小澤博樹 連載コラム
【前回の記事】
ところで、少し本題から逸れるが、どの医療機関でも3年に1度、保健所職員による立入り検査を受けることになっている。
これはその医療機関が適切な医療行為を行なっているか否かを調査する目的がある。
その際、いつも問題となり口論になるのは、当院の職員に対するX線撮影検査が当院ではなされていないからだ。
胸部X線撮影検査を行なう目的は、結核症の早期発見につとめ、その蔓延を防ぐためにある。
これが保健所(厚労省)の見解である。
結核は1950年まで日本人の死亡率の第1位であった。
(図1)
図1は結核死亡率の年次推移を示したものである。
この図をみるとBCG接種開始、X線間接撮影の実用化、抗生物質投与開始時期よりも先に結核症による死亡率は低下してきていたことが分かる。
つまり現代医学(西洋医学)的治療が効を奏したために結核による死亡率が減少したのではない。
むしろBCGや抗生物質、X線検査により人間の免疫力を低下させ、薬剤耐性菌を出現させたことにより結核症による死亡率の低下をにぶらせたと考えた方が妥当である。
1997年には減り続けていた結核症の羅患率、新規の結核登録患者数が増加している。
その他の感染症についても年代を経るにつれて自然に減少してきている。
これについては「有害無益な予防接種(ワクチン接種)」小澤博樹、連載コラムで述べた。
また、感染症が増加するのはその病原微生物が主たる原因ではなく、人間の体内環境や体外環境に大きく左右されるのである。
これについては、「健康な腸内細菌をもっている人の腸の中では病原菌が増殖しにくい」小澤博樹、連載コラムで述べた。
という訳で、厚労省が推進する胸部X線撮影を何度行なっても、結核症を防げるわけではなく、これを行なう事によって人間の免疫機能はさらに低下し、むしろ結核症やその他の感染症、あるいは癌を発生させる原因となりうる。
従って当院ではX線検査はあえて行なわない。
また他の会社や組織の従業員や職員からの要望があればX線検査はせずに健康診断書を作製している。
前述したように結核の検査をするだけのために肺癌になったとしたら、その被検者にとって悲惨な事態となろう。
事実肺癌は毎年増加傾向にあるが、この肺癌とX線撮影の因果関係を確実に証明する事は難しいが、理論上は因果関係があると認めざるを得ないであろう。
もともと胸部X線撮影により結核症の確定診断がなされるわけではない。
ただ単に有害無益なだけだ。
結核の確定診断には、被検者の喀痰や糞便を用いた結核菌の培養同定検査なり、QFT(Quant FERON)TB-2Gなどが有用である。
これらは人体にとって無害な検査である。
厚労省(政府)のトップにあるもの達は、これらの事実を承知している筈である。
それなのになぜ有害無益な検査や治療を推し進めようとするのか。
もちろんこれらは一般企業においても企業検診、市民に対しては市民検診などという名目で行なわれている。
国民の利益のためにだけ行なっているのだとうそぶいてはいるが、まったくのおためごかしでしかない。
政府はなぜ国民(同胞)をこれほどまでにいためつけ、病弱にしようとするのか。
そこにはまた別の意図、目的が存在しているとしか思えない。
そもそも保健所とは「地域の公衆衛生、地域住民の健康などの向上・増進を図るため、指導・相談にあたる公立の施設」だとされているが現実にはその趣旨とは裏腹なことが行なわれている。
話がだいぶそれてしまったが、ここでまたもとの本題に戻ることにする。
診断X線検査からの癌リスク
2004年、英国の医学雑誌「ランセット」に「診断X線検査からの癌リスクRisk of Cancer from diagnostic X-rays:estimations for the UK and 14other countries」と題された論文が掲載されている。
これはオックスフォード大学のエイミー・ベリントン・デ・ゴンザレスと、サラ・ダービィという2人の研究者が発表したものである。
この論文では診断用X線の被曝により発生すると考えられる食道癌、胃癌、結腸癌、肝臓癌、肺癌、甲状腺癌、乳癌、膀胱癌、白血病など9種の悪性腫瘍について、それらが75歳までの期間に発生する確率を英国とその他14ヵ国を対象に調査、推定している。
彼らは、診断X線検査からの発癌リスクを調査するためのモデルとして、日本で原爆被害を受けた生存者から得られた癌発生率のデータを用いている。
1991年から1996年までの英国と他の14ヵ国の腫瘍登録から得られた癌発生率とそれら各国で行なわれたX線検査回数とを比較し、統計的に放射線被曝によって誘発された癌の数を分析したものである。
その結果、診断X線検査に起因する癌発生の生涯リスクが3.2%という最高値を示した日本を除いて、調査対象となった他の国々での生涯リスクは0.6~1.8%だった。
つまり日本は、世界でも最高の医療放射線被曝国であり、医療被曝による発癌率3.2%という値も世界でトップとなっている。
ちなみに日本についで医療被曝による発癌率の高い国はクロアチアの1.8%であり、その他の国はいずれも日本の半分以下、米国は0.9%、英国とポーランドは0.6%と最も低かった。
単純胸部X線撮影やマンモグラフィーなどの低線量被曝であっても発癌の可能性を否定することはできない。
ましてや、CTやシンチグラフィー(骨シンチなど放射性同位元素を人体内に注入するもの)などの高線量を使用した場合は、より発癌リスクは高まる。
肺癌や乳癌の検診のために胸部X線撮影やマンモグラフィーを行ない、胃癌や大腸癌の検診でバリウムを使用した消化管造影透視検査などを行なったがために、肺癌になり、乳癌になり、はたまた、胃癌や大腸癌になってしまったのではと考えると現代医学の有効性・有用性など単なる幻想でしかないと誰もが気づくはずだ。
同様に癌の治療として用いられる放射線療法も増癌治療、発癌療法、人体破壊療法と言い換えることができる。
早期発見、早期治療のための検査も全て発癌につながっている。
日本では一万四千台以上ものCTが稼働しており、世界中で最も保有台数が多い。(図2)
(図2)
厚生労働省「医療機器の配置及び安全管理の状況等について」より引用
*MRI:Magnetic Resonance Imaging 磁気共鳴断層撮影装置
MRIからX線は発生しないが、強い電磁波を発生し、これも発癌リスクが高い。
日本ではCT普及率が高いことと、健康保険制度により、医療機関への受診が容易であること、そして病院経営者が、高額な診断装置を購入してしまったために、その元手を取り返し、利益を上げなければならないという事態を招き、検査数の増加をもたらしている。
だから小指の先がしびれただけでも脳のCT検査をしたがるのである。
多くの現代医学者や医師、研究者など、現代医学を信奉し、放射線を扱うことによって利益を得る者たちは、この論文の内容に対し、批判的・否定的な意見をインターネット上に掲載していた。
つまり診断用X線の人体への微々たる有害性よりも、癌の早期発見、早期治療の方を優先すべきだと。
しかし、前述したように、診断用X線による患者への被曝量の安全基準値はないこと、癌は細胞レベルから次第に増殖していくため、小さな癌病巣(1cm以下)はCTを含め、これら診断用X線装置では、見つけられないこと、たとえ早期癌が見つかったとしても、現代医学の三大療法では、癌を治すことはできない事などの理由から、診断用X線装置による診断や放射線療法などは有害で無益なものでしかないことが理解できよう。
ゴンザレスとダービィの発表した論文に対して、インターネット上に掲載された種々雑多な意見やコメントの中で、ひとつ興味を引くものがあったのでここに紹介しておこう。
イタリア、ピサにある臨床生理学研究所のエウジェニオ・ピカノ内科医が投稿したものである。
「この論文に発表されているデータは1991年から1996年のものであり、その当時CTは放射線診断の4%を占めるに過ぎず、線量は75%を占めている。
アメリカのCT診断は1993年には1000万回だったが2001年には6000万回となっている。
核医科学的方法(骨シンチなど)による被曝について、この論文では調査されていない。
一般の放射線診断法に比べて、放射性同位元素を用いた核医科学的診断法の利用頻度は少ないが、核医科学的診断法による平均被爆線量はX線の3倍大きく、被曝量全体の10%になる。
2002年の核医科学検査回数は1200万回から1300万回で、心疾患の核医学的な診断は1993年の300万回から2001年の700万回へと増加している。
負荷心筋シンチグラムでは胸部X線撮影約500回分の被爆をする。
このような被曝線量の増加を考慮に入れて調査すべきだ。
この論文の著者ら(ゴンザレスとダービィ)は放射線によるがんについてのみ考慮しているが、癌以外にもいろいろなリスクがある。
たとえば放射線被曝による不妊、早老症、精神発育低下、催奇形性などである。
これら子孫に対する影響は、致命的な癌発生の20%に相当すると見積もられている。
結論として、医療における不適切な放射線の使用による悪影響は著者らが示したよりずっと深く広いものになる。
我々内科医や医療画像専門家はおおむねこれらの影響のことを知らず、同じ検査情報が得られるなら、放射線を用いない検査診断を行なうようにと、EC(Euro pean Commission:欧州委員会)の2001年ガイドラインが勧告しているにもかかわらず、大量の放射線診断を続けている。
医療放射線の使用についての取り決めは政策的にも医療的にも最重要課題となっているように思われる。」
という、実に厳しい内容の投稿であった。
このピカノ先生やゴンザレス、ダービィ両先生に拍手を送りたい。
このコメントの中に出てくる、核医科学的診断とは、手術を予定された癌患者の転移病巣を発見するためや、心臓や肝臓、腎臓などの機能を判定する為に使われるシンチグラムという検査法である。
ラジオアイソトープ(RI)放射性同位元素、たとえば、テクネシウム99m(99mTc)やヨウ素131(131I)などのRIを人体内に注入――小さな原爆を体内に打ち込まれたようなものだが――する。
RIから発せられるγ線やβ線を検出器で検出し、その体内分布を観察し、病巣を診断するものである。
これらRIは診断や治療に用いられるが、その半減期はテクネシウム99mで数時間、ヨウ素131で8日と短いが、これらを人体内に投与する時、大量の放射線に被曝することになり、より発癌性や催奇形性のリスクは高まるのである。
CT装置も開発改良が進み、現在ではPET(ポジトロンCT)やヘリカルCTなどが新しい機種として登場している。
改良されたといっても、これら装置による画像が従来のものより鮮明になったというだけで、その放射線被曝量はさらに多くなっている。
PETは、放射性同位元素(RI)でマークされたブドウ糖を注入し、それがどの臓器や組織に集積されているかを撮影するものである(癌組織が他の組織よりも糖を多く取り込む性質を利用したもの)。
ヘルカリCTは特に肺癌の早期発見に有効で、小さな病巣でも発見できる死角の少ない鮮明なCT画像が得られることを謳い文句にしているが、いずれも放射線被曝量は多く、安全なものではない。
これらの機種では内被曝と外被曝を同時に受けることになる。
以上、放射線の有害性と弊害について述べてきた。
現代医学は、診断X線検査や放射線治療法が病気の診断治療において必須だとしている。
有害で危険きわまりないこれら診断X線装置やMRIなどを使わなくとも、病気診断や治療は他の方法で充分可能である。
また、いくら大量の放射線を人体に照射し、ご立派な診断(現代医学的病名)がついたとしても、現代医学はそれを治す術を知らない。
癌をはじめ、すべての慢性病が今まで現代医学で治ったためしはない。
有害無益な、CTや診断X線検査ではなく他の検査方法を選択するとすれば、波動測定検査が有効有用である。
これについては「波動療法について、波動測定装置ラジオニクス」小澤博樹連載コラムにすでに紹介している。
では、現代医学的治療に代わるものとは、なにか。
それは、東洋学であり陰陽論に基づいた治療である。東洋医学といっても漢方薬の事ではない。
漢方薬や化学薬品を使うのではなく、陰陽論に基づいた玄米菜食、マクロビオティック食養生である。
【参考文献】
「人間と放射線」 J・W・ゴフマン 著 伊藤昭好、今中哲二、他 訳 明石書店
「メディカル朝日1997-3」朝日新聞社
「X線診断学」御園生圭輔、宮川正、他 著 文光堂
「治す医者か、ごまかす医者か」小澤博樹 著 三五館
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現代医学における癌の三大療法(手術療法、化学療法、放射線療法)も有害無益
小澤 博樹
1949年愛知県碧南市生まれ。1974年東邦大学医学部を卒業後、同付属病院にて消化器外科学、一般外科学を専攻。
1984年、碧南市にて小澤医院を開業し、「食養生」を基本とした代替医療を展開し、現在に至る。
現代医学そのものが金儲け主義であると批判。自らは最少の費用で最大の成果を提供しようと模索する。頑固と良心の共存した、清貧な医者である。
マクロビオテック(玄米菜食)による体質改善、免疫力・自然治癒力の向上を図り、病気を治療に導く有床診療所「小澤医院」のHPはこちら→小澤医院
主な著書に「治す医者か、ごまかす医者か―絶対あきらめない患者学」「医者ができること、してはいけないこと―食い改める最善医療」などがある。