なぜ、人は人を愛するのでしょうか。
進化心理学は、子孫を繁栄させるために愛という感情ができたといいます。いやいや、それは違うと宗教的な理由を述べる人もいますし、倫理的な答えもあります。
さまざまな答えがあり、どれが正しいとはいいづらいでしょう。
ただ、統合医療の立場では、はっきりと答えることができます。それは、人は愛することで健康になれるからです。
「オキシトシン」という脳内ホルモンがあります。
愛したり、やさしくしたり、誰かのことを思いやると分泌され、幸せな気持ちで満たされるホルモンで、それゆえに、「幸せホルモン」、「愛のホルモン」とも呼ばれています。
近年、このオキシトシンが医学や脳科学の世界で注目を集めています。
従来、オキシトシンには幸福感を得られる効果があるといわれてきました。
しかし、それだけではなく、ストレスを抑えたり、自律神経を調整したり、血糖値や血圧をコントロールしたり、体の痛みを抑えたりという、驚くべき効果があることが次々にわかってきたからです。
まさにいまオキシトシンが「最強の脳内物質」なのだと、医学的に証明されつつあるのです。
では、「オキシトシン」が出ることによって、人間の体内で、具体的にどんなことが起きるのでしょうか。最新の研究では、次のような健康効果が表れるとされています。
●ストレスから解放される
●副交感神経のはたらきがよくなり、自律神経が調整される
●血管を広げて血圧を下げる
●動脈硬化を防ぐ
●血糖値を下げて糖尿病を防ぐ
●胃腸が丈夫になる
●便秘が解消する
●免疫力がアップする
●心臓の機能が高まる
●脳の疲れをスッキリ解消する
●深くて質のよい眠りにつけるようになる
●体の痛みがやわらぐ
●認知症を予防する
●人に対してやさしくなる
●共感力が高まる
●人への信頼感が増す
信じがたいと思われる方もいらっしゃるかもしれません。けれども、これらは実際に私のクリニックでも、たくさんの患者さんのケースで、本当に起きていることなのです。
しつこい肩こりから解放された、うつ病が改善して自殺願望が消えた、PTSD(心的外傷後ストレス障害)が改善した、眠れるようになった、長く続いていた過敏性大腸炎による便秘と下痢が止まった、体を動かすことも苦痛だった関節炎の症状が軽くなったなど。
では、どうすれば、この「最強の脳内物質」であるオキシトシンを分泌できるのでしょうか。じつは、ポイントはたった2つだけなのです。
ひとつは、あなたの五感に気持ちのよい剌激を与えること。あなたが楽しいと思うことをするだけでいいのです。おいしいものを食べるのでもよいし、自然を満喫するのでもOKです。
そして、もうひとつは、人と交流することです。楽しい会話をするのもいいですし、他の人の肌に触れるだけでも分泌します。
それどころか、誰かのことを思うだけでもいいのです。誰にでも簡単に出せるのがオキシトシンなのです。
ただし、自然にどんどん出てくるわけではありませんから、「オキシトシンを出す習慣」を身につけなければなりません。逆にいうと、習慣にしてしまえば、いつでも出せるようになるということでもあります。
さらに、もうひとつ、オキシトシンには驚くべき効果があります。もしあなたがオキシトシンを分泌するとあなたのまわりにいる人たちもオキシトシンが出るようになるのです。
つまり、あなたが健康で幸せになれば、まわりにいる人たちも健康で幸せになれるのです。これって素晴らしいことですよね!
私は、アメリカのミシガン大学、デューク大学、ウィスコシン医科大学などで、十年来、このオキシトシンの研究を行ってきました。
本書では、これまで研究を重ねわかってきたオキシトシンの健康効果と分泌を促す生活習慣をわかりやすく紹介していきます。
今日から実践できる簡単な方法ばかりです。
どなたでもすぐにオキシトシンをどんどん出せるようになります。みなさんが健康で幸せな未来を手に入れるきっかけになれば幸いです。
自律神経を整えてストレスをなくす オキシトシン健康法 | ||||
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