増0! パイパー目標額一二〇〇ドルは軽く達成される見通しとなった。

モルガン・スタンレーもテスラの目標株価を、これまでの九〇〇ドルから一二〇〇ドルに急きょ上方修正している。

このテスラの爆発的成長を呆然自失の思いで見守っている企業がある。

トヨタである。同社はかつてテスラと業務提携を結んでいた。その後、提携解消し株式も売却してしまった。

保有していれば濡れ手に粟で二兆円超の利益が転がり込んだはずだ。まさに切歯扼腕……。

リーダーに先見の明がないと企業も国家も、滅びの道しか残されていない。


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