国家は「有罪(えんざい)」をこうして創る 副島隆彦 (著), 植草一秀 (著), 高橋博彦 (著)

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国家は「有罪(えんざい)」をこうして創る

2009年8月、上告が棄却され東京拘置所に収監された植草一秀氏は、2カ月にわたる服役生活を終えたのち、10月に出所した。

本書は植草氏の裁判(2006年の事件)を傍聴しつづけた貴重な記録から、“国策捜査”の構図を検証し、いかに司法権力が凶器と化すか、読者に警鐘を鳴らす。

また、公判記録の分析とともに、副島隆彦氏と植草一秀による対論を収録。

謀略部隊は生きている

副島 私は2004年4月8日の「品川駅事件」勃発当時から、事件の全体像を凝視してきました。植草事件は国家による謀略だと、はっきり書いてきた。

『売国者たちの末路』の「まえがき」にも、このように書きました。


売国者たちの末路

植草一秀氏は竹中平蔵ら、アメリカの指図のまま動き、犯罪的攻撃を仕掛ける者たちの毒牙にかかった。

狙われた愛国者は十字架に架けられる。

植草氏は日本国で「郵政民営化」という名の、日本国民の資産の強奪(アメリカに貢いだ)を行なった者たちの所業を、最も正確に分析指摘してきた一流の経済学者である。

そのために植草一秀は、竹中平蔵を守り護衛する、アメリカで訓練された公務員忍者部隊に狙われ、残酷なスキャンダル攻撃で痛めつけられた。

例の痴漢冤罪の謀略である。

(『売国者たちの末路』4ページ)

副島 2004年の事件から、もう8年がたちます。その事件を1回目とすれば、2回目が2006年9月13日の「京急事件」でした。

電車の中で痴漢をしたとされて、攻撃を受けた。

考えてみれば、この2回目の事件はダメ押しです。「2年前(2004年)の事件で植草一秀を潰した。と思ったら、植草はまた表舞台に這い上がってきそうだ。

だから今度は徹底的に叩き潰してやれ」ということだったのでしょう。やはり竹中平蔵の意団が大きく絡んでいる。アメリカに「自分の敵を潰してくれ」と要請した結果、ガラの悪い警察官たちが謀略部隊となって事件を仕掛けた。

謀略部隊は竹中平蔵の意を汲んで、あなたを痴漢現行犯として捕まえるという暴挙に出た。私は今でもそう信じていますし、この謀略部隊はなおも健在で、機能しているのだろうと思っています。

今年(2012年)の初めにも、経済誌の編集長がやられている。

植草 それは2月17日に「週刊東洋経済」の編集長が逮捕された事件のことですね。

京浜東北線の車内で、痴漢容疑で現行犯逮捕されました。

副島 そうです。そのときの報道を一部、引用してみましょう。

週間東洋経済の編集長を痴漢で逮捕「酔って覚えていない」と否認

電車内で女性2人の体を相次いで触ったとして、警視庁大森署は、東京都迷惑防止条例違反の現行犯で、経済誌「週刊東洋経済」の編集長、三上直行容疑者(46)横浜市磯子区峰町を逮捕した。

三上容疑者は事件当時、泥酔状態だったといい、同署の調べに「酒に酔っていて、よく覚えていない」と容疑を否認している。

同署の調べでは、三上容疑者は2月17日午後11時過ぎ、JR京浜東北線の品川駅ー大森駅間を走行中の20代と30代の女性の尻などを次々に触った疑いが持たれている。

居合わせた乗客が三上容疑者を取り押さえ、大森駅で駆けつけた同署員に引き渡した。

(産経新聞2012年2月19日)

副島 この三上編集長が逮捕される4日前、「週刊東洋経済」は「東京電力偽りの延命」と題して、東京電力を批判する特集記事を40ページにわたって載せました。

それ以外にも、「暴力団対策と企業」とか「落日パナソニック」などの、今の雑誌界には珍しい硬派の批判記事が評判を呼んでいたそうです。

植草 つまり企業、すなわち日本の財界にとって都合の悪い言論を、歯に衣着せぬ論調で掲載しつづけていた。

副島 だからやられたのだ、とインターネット上では書き込みが飛び交っていました。しかし、日本の大新聞やテレビは、まったくそんなことは伝えない。

私が数年前に開いた事例をお話ししましょう。

日本屈指の生命保険会社で副社長を務め、「将来は必ず社長になる」と言われていた人物がいました。

この人は愛国者で、役員会議などで「アメリカのデリバティブに投資するような、不自然な資金の運用はよくない」と公言していた。

するとある日、植草さん、あなたと同じように痴漢冤罪に陥れられて、一瞬のうちに社内の経歴が消えてしまったというのです。

他の有名大企業の役員にも、同じ目に遭った人がいる。

それこそ何十人もいるのです。表に出ないで消されていった。日本国にとって愛国的な発言や行動をとった、立派な経営幹部になるべき有為の人間たちが、痴漢冤罪で追い落とされていっている。

これは恐ろしい攻撃です。

植草さんが、きちんと手続きを踏んで再審請求をする、裁判を続けてゆくということは、闘い方として正当であり、常道です。

私は先ほど「植草さんが考える以上に現実は甘くない」と、あえて申し上げました。が、植草さん自身はいちばんひどい目に遭った当事者です。

当事者でしか分からないことがたくさんあるはずだ。当事者というのは第三者とは違う。

この簡単な事実が、実は非常に大事なのです。厳しい道が待っているとしても、生きている限り頑張りつづけるしかない。

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