梅ぢから―びん干し梅干しから梅酢みそまで 藤 清光 (著), 中山 美鈴 (著)

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梅ぢから―びん干し梅干しから梅酢みそまで

これぞ、梅の魅力満喫の「目からウロコ」ワザ!びんに入れたまま干すだけでできる「びん干し梅干し」と梅料理。九州秘伝の万能調味料「梅酢みそ」。

マヨネーズなんかメじゃないヘルシーさ。“ついで”にできちゃう「赤梅酢」「梅じそ」「紅しょうが」も利用度満点!青梅をつかったフレッシュジュース、ピクルス、塩水漬け…。

「びん干し梅干し」はこうして誕生した

梅干しというと、土用干しのイメージを連想する人が多いせいか、梅仕事は手間がかかって大変だと思い込んでいる人が多いようです。

土用干しは、梅漬けをしてひと月ちょっと経った、紅じそが出回る土用のころに、梅を取り出して日に当てる作業をいいますが、一般にはそれを三日三晩つづけなくてはならないものといわれていますから、無理もありません。

この時代、自宅の庭で大きな竹製のザルに梅を広げて三日三晩干す環境をもつ人のほうが少ないというものでしょう。

この時代、梅干しはつくるより、買うものになってきました。

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30年前にくらべると購入量は3倍以上にもなっています。自分の家でつくる人が減少しているせいでしょう。

ちかごろ、たいそうな和紙にていねいに一個ずつ包まれた梅干しが桐箱入りの贈答品としても百貨店で売られ、けっこう人気を集めています。

今や、梅干しは高級食品の仲間入りまでしているようです。

その理由のひとつにも、「土用干し」の工程があると思うのです。梅干しづくりでいちばん絵になるのは、なんといっても「土用干し」の風景。

田舎の広がる風景一面に梅が並び、麦わら帽子をかぶったおばあちゃんたちが日本古来の方法で干しています、というパフォーマンスには、なかなか訴えてくる力があります。

こんなこと、都会ではできませんよー、素人にはできないって。そう思ってしまいませんか。

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都会であれば仮に干す場所が確保できても、排気ガスも問題です。

それに、外で働く人も増えています。都会で働くマンション生活者にとっては、昼間家にいる時間さえないうえに、干す場所もなければ、空気も悪い。

梅仕事に不利な条件が三つも重なっていて、まさに三重苦といえます。

台所の必需品も、時代とともに変わりました。

みそや漬物用の樽や甕があたりまえにあった昔ならいざ知らず、梅を漬ける大きな容器も重石もない。

ホームセンターでは何でも売っているとはいえ、そのためだけにわざわざ重石を買いに行くのはめんどう!と、すでに梅漬けの段階で挫折する人も少なくないというのが現状なのではないでしょうか。

だからやっぱし買うしかない、と思ってはいませんか?

◎ベランダでもできる「びん干し」のススメ

梅用の大きな甕や重石があって、それを広げる大きなザルや日の当たる庭があって、三日三晩梅のお守りができなくては、梅干しって、つくれないものなんでしょうか。

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そんなことはありません。

忙しい三重苦のマンション生活者にだって、できる方法があります。

洗濯物を干して乾かせるだけの日の当たるベランダがあれば、環境としては十分。道具は、厚めのポリ袋と電話帳があれば大丈夫。

あとは保存用のきれいなびんがあればいいのです。

それが、ふるさと料理人の藤清光さんが20年程前から続けてきた「びん干し梅干し」です。

何しろこの人は、酢の物がなくては生きていけないというくらい、すっぱいものが大好きで、梅干しは毎日の食卓に欠かせず、昔ながらのすっぱくておいしい梅干しをつくりたい!とつくりつづけてきたという人。

毎年10キロから20キロは漬けています。

お見舞いにも喜ばれるので、多めに漬けるようになったというのですが、土用干しのために梅をいちいち取り出して、ひとつひとつ広げる手間は大変。

それに全部を広げて干す場所はないし、梅にかかりきりになる時間があるとは限らない。

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ならば、と考えたんです。要は天日に当たるようにして干せばいいのだと。そうして、びんごと干すようになった。それが、始まりでした。

それからは、よりおいしい、自分好みの梅干しにするために、あえて多めに漬けてはねかせ、10年もの、15年ものも保存しつつ、長くおいしく食べるための梅干しつくりを考えるようになったというわけです。

その間に、一緒につくるようになった私も「びん干し」の簡便さと、そしておいしさにすっかりはまってしまい、私もびん干し歴10年、今や”ふつう“の梅干しづくりには戻れなくなってしまったのです。

おいしさの秘密は、青梅で漬けることにあります。

何しろ、すっぱいのが好きな人の考案した梅干しなので、よりすっぱくと熟した梅はつかいません。

青梅は熟れたものより実も表面の皮もしっかりしているので、ねかせていても崩れません。

そして、ねかせても清新でさわやかなすっぱさが保たれていて、味のよさ、フレッシュな梅の旨さが味わえるのです。

以来、青梅による「びん干し梅干し」を紹介してきましたが、大変好評です。というのも、じつはみなさん、正統なる土用干しの前で挫折し、またテキストどおりにやったのに失敗した、梅を腐らせたという悔しい経験をもっていたのです。

でも、梅干しは食べたい、つくりたいと思っていた。だから、もっともっと「びん干し梅干し」の方法を知ってもらいたいと、思うのです。

梅ぢから―びん干し梅干しから梅酢みそまで
藤 清光,中山 美鈴 農山漁村文化協会 2004-04
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