[新釈]養生訓  貝原 益軒 (著), 蓮村 誠(編訳)

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[新釈]養生訓

江戸時代の知恵には、いまも通じる健康法が満載だった!

不養生は自害と同じ

すべての人の寿命は、多くの場合、長いものです。寿命が短く生まれている人はまれです。

生まれつき元気さかんで、からだが強くても、養生の術を知らず、朝夕元気をそこない、日夜精力を減らしてしまえば、生まれつきの寿命が全うできずに早死にしてしまう人が世の中には多くいます。

また、生まれつきとても病弱で多病でも、それゆえにつつしみおそれて保養をするので、かえって長生きをする人もいます。

この二つは、世間ではよく見られることですから、疑ってはいけません。

欲のままにしてからだを失うことは、たとえば刀で自害するのと同じことです。早いか遅いかの違いはあっても、自分でからだを害するということでは同じなのです。

ここでは内欲という原因と、寿命という結果に関する考察をします。

つまり、寿命の長さは、いかに内欲をおさえたかで決まるというこの考えは、とても論理的で明快であるため普遍的です。

これは、非常に寛容な考えであり、誰もが長生きできることを示しています。

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飲食はじゅうぶんにしないのがよい

珍しいものや、美味しいものであっても、八、九分目でやめるべきです。

じゅうぶんに食べてしまうと、あとで禍があリます。少しの間、欲をこらえれば、あとで禍があリません。

少しだけ飲んだリ食べたリして、味のよいことがわかったら、たくさん飲んだリ食べたリして満足したのとその楽しみは同じことで、しかもあとの禍はあリません。

どんなこともじゅうぶんになってしまうと、かならず禍となリます。飲食はもっとも満腹をさけなくてはなリません。

また、はじめにつつしめば、あとで禍はあリません。

益軒は繰り返し、過度な飲食がもたらす禍について説いています。

ここではとくに、こころが珍しいものや、美味しいと感じるものにたいして、執着しやすいことを警告しています。

がまんは少しでよい

およそ食欲をおさえてがまんすることは、長い間のことではあリません。飲食をするとき、ほんの少しの間‘欲をがまんすればよいのです。

また、量も多いわけではあリません。飯はただ二、三口、副菜はただ一、二片少しの欲をがまんして食べなければ害はあリません。

飲酒もまたそうです。たくさん飲む人も、少しがまんして、飲みすぎなければ害はあリません。

人の欲というのは、ほしいままにしているとますます強くなってしまいます。

ですから、食べたいという欲がまだそれほど強くないうちに、がまんをして食べるのをやめれば、そのがまんは小さくて済み、きちんとやめることができるのです。

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肉食が少ないと長生き

砂山の中に住む人は、肉食をすることが少ないため、病気が少なく長生きします。海辺や、魚や肉が多い土地に住む人は、病気が多くなリ短命、と『千金方』に書いてあリます。

魚や肉は、消化しにくく、消化器官に負担をかけるものです。

それらを多く食べる海辺や都会に住む人は短命であることが多く、あまり食べない山の中に住む人は、消化器官が弱らず、

元気をたもつことができるので長生きをするのです。

病気になる前に予防する

病気のないときに、あらかじめつつしんでおけば病気になりません。

病気になってから、薬を飲んでも、病気は治リにくく、治るのも遅いのです。小欲をつつしまないと大病になリます。

小欲をつつしむのはたやすいことです。大病になると苦しみも多くなリます。前から病気の苦しみを思い描き、後のわざわいをおそれるべきです。

予防について解説を進めています。なぜ予防が優れているかと言えば、それは病気を治すことよりもたやすいからです。

つまり、病気になってから、それを治すことは、とても面倒でたいへんなことであり、努力や時間を要します。

それよりも、ふだんからそうしたことをおそれ、つつしみをもって予防することのほうがずっとたやすいのだといっています。


貝原益軒が84歳のときに書いた健康についての指南書『養生訓』。

300年以上前に書かれた健康で長生きし幸せに暮らす方法は、現代の病気予防、健康維持にも役立つ事柄が多い。

「おもちの食べ方」「根菜の調理の仕方」「疲れているときは食事を取らない」などの具体的な食事方法から、「朝の過ごし方」「深夜までには寝る」などの生活習慣や心のもちかたなどがわかりやすく著され、健康に気をつけたいと思っている人にはすぐにでも役立つ実用書でもある。

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