あまり怒らず、かといって感情を抑えすぎずにゆったりとおおらかな気持ちを持つことは、精神的に安定しているだけでなく、体の健康のためにもいいのです。
最近の研究から免疫力の中心的な役割である白血球は、自律神経の支配を強く受けていることがわかってきました。つまり「病は気から」は科学的に立証されつつあるのです。
本書では、免疫力を上げる心の持ち方から、飲酒を「百薬の長」にする方法、効果的な入浴の仕方、徹夜が免疫力を落とすメカニズムなどをやさしく解説。
健康長寿のために40代から始めたい生活習慣が満載です!
百薬の長にする、お酒の飲み方
「酒は百薬の長」という言葉があります。お酒好きな人にとっては、都合のいい言葉ですが、本当はどうなのでしょうか。
アルコールは、体にはじめに少量入ってきたときは、異物を排泄しようとする反射作用が起こり、血管が開いて顔が赤くなります。
そしてしばらくの間は副交感神経を刺激してリラックスした状態をつくります。アルコールを摂ると一瞬気分が軽くなるのは、そのためです。
仕事を抱えすぎていたり、悩みがあるなど、強いストレスを抱えている人ほど、お酒を飲んで疲れをとろうとしがちですが、それは飲んだときに、気分が軽くなるからです。
ただし、アルコールが副交感神経に作用するのは、飲みはじめの1~2時間です。
疲れがとれたような気がして、気分が軽くなるのは、ほんのわずかな時間にすぎないのです。
アルコールが強いかどうかは個人差が大きいので、一概にはいえませには、日本酒ならば1~2合、ビールならば1~2本程度であれば、副交感神経を刺激します。
その程度の量、その程度の時間でやめておけば、いい気持ちになるのです。
それ以上飲み続けると、だんだんと興奮してきて顔色も青くなり、脈が速くなって、今度は交感神経が緊張してきます。
長時間飲み続けて飲む量もふえれば、交感神経緊張状態が長く続くことになります。
その交感神経の緊張が翌日まで残るのが二日酔いです。翌日、脱水症状になって尿が出にくくなり、脈が速い状態が続きます。
このように、二日酔いになるまで飲みすぎる傾向があるのは、ストレスが強い人です。ストレスから逃れるために、いい気持ちのほろ酔いの段階ではおさまらずに、つい飲みすぎてしまうのです。
もちろん、ただたんにお酒が大好きで飲みすぎてしまうという人もいますが、しばしば二日酔いなど悪酔いをする人は、仕事などのストレスが強いからでしょう。
アルコールを飲むことによって、一時的にストレスを発散することはできますが、それでは根本的な問題の解決にはなりません。
問題はストレスにどう対処すればいいかです。
それについては、次章でお話します。
飲みすぎが続けば、交感神経が優位な世界が続き、顆粒球をふやして免疫力を落とし、結果的に体を痛めることになります。
また、アルコール依存にもなりかねません。
時間は二時間以内で、量も適量におさめておくことです。この飲み方ならば、アルコールは副交感神経を刺激してリラックス効果があるのです。
私が以前に行なった沖縄の百歳以上の長寿者の調査では、ほとんどの人が毎日一合程度の晩酌をしていました。
毎日飲んでも、適量な飲酒であれば、まさに「酒は百薬の長」になるようです。
アルコールは、うまくつき合うことができればストレスを解消してくれるクスリになり、免疫力も高めてくれるというわけです。
たまに二日酔いになるまで飲むのは、若いときには仕方ないでしょうが、五十歳を過ぎたらくれぐれも自重することです。
怒らない
私たちの健康を司る免疫力と自律神経の働きは密接な関係があります。
この自律神経の働きと、それに加えて心の動き、感情によって、分泌されるホルモンが変わるのです。
そこで私たちの心の動きが体の状態に大きく影響し、病気の引き金になったりするのです。ですから、感情、気持ちのあり方は免疫力に大きな影響を及ぼします。
まさに「病は気から」ということが科学的にも証明されたのです。
ホルモンには、脳から分泌されるものと体のそれぞれの器官から分泌されるものがあります。
脳の視床下部、脳下垂体など脳から分泌されたホルモンは、血流を通って脳以外の甲状腺、副甲状腺、副腎、すい臓、生殖腺など、体のそれぞれの器官に達し、それらの器官が刺激されて、さらにホルモンが出ます。
脳から分泌されるのが上位ホルモン、体から出るのが下位ホルモンです。
視床下部と脳下垂体は情動と関係する部分で、精神活動の影響を受けやすいのです。
人類の進化の過程を見ればわかりますが、狩猟時代の人は、危険な野獣など多くの外敵にさらされていました。
命の危険にさらされると、恐れや怒りという激しい感情が起こります。
それによって、まず脳からホルモンが分泌され、体の各器官を刺激してさらにホルモンが出て体を刺激し、外敵などに備える態勢をとるわけです。
瞬時に活動レベルをピークに高める必要があるため、ホルモンを分泌することで心身を興奮状態にして、反撃したり逃げ出すという行動に移すようにするのです。
私たちの喜怒哀楽の心の動きが、ホルモンを分泌する脳の視床下部や脳下垂体に直接に影響を与え、ホルモンの分泌を促したりするのです。
ですから、悲しみや不安、怒りなどの感情は、ホルモンの分泌に影響を与えます。ホルモンは理性でコントロールできるのではなく、感情に支配されているのです。
とくに体に悪い影響を与えるのは怒りの感情です。
怒りっぽい人は、つねに交感神経の緊張状態にあり、興奮系のホルモンの分泌が多くなります。
そのため高血圧や高血糖になり、消化管の働きも悪くなり、心臓もダメージを受けることになります。
当然健康をそこねることになります。
逆に、いつも感情を抑えている人も危険です。感情を抑圧した状態は、やはり交感神経が緊張しているのです。
怒りっぽい人と同じように、興奮系のホルモンの分泌が多くなり、それによって同様な病気になりやすくなります。
会社で上司と部下の間にはさまれて、自分を抑圧することの多い中間管理職や、亭主関白な夫のもとで長年我慢してきた女性などが健康をそこないやすいのも、おわかりいただけると思います。
また、興奮や抑圧が強いと筋緊張が続き、体をこわばらせます。
そのために、肩こりなどが生じます。さらに長年肩こりに悩まされていると、六十歳を過ぎて、パーキンソン病を発症する危険性も高いのです。
始終怒っていたり、不安が続くような生活、自分の感情を抑えすぎている生活は危険なのです。
◎毎日5分でできる健康体操
◎簡単で効果的な指の爪もみ
◎食欲がわかなければ朝食をぬいてもいい
◎タバコは吸っても1日5本以内に
◎夜は12時までに寝る
◎50代になったらできれば玄米を主食に
◎薬はなるべく飲まない
◎パソコンに向かうときには、1~2時間に1度は休む
◎健康診断はなるべく受けない
◎太陽の光を浴びる
……健康長寿をまっとうするためのアドバイス!文庫書き下ろし。
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