常在菌と病原菌

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磯貝昌寛の正食医学【第122回】食養指導録 非結核性抗酸菌症

非結核性抗酸菌症

コンコンと咳をしながら、息も絶え絶えとした電話が何度もかかってきました。

咳き込むことが多く、会話をするのも時間がかかります。

肺炎のような症状だが熱は出ず、胸水と腹水が溜まっていたというのです。

それらが胃腸や肝臓などを圧迫していたようで、食べることができなくなり、やむを得ず胸水と腹水は病院で抜いたといいます。

抜いても血中の酸素濃度が極端に低く(70%程度)、肺の負担が心臓にまで及び、心不全を起こしていたというのです。

病院で詳しく検査をして非結核性抗酸菌症という肺の病気だったことがわかりました。そこから心臓へ過剰な負担がかかって心不全を発症していたのです。

非結核性抗酸菌症は国が難病指定している病気です。

引き金になっているのは、土壌や水回りに普通にいる抗酸菌だと云われています。

病原菌とも云えない普通の菌が、私たちの体の中で悪さをするわけがありませんから、私たちの体の問題であることは食養的な観点からいえばすぐにわかります。

非結核性抗酸菌症を発症したこの女性(70代)は大阪在住で、すぐに飛んでいけるほどの時間がありません。電話での食養指導では限界があります。

当の本人は咳と心不全で台所に立つどころではありません。

病院での処置は、胸水と腹水を抜いて酸素の呼吸器をつける以外にないといいます。免疫力が極端に落ちていて、抗生物質などのクスリを使えなかったのです( 食養的に見るとそれがよかった)。

電話でのやり取りで、彼女は無理を押して群馬の和道まで来ると言いました。旦那さんや息子さんたちも病院で処置ができないのであれば、母の意志を尊重して応援すると言ってくれたそうです。

11月9日(2021年)、彼女は携帯用の酸素ボンベをつけて、旦那さんに付き添われて和道に来ました。

彼女は相変わらずコンコン咳をしていました。心不全を防ぐためにも酸素吸入を怠ってはいけないと、専門業者が酸素吸入器を和道に設置しに来ました。

常時酸素吸入していなければならないわけではないのですが、日中咳が続いたり、呼吸が辛くなる前には酸素吸入した方がいいと言っていました。

夜間に関しては寝ている間は酸素吸入器をつけて寝てほしいという医師からの話があったといいます。

真生活という療法

そんな状態から合宿が始まりました。身長150㎝ほどの彼女の体重は34㎏。断食ができる体力はありません。

ただ、皮付きハト麦の入った玄米粥を和道の断食ではごくわずか徹底的に「噛む」のですが、これは皆さんと同じように噛んでもらいました。

噛んで噛んで噛みしめることで唾液腺が刺激されて、唾液腺が開放されます。お粥を噛むこと
で唾液がたくさん出てくるのです。

この唾液が細胞修復に大きな力を発揮します。

非結核性抗酸菌症の彼女、玄米粥をよく噛み、その爽快感を強く感じたといいます。

そして、合宿2日目と4日目に生姜湿布で首、お腹、腰、足をよく温めたのです。

師匠の大森英桜は生姜湿布は患部に20分を基本としていましたが、現代の人に20分は到底体の芯まで温まりません。

私は、体の芯が温まるまで生姜湿布をしています。1〜2時間くらい徹底して温めないと、現代の人は体の芯まで熱が届かないのです。

合宿期間中、ストレッチ、ウォーキングを中心に深い呼吸を心がけ、自分の体力に合わせてよく体を動かします。

非結核性抗酸菌症の現代医学的な対処は、呼吸器をつけてベッドで安静ということになるようですが、これでは腸や肺を鍛えることができません。

体力を少しずつつけていくことを目的に、よく動くことが大事なのです。彼女も毎日2~3㎞、ゆっくりウォーキングに励みました。

道場の中では足首まわしからはじめ、体全体をよく揉みほぐすようにストレッチもしました。

そして何より、合宿に参加された皆さんとよく会話したことも、すごくよかったのです。

よくおしゃべりすることが気持ちを明るくするだけでなく、よい呼吸法にもなっていたのです。

和道に初めて来たときは青白かった顔色も、帰る時には赤みがさしていました。旦那さんが迎えに来てくれたのですが、「奇跡が起きた」と言って喜んでくれました。

35度台だった体温も36・6度まで上がり、咳もほとんど出なくなりました。

2日目の生姜湿布をした後からは酸素吸入器も必要なくなり、合宿期間中、酸素吸入器をつけたのは初日だけでした。

合宿が終わった時の血中の酸素飽和度は95 %ですから、まったく問題ありません。

国が難病指定している病気もたった数日の食養生( 真生活)で症状が消えるのです。昔、桜沢如一が「いかなる病気も十日で治す」と銘打って取り組んだ真生活も、現代でも生かすことができるのです。

常在菌と病原菌

土壌や水回りに普通にいるという抗酸菌が、私たちの肺の中でなぜ炎症を起こしてしまうのでしょうか?

和道に来られた彼女の生活を通して診させていただいて、その理由がよくわかりました。

まずは大の甘党です。砂糖や人工甘味料をたっぷり使った甘いお菓子が大好きだといいます。

抗酸菌に限らず、菌のエサになるのは糖分です。

糖がある一定以上なければ菌は増殖することができません。

それでも人間は(住む土地によって違いますが)日本人であれば37度弱(36度後半)くらいの体温があれば、体内で腐敗菌が繁殖することはないのですが、36度以下になってくると腐敗菌・病原菌が増えてくるのです。

むしろ、腐敗菌や病原菌は、それらの菌そのものが体内の不要物質を燃やしてくれているのです。

体の中の掃除をしてくれていると言ってもいいでしょう。

この有難い菌を、抗生物質などで殺菌してしまえば、私たちの体の中ではゴミ( 毒素)はそのまま置き去りになってしまいます。

それでも私たちの体は自然そのものですから、また有難いことに、先の抗生物質にも負けない菌を生み出して、ゴミ(毒素)の掃除にとりかかるのです。

現代の西洋医学では、病原菌に対しては抗生物質で殺菌することが主になっています。しかし、それでは次々に耐性菌を生み出し、挙句の果てに私たちの体力を奪ってしまうのです。

耐性菌によって亡くなる人が年間1万人近くになるといいます。正確に言えば、耐性菌によって亡くなっているのではなく、抗生物質によって体力を奪われてしまっているのです。

彼女が大の甘党というのは、陰陽の目で見ると、砂糖や人工甘味料などの極陰性食品を欲しているわけですから、体の芯に強い陽性を抱えているという見方ができます。

彼女はモノへの執着が強く、家の中の片付けが出来ないといいます。

整理整頓はもちろん、必要ないモノも捨てられない。それは、陰陽の目で見ると極陽性です。

この強い陽性さが抜けていかないと、甘みへの欲求は減っていかないと思うのです。

しかし、陰性な砂糖や人工甘味料を原因とした抗酸菌を肺から追い出す( 必要なくなれば自然に退散する)には、砂糖や人工甘味料を一切入れずに中和するような食物を摂る必要があります。

海藻、根菜、味噌、お米がそれにあたります。そして何よりも、私たちの唾液が私たちの体を修復してくれます。

よく噛んで、ごはん、味噌汁、旬の野菜料理と海藻料理をいただくことが、抗酸菌が棲めない肺を作るのにもっとも大事なことです。

先にも触れたように、生姜湿布などで体をよく温め、さらに深い呼吸と運動で温めたら、この食事と相まって短期間で体は劇的に良くなるのです。

月刊マクロビオティック 2021年2月号より

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磯貝 昌寛(いそがい まさひろ)

1976年群馬県生まれ。

15歳で桜沢如一「永遠の少年」「宇宙の秩序」を読み、陰陽の物差しで生きることを決意。大学在学中から大森英桜の助手を務め、石田英湾に師事。

食養相談と食養講義に活躍。

マクロビオティック和道」主宰、「穀菜食の店こくさいや」代表。