まほろば主人の「つれづれ農村日記」
この度、船瀬俊介先生主宰の「船瀬図書館」に登場する宮下周平と申します。札幌で自然食品店「まほろば」を経営しております。
足かけ33年になるでしょうか。処が、今年になって一念発起して、『マッサン』でお馴染みの余市の隣、仁木町で田舎暮らしを始めました。
今回、ご紹介を兼ねて、その顛末の文を掲載したいと思います。
『土に帰る』
大地に立つ
空を見上げれば、碧空。
何もない。
ここに立っていることの不思議。一陣の風さえ、その答えを教えてくれない。だが、居ることで風になってゆく。
65歳、70歳といえば、引退、隠居の時節。
一線を引いて、悠々自適か、道楽か、奉仕か……余生を楽しむ。
だが、これから壮大な大地に向かって零からの出発。
本格的な農業経験のないまま、突入。
老体には、適度な運動と休息が必要と言う。
だが、かつてしたことのない早朝から晩まで、ハードな労働に明け暮れる休みのない毎日。
自然は容赦なく変化し、成長し、鍛えてくれる。誰が、驚こうが、体が一番驚いているだろう。
思い起こせば、33年前、内地から家内と二人で帰郷した時、「農業をやりたい!」のハズだった。
だが、何もかも無い無い尽くしで、最も身近な自然食品店からやるしかなかった。それが、「まほろば」の始まり。その前提に30年以上も費やしてしまったのだ。
そして、今年5月。晴れて「まほろば」の始まりに帰って来れた。その立脚点に立てたのだ。
「まほろば」がここまで育ち、充分力も、余力も付き、どんなことさえも開ける気に充ちている。
普通なら、経営者なら、拡大するであろう。しかし、あえて、その道を選ばなかった。何か違うような気がしていた。
あなたでなければ出来ないことを、やるべき。世間は、そういうであろう。
あなたがキャベツを作らなくても、誰でも作れるでしょう。しかし、あなたがいなくても出来ることを、あえて選んだ。
誰でも作るキャベツを、作るべき日々を過ごしている。そして、誰にも作れないキャベツを作るために……。
クタクタに疲れた体、風呂に入る心地よさ、飯の旨さ、家族との会話の安らぎ、布団に入ると泥のように眠る。
心には、何も残んなくなった。ポカーンとするようになった。
そのまま、あの世に行きそうな感じだ。人間って、こんなだったのだ。今さらながら思う、遅きに失した私。
何時からか、掲げた「小国寡民」。
言葉だけで、本当は分かっていなかったな………。
今までは、周りは人人人、事事事、物物物………。
でも、今は朝から晩まで、家族の顔しかいない。あぁ、これ以上少ない民は無いよナ。小っちゃい国もない。
老子は、ここを言ってたのか。平和って、小さなところにあるんだって。
何にも俺、解っちゃいなかったな……。
本当に、これからも解るのかな……。
まほろばの店を拡げるより、売り上げを伸ばすより、ここで、大地を一人耕している方が、まほろばの真実なような気がする……。
第三の人生は、原点に立ち帰り、農業を志すことに決めました。
今は、妻と次男の三人で、人口3000人ほどの小さな町で野菜を作っています。
(2016/7/1付)
食から観た日本、農から観た世界、文化歴史から見たいろいろ、そして商品の紹介なども、これから綴って行きたいと思います。
よろしくお願いいたします。
今回は、今月25日に発刊される拙書『續 倭詩』の中から『水とは医学』をご紹介します。
自然医学の泰斗・森下敬一会長と、船瀬俊介先生と私の三人で、水をテーマにした鼎談です。
まほろばオリジナル浄水器「ELIXIR/エリクサー」に纏わるお話を端緒として、健康、医学、文化、歴史等、様々な世界が活溌溌地に繰り広げられます。
ご興味のある方、是非ご一読戴ければ、幸いに存じます。
續 倭詩 | ||||
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宮下周平
1950年、北海道恵庭市生まれ。札幌南高校卒業後、各地に師を訪ね、求道遍歴を続ける。1983年、札幌に自然食品の店「まほろば」を創業。
自然食品店「まほろば」WEBサイト:http://www.mahoroba-jp.net/
無農薬野菜を栽培する自然農園を持ち、セラミック工房を設け、オーガニックカフェとパンエ房も併設。
世界の権威を驚愕させた浄水器「エリクサー」を開発し、その水から世界初の微生物由来の新凝乳酵素を発見。
産学官共同研究により国際特許を取得する。0-1テストを使って多方面にわたる独自の商品開発を続ける。
現在、余市郡仁木町に居を移し、営農に励む毎日。