ロスチャイルド 200年の栄光と挫折 副島 隆彦 (著)

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ロスチャイルド 200年の栄光と挫折

「陰謀論」ではなく「共同謀議がある理論」

「はじめに」でも書いたが、私は、「陰謀論」という言葉をなるべく使わない。コンスピラシー・セオリーポリティカルconspiracy theoryとは、「実質的に一番大きな政治権力(political power)を握っている支配者たちによる共同謀議がある、と主張する理論」のことだ。

この定義に従うので、私は「コンスピラシー・セオリー」を、正確に、「権力者共同謀議理論」と訳す。

そして、日本国内でもこのコトバが次第に使われるようになるべきだ、と数年前に決めた。

日本の刑法学では、コンスピラシーconspiracy のことを、「共謀共同正犯」と訳す。「共謀による共同正犯」というように、しっかりと分けて理解しなければならない。

「共同正犯」というドイツ刑法学の考え方を輪入して、そのうちの類型の一っとして「共謀(共同謀議)」というのが存在するという考え方をする。

この「共謀共同正犯」を、日本の刑法学の主流(団藤重光・東京大学名誉教授、元最高裁判所判事、98歳)は今も認めない。

しかし、アメリ力刑法の影響で、実務(裁判所の判例)では、近年、かなり認めるようになってきた。

こういう刑法学(法律学) の基礎知識を知らないで、「陰謀(理)論」などというコトバを、軽々しく使うべきではない。x陰謀などというコトバは滑稽なだけである。

広瀬隆のロスチャイルド研究の欠陥

私の視点からすると、広瀬隆という人がどのようにしてロスチャイルド家の全体像の史実と家系図的な研究を、あの『赤い楯ロスチャイルドの謎』でつくって完成させたのか。

この点を鋭く解読しなければいけないと思っている。

私はかつて、祥伝社から毎年出している金融・経済ものの「エコノ・グローバリスト・シリーズ」の一冊『堕ちよ!日本経済』(2000年刊)の中で、広瀬隆に向かって、「あなたはロスチャイルド家叩きばかりるけれども、どうして現在の世界を動かしているもっと大きな勢力であるロックフェラー家叩きはやらないのだ。

傍流のベクテル(世界最大の建設会社。サウジの石油パイプラインもここが建設した)を暴いた本までは書くようだが。

もしあなたがロスチャイルドとロックフェラーの両方をきちんと差別なく、大きくとらえて、両方の勢力を批判のであれば、私はあなたと共同作業をしてもいい」というようなことを書いた。が、当然、彼からは何の連絡もなかった。

広瀬隆のロスチャイルド研究(『赤い楯ロスチャイルドの謎』)が抱えている大きな欠陥は、情報のソース(源泉)の偏りであろう。

どのような人々によって、広瀬隆にあれらの情報がもたらされたのか。

それはセリッグ・ハリソンというCIAの高官からであろう。このハリソンは、いつもはジャーナリストとか、「アジア核問題の専門家」という顔をしている。

まるで民間人のふりをして、この30年間、日本や韓国、北朝鮮や台湾、そしてパキスタンやインドまでも含めた、各国の核兵器・原子力開発の、押さえつけの係をしてきた特殊人間である。

北朝鮮が激高すると日本に核ミサイルを撃ち込むだろう、という物騒なことを米議会の公聴会(パブリック・ヒアリング) で発言して、日本国民を脅す米政府の公式のアジア核問題担当の高官である。

おそらく、このセリッグ・ハリソンが、あの大著『赤い楯ロスチャイルドの謎』を、広瀬隆に書かせたのだろう。

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ハリソンたちCIA高官は、1970年代に、原発反対の市民運動家だった広瀬隆に近づいた。

「この日本の反核運動の若者は、アメリカの戦略に合っているから育てよう。日本の原子力開発と核保有を阻止するために、資金と情報を与えよう」と育てたのである。

世界のお役人である5 大国(米・英・仏・ロシア・中国)以外には核兵器を持たせないようにするためにハリソンたちが存在する。

ハリソンは、米ロックフェラー家の息のかかった人間である。

だからあのロスチャイルド家叩きの異様な本である『赤い楯』ができた。

「ロスチャイルド一族こそがこの世の悪の源泉である」と、強烈に主張するために書かれたプロパガンダ本であり、日本の「陰謀論の本」の金字塔である。

開の支配者など存在しない

それでも確かに、今の世界の政治と、経済・金融を実質的に動かしている、一部の特権的な人々は存在する。

ただし、それにいたずらに脅えたり、神秘的な幻想的な超自然の中に置いて、崇めることをしてはならない。

現在の世界の最高支配者たちは、皆、公然と表に出てきている。各国の政治指導者や超財界人として、自由に動き回っている。

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ヨーロッパの旧貴族たち(Euの中央議会の議員になっている)と、アメリカ合衆国の財界人たちは、「ビルダーバーグ会議」( Bilderbergmeeting) という超財界人の会議を定期的に開いている。

それらの報道もなされている。

このビルダーバーグ会議の表面に出ているのが、「ダヴォス会議(「世界経済フォーラム」)」である。

さらに、「米欧日三極委員会」TheTrilateral Commissionがある。こちらは、デイヴィッド・ロックフェラー(97歳)が創始して、今も主宰している超財界人たちの会議である。

2012年4月にも東京のホテルオークラで開催されたロスチャイルド財閥のロンドン本家のジェイコブも、ロンドン分家のイヴリンも、パリ家のダヴィドも、ダヴォス会議に出席して世界の金融界で、

堂々と権力と影響力を行使しロンドン本家現当主ジェイコブの長男で、やがてロンドン家7代目当主となるのがナサニエル・フィリップ(ナット)・ロスチャイルドである。

ナットは女優のナタリー・ポートマンと浮名を流したりしながら、今は新興諸国で企業ころがしのようなことをして、利益を上げ堂々と動き回っている。

それでも、ヨーロッバのロスチャイルド財閥の力は現在は、相当に小さい。ロックフェラー家の財力と世界支配力に比べたらかなり弱くなっている。

ヨーロッパ諸国が、この100年間かけて衰退した事実と相まっている。

「ロスチャイルド家の全体像」として私が説明してゆく場合に、その土台になるべき知識・情報において、「これは信じられる」「こちらは少し疑問だ」と私が判定(判断)し、「おそらくこれが一番正しいだろう」とロスチャイルド家についての知識・情報を確定しなければならない。

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