「旨い!」と唸る酒は昔ながらの製法にこだわっている蔵から生まれる

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船瀬俊介連載コラム

純米酒、大吟醸・・・全国に

【前回の記事】

日本の酒にまつわるタブーを完膚なきまでに裸にした「ほんものの酒を!」キャンペーン

さて、私たちはニセ洒告発キャンペーンとともに「ほんものの洒」を要求し続けてきた。そこで登場してきたのが純米酒である。

そもそも、清洒は酒と米と水だけで醸し出されるのだから、わざわざ純米酒とうたうのも変テコな話ではあった。

馬から落ちて落馬したーーーのたとえと同じだ。しかし、まわりがニセ酒だらけだと、奇妙な名称で呼ぶほかない。

さらに、われわれの呼び掛けに、良心的な洒造メーカーが応えてくれ始めた。純米酒だけでなく、米を磨いて低温発酵された吟醸洒。

さらに、徹底的に米を磨き抜いた大吟醸酒なども現れてきた。

いままで、ニセ酒の天下だった日本酒業界に大きな変化が起こり始めたのだ。

「ほんものの酒を!」キャンペーンを展開して、すぐに全国に彰涌として良心的な地酒メーカーが立ち上がってきたのだ。

まさに百花斉放、百花線乱。

大手メーカーの下請けに甘んじて来た中小の酒蔵が、独自のブランドと本物造りで勝負をかけてきたのだ。

かくして、ほんものの地酒ブームがまきおこった。

脂肪、たんばくを削って吟醸づくり

最近吟醸酒という表示をよく見かける。これは、お洒の精白歩合を高めて、低温で長く発酵させた酒だ。

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図表[A]のように、お米の表面には脂分が多い。

さらに胚乳部分などはたんぱく質が豊富だ。これらは、食べるときは栄養源となるが、酒を醸すときには邪魔ものとなる。

酒はデンプン質を麹菌で糖化し、それを酵母菌でアルコール発酵させてできる。

だから、アルコール発酵できない脂肪分、たんぱく質などは、雑味として残ってしまう。だか
ら、米を精白することを酒業界では磨くという。

磨き続けるとピンポン玉のようになる。

これを芯白と呼ぶ。米の中心部はデンプン質が多いので、それだけ濁りのない澄んだ味わいの酒を造ることができる。

大吟醸とは、ふつうの吟醸酒より、さらに芯まで磨き込んで醸し出される。それだけ、精米で捨てる部分が多くなり、当然コストもかかる。贅沢な酒である。

しかし、その立ち上ぼる大吟醸香は、まさに、世界の人々を甜目させるに十分な芳香、味わいの世界なのだ。

九段階に品質表示「酒のピラミッド」

級別制が廃止され、より確実に洒の品質を反映する表示制度がもとめられてきた。

日消連も具体的な表示案を、政府に要求してきた。それが、ほとんど認められて、図表[B][C](『日本酒辞典』健友館より)のような品質表示がスタートした。

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私が尊敬してやまなかった酒類評論家、穂積忠彦先生が、わかりやすく、品質表示をこの「洒のピラミッド」として表わして下さった。

上のほうに行くほど品質は向上する。残念なことに、せっかく消費者運動で勝ちとったこの「洒のピラミッド」を知らない飲ん兵衛が意外に多い。

これさえ知っておけば、あなたはもう日本洒通。酒の席のウンチクのためにも、コピーに取って手帳に張り付けておいて欲しい。

まず[A]吟醸[B]純米酒[C]本醸造[D]普通酒—ーーの四つに大別された。

[A]吟醸のうち、米の精米歩合が50%以下が大吟醸。5O~60%が吟醸洒だ。

[B]純米洒は精米歩合70%以下。

[C]本醸造も70%以下だが、「アル添加量は白米重量の10%以下」と限定付きでアル添を認められている。

[A][B][C]は「特定名称」の酒—ーーとして、その高品質が、[1]~[8]の「名称」でラベル表示される。

だから、このピラミッド図さえ手元にあれば品質の目安が一目瞭然だ。

[D]普通酒はまさに「それ以下の酒」だ。

テレビCMしている大手メーカーの酒は、ほとんどがこの[D]普通酒だ。

まず「特定名称」の酒なら一安心

ピラミッドの項点は[1]純米大吟醸だ。

つまり、米だけで醸し、精米歩合が50%以下。かつては、大吟醸にお目にかかるとその幸運に喜んだものだが、最近では大吟醸を出していない酒造のほうが珍しい。

時代も変われば変わるものだと、感慨も新たとなる。

[2]大吟醸は、若干のアル添をしたもの。

[3]純米吟醸酒は、精白度で大吟醸と差が付く。

[4]ただの吟醸酒は、若干のアル添あり。これらは「本醸造」に準ずる。またアルコールは米から取った「米取りアルコール」がほとんど。

廃糖蜜原料とは異なり自然な米の風味が生きている。

ただ、最近は「米を削る」競争にかまけて、ほんらいの大吟醸の力強い香りを忘れた蔵も多い。

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大吟醸は、まさに日本酒の精華。精白度を高めればいいというものでもない。吟醸洒も極めて淡麗にして高品質になったが、一方で没個性化が進んでいる。

原因のひとつが、酵母薗の画一化である。

協会酵母と呼ばれる売れ筋の酵母に各蔵が殺到して、均一な優等生の吟醸酒が揃ってしまったのだ。

もういちど、地酒の原点である蔵付き酵母、野生酵母などに回帰して百花線乱を競って欲しいものだ。

[5]特別純米酒は、精白率が60%以下。[6]純米酒は70%なので、その差を知っておこう。

[7]特別本醸造は、やはり60%以下。かつ限定的に加えるアルコールは「米取りアルコール」だ。

[8]本醸造は70%以下で、添加アルコールも廃糖蜜などが原料となる。

お酒を買うなら、まず「特定名称」の洒なら一安心。財布にあわせてピラミッドの上位を目指せば、美味綾郁の境地は、さらに広がるはずだ。

大手メーカーの「上選」「融米」などは?

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「うまさを語るとヤボになる…」大手メーカーの酒CMには、苦笑してしまう。これらは「酒ピラミッド」の最低辺の普通酒なのだ。

つまり、従来のアル添、糖添、合成添加物入りの酒がほとんど。

「上選」「特選」「佳選」などラベルにあると高級酒と錯覚するが、これは級別制度が廃止されたので、各社が勝手につくった(でっちあげた?)表現。

もちろん、法的にはなんの根拠も保証もないのでご注意を。

また「融米づくり」をCMでうたう大手メーカーもある。これは、ほんらい磨くべき米をドロドロに溶かして発酵させたもの。

精米歩合もへったくれもない。ただ、お米のムダはなく、コストは大幅に削減できる。

このように洒づくりには、隠し技も多い。私が反対するのは炭の使いすぎだ。活性炭でクセをとる操作だが、淡麗ブームのためか、風味も香りも取ってしまう傾向が強い。

やはり、「旨い!」と唸る酒は、昔ながらの製法に、愚直なまでにこだわっている蔵から生まれるようだ。

酒づくりも、他の食品同様、小手先を排した原点に戻るべきときだろう。

月刊マクロビオティック 2002年02月号より

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船瀬俊介 (ふなせ しゅんすけ)地球環境問題評論家

著作 『買ってはいけない!』シリーズ200万部ベストセラー 九州大学理学部を経て、早稲田大学社会学科を卒業後、日本消費者連盟に参加。

『消費者レポート』 などの編集等を担当する。また日米学生会議の日本代表として訪米、米消費者連盟(CU)と交流。

独立後は、医、食、住、環境、消費者問題を中心に執筆、講演活動を展開。

船瀬俊介公式ホームページ= http://funase.net/

船瀬俊介公式facebook=  https://www.facebook.com/funaseshun

船瀬俊介が塾長をつとめる勉強会「船瀬塾」=  https://www.facebook.com/funase.juku

著書に「やってみました!1日1食」「抗がん剤で殺される」「三日食べなきゃ7割治る」「 ワクチンの罠」他、140冊以上。

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