医者は自分や家族ががんになったとき、どんな治療をするのか 川嶋朗 (著)

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医者は自分や家族ががんになったとき、どんな治療をするのか

自分や家族ががんになったとき、医者の99%は、抗がん剤治療を受けない!?

医者は医療知識に長けています。

専門分野以外に関しては、うとい医者も多いのですが、それでも一般の患者さんに比べれば、はるかに医療の事情に詳しく、さまざまな人脈ももっています。

そんな医者たちは、自分ががんになったとき、どのような治療法を選ぶのか。おそらく多くの人が気になっていることではないでしょうか。

これについて、ある衝撃的なデータがあります。

詳しくは本文中で触れますが、私の知人が国内外の医者271人に「あなたやあなたの家族ががんになった場合、抗がん剤を使用しますか?」と尋ねたところ、なんと270人が「絶対に拒否する」と答えたそうです。

もちろん、「抗がん剤を使わない」と回答した医者たちも、いざ実際にがんになったら、抗がん剤での治療を選ぶかもしれません。

しかしそれでも「99%」というのは、驚異的な数字です。なぜそのような結果が出たのでしょう。

大きな理由の一っとして、まず、「医者たちが西洋医学の限界やリスクを知っている」ことが挙げられます。

西洋医学は、基本的には対症療法です。

がんの場合であれば、外科手術(腫瘍やその周りを切除すること)、化学療法(抗がん剤やホルモン剤などを投与すること)、放射線療法(放射線を患部に照射すること)が「三大療法」「標準治療」とされていますが、これらはいずれも、見つけたがんを切除したり叩いたりするだけです。

もちろんこうした治療も、適切なタイミングで適切に行われれば、効果を発揮することがあります。

早期のがんであれば治る可能性が高く、進行を遅らせることもできるかもしれません。

ただ、がんができた原因を根本から治療するものではないため、それだけでは「根治」させることができないこと、副作用や後遺症などのリスクを伴うため、ときに患者さんから、がんと向き合う体力や気力、がん細胞を排除する免疫力や自己治癒力を奪ってしまうことが問題なのです。

特に抗がん剤は、がん細胞だけでなく、正常な細胞までも攻撃してしまうため、ときには死に至るほどの重篤な副作用をもたらすことがあります。

医者たちは日々、患者さんの治療をする中で、おそらくこうした「西洋医学の限界やリスク」に突き当たっているはずです。

医者のやり方に学んで、より自分に合った治療を受ける

医者の99%が「自分や家族のがんの治療に、抗がん剤を使わない」と答える理由としては、ほかに「医者が、自分の病気の治療を、他人任せにしない」ことが挙げられます。

医者は自分自身や家族が病気になると、必死で勉強します。

専門外の病気であっても、情報を集め、どのような治療法が最適であるかを自分なりに判断します。

主治医選びにも妥協はしませんし、主治医の治療方針が「違う」と思えば、自分の意見をはっきり述べ、セカンドオピニオンを求めることもあるでしょう。

「抗がん剤を使わない」と答えた99%の医者たちは、抗がん剤治療のメリットとデメリットとを知配にかけ、「デメリットの方が大きい」と判断したのではないかと、私は思います。

ところが、一般の患者さんの中には、医者に治療を「丸投げ」してしまう人が少なくありません。

病気の治療における主体は、患者さんであるべきです。

がんは自分の生命や人生に関わる病気であり、人任せにしてはいけません。

医者には病気をみること、それに応じた治療を行うことはできますが、患者さん一人ひとりがどのような価値観をもち、どのように生きることを望んでいるかまではわかりません。

しかし、「お医者さんが何とかしてくれるだろう」と、勉強もせず、自分の希望を具体的に伝えることもせず、医者に言われるがままに、不本意な治療、不適切な治療を受けてしまう人が、実に多いのです。

西洋医学も医者も、決して完璧ではありません。

患者さんが一人ひとり違うように、医者も一人ひとり違う価値観を持ち、知識の量も経験もバラバラです。

また、病院経営や「あとで患者さんやご家族から訴えられないように」といったエクスキューズのために、「あまり効果がない」とわかっている治療を行うこともあります。

真に納得のいく治療を受けるためには、医者自身が病気になったときと同じように、一般の患者さんもできるだけ幅広く情報を集め、医者の言葉を参考にしながらも、決して鵜呑みにはせず、どのような治療をどの程度受けるのか、自分自身で責任をもって判断するべきなのです。

「相補・代替医療」をすすめられない医者たち

ところで、私は長年、西洋医学と相補・代替医療とを組み合わせた「統合医療」に携わっています。

相補・代替医療とは、漢方医学や鍼灸からアロマセラピー、催眠療法、音楽療法に至るまで、「通常医療(西洋医学)以外の医療」のことです。

相補・代替医療は玉石混交であり、効果がはっきりしないもの、怪しげなものもたくさんありますが、中にはがんをはじめとした病気の治療において、めざましい効果を示すものもあります。

特に効果を発揮するのは、西洋医学と併用したときです。

がんの原因を改善したり、がんという病気そのものや、西洋医学の治療の副作用からくる心身の痛みや辛さを緩和したりすることができます。

それによって患者さんのQOL(生活の質)が高まり、がんと向き合うための気力や体力が充実して、免疫力や自己治癒力が高まり、結果としてがんの進行が遅れたり、治ったりすることもあります。

私は、医者から「もう手の施しようがない」と言われ、余命を宜告された患者さんが、相補・代替医療によってがんを克服するのを、何度も見てきました。

しかし残念ながら、日本の医学界ではいまだに、相補・代替医療は「うさんくさいもの」として扱われがちです。

そのため、相補・代替医療についてよく知らなかったり、知ってはいても、患者さんにすすめることができなかったりする医者がたくさんいます。

ところがそうした医者たちが、いざ自分ががんになると、藁をもつかむ思いで、相補・代替医療に関心を持ったり、手を出したりするのです。

私がこの本を書こうと思ったのは、医者自身ががんになったとき、どのような治療法、生き方を選ぶかを通して、多くの患者さんに「自分に合った治療」「自分に合った生き方」を選択できるようになっていただきたいと思ったからです。

西洋医学に偏るのでもなく、相補・代替医療に偏るのでもなく、幅広い視野を持ち、自分の価値観に基づいて主体的に治療方法を選んでいく。

そのような患者さんが増えれば、患者さんにとっても医者にとっても、より幸せな状況が生まれるのではないでしょうか。

この本が、小さなきっかけとなってくれることを、私は心から願っています。

川嶋朗

医者は自分や家族ががんになったとき、どんな治療をするのか
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