マクロビオティック one テーマ15 (文)ムスビの会主宰 岡部賢二
昆布の黒焼きの効用
生活習慣病予防や美容食で注目される昆布
四面を海に囲まれた日本人にとって、昆布は最もなじみの深い海藻です。煮物や汁物のダシに必ず登場するのが昆布で、古くよりお祝いごとに欠かせない食べ物でした。
最近の研究で、昆布に含まれる食物繊維や微量栄養素の重要性が注目されています。
特に昆布をはじめとする海藻にガンなどの生活習慣病を予防する優れた効果があることや、放射線などで傷ついた遺伝子の傷を修復する働きがあることもわかってきました。
さらに、昆布は若い女性たちを悩ませている便秘や肥満解消のための美容食としても見直されてきています。
昆布に含まれる豊富な栄養素とその働き
〝海の緑黄色野菜〟とも呼ばれる昆布には、ヨード、カルシウム、マグネシウム、亜鉛など、生活習慣病を防いでくれる栄養素がたっぷり含まれています。
なかでも昆布のぬめり成分のアルギン酸という食物繊維は、水に溶ける水溶性の性質と、水に溶けない不溶性の性質の両方をあわせ持っている不思議な成分です。
水溶性の食物繊維は、体内のナトリウムとカリウムのバランス調整をして血圧を安定させてくれるので、高血圧の予防になります。
また、糖の吸収をゆるやかにして血糖値の急上昇を抑えるので、糖尿病の予防にもなります。
一方、不溶性の食物繊維は、大腸ガンの原因になると言われる過剰な胆汁酸を腸内で吸着して排してくれます。
この他にも昆布に豊富に含まれるヨードや亜鉛、コンドロイチンという成分は、つややかな髪や爪、骨の発育に欠かせません。
特にヨードは、甲状腺に取り込まれて新陳代謝を盛んにするホルモンの材料になり、血管を柔軟にして、高血圧や動脈硬化を防ぎます。
また、骨粗しょう症などの老化現象の予防にも役立ちます。
極陽性の昆布の黒焼きが陰性の症状を抑える
昔から昆布は気管支炎やぜんそくに効果があることが知られていますが、黒焼きにすることで、さらにその効力が高まります。
漢方医学でぜんそくや気管支炎は水毒症とされ、陰性な症状と捉えます。
昆布を煎して炭化させた黒焼きは『温める、しめる、固める』といった強い陽性な性質に変化するので、陰性の症状を抑えてくれます。
放射性物質は強力な拡散性を持つので、『冷やす、ゆるめる、溶かす』といった陰性の性質が強いと判断することができます。
被爆の症状に、腸がケロイド化して造血力や消化吸収力が失われ、貧血症状や下痢や軟便が続くこと、筋肉が緩してぶらぶら病が発症すること、毛細血管が溶けて鼻血が出たり、生理血が止まらない、全身から出血する白血病になったりすることからも、放射性物質が極陰性な性質も持つことがわかります。
放射性物質の内、カルシウムに性質がよく似ているストロンチウム90は骨に、ヨードに類似しているヨウ素131は甲状腺に蓄積しやすいことがわかっています。
骨に入ったストロンチウム90は骨をもろくしたり、白血病を引き起こす可能性もある厄介な存在です。
また、放射性ヨウ素131は甲状腺障害や甲状腺ガンを引き起こしやすいのです。
そこで昆布の黒焼きを服用することで、先にカルシウムやヨウ素を体内に補充しておけば、放射性物質を取り込まなくてすみます。
世界各国の原子力発電所では、事故に備えてヨード剤が備蓄されていますが、強い副作用のあるヨード剤ではなく、海藻から摂取するほうが安全です。
しかも、極陽性の黒焼きには、陰性なものを吸着する活性炭のような働きや、遺伝子の傷を修復する亜鉛が豊富に含まれています。
そのため、陰性の強い放射性物質を体外に排泄し、遺伝子を正常化することが期待できるのです。
昆布の黒焼きの作り方 日々の生活にぜひ活用を
昆布の黒焼きの作り方は、1センチ角に刻んだ昆布20~30グラムをアルミホイルで二重から三重に包み、土鍋に入れて蒸し焼きにします。
空気が入ると酸化するので、空気が入らないようにして蒸気を含ませながら焼くことで還元力が生じます。
土鍋は蓋ができるものがよく、私は釜飯弁当についてくる素焼きの容器を使っています。
とろ火で2時間くらい焙煎し、炭化した昆布をすり鉢で微粉末にすれば出来上がりです。
保存は蓋付きの瓶がおすすめです。
昆布の黒焼きの使い方は、葛湯に耳かき2~3杯を溶いて服用するか、ご飯にかけてよくみながら摂取します。
ぜんそくの場合は、レンコン粉末と一緒に飲んでください。自然食品店でも売られているので、日々の生活の中で活用してくださいね!
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月刊「むすび」 2017年3月号より
正食協会では、月刊誌「むすび」を毎月発行しています。「むすび」は通巻600号を超える息の長い雑誌です。
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Profile おかべ・けんじ
大学在学中に渡米し、肥満の多さに驚いて「アメリカ社会とダイエット食品」をテーマに研究。
日本の伝統食が最高のダイエット食品と気づいた後、正食と出会う。正食協会講師として活躍後、2003年、福岡県の田舎に移り住み、日本玄米正食研究所を開設。
2005年にムスビの会を発足させ、講演や健康指導、プチ断食セミナーやマクロビオティックセミナーを九州各地で開催している。正食協会理事。
著書は「マワリテメクル小宇宙〜暮らしに活かす陰陽五行」(ムスビの会)、「月のリズムでダイエット」(サンマーク出版)、「心とからだをキレイにするマクロビオティック」(研究所)、
「家族を内部被ばくから守る食事法」(廣済堂出版)、「からだのニオイは食事で消す」(河出書房)、「ぐずる子、さわぐ子は食事で変わる!」(廣済堂出版)、「月のリズムで玄米甘酒ダイエット」(パルコ出版)。
ムスビの会ホームページ http://www.musubinewmacro.com