認知症は歩くだけで良くなる 認知症予防と改善 長尾 和宏 (著)

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認知症は歩くだけで良くなる 認知症予防と改善に最良の方法は「ながら歩き」!

認知症を治す薬はない

さて、問診、頭部CT、血液検査という最低3つのチェックを経て、治療可能な認知症ではなく普通の認知症であることがわかったなら、どうすれば良いのでしょうか。

多くの医師や家族が考えるのは「薬」でしょう。

私の外来にいらした患者さんも、いきなり「認知症を治す薬を出してください」とおっしゃる家族がたくさんおられます。

「認知症治療薬」と考えるのは間違いです。

糖尿病を治すには食事と運動が大事ということは誰でも知っていると思いますが、認知症の治療も真っ先に挙がるのが薬なのです。

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今、「抗認知症薬」として日本で認可されている薬には次の4種類があります。

•「アリセプト」(一般名=ドネペジル塩酸塩)

•「レミニール」(一般名=ガランタミン臭化水素酸塩)

•「メマリー」((一般名=メマンチン塩酸塩)

•「イクセロンパッチ、リバスタッチパッチ」(一般名=リバスチグミン)

認知症に抗う薬なので、患者さんたちは「認知症を治してくれるんだろう」と薬に期待していますが、どれも根本的に認知症を治すものではありません。

認知症は自然の老化よりも速いスピードで脳の機能が衰えていくものであり、その老化の進行を「抑える」目的で用いられるのが、抗認知症薬なのです。

つまり、根治療法ではなく、あくまで対症療法にすぎません。基本的に元気にするお薬です。

完治はできなくても進行を抑えてくれるならいいじゃないか、と思うかもしれません。

たしかに、本当に抑えてくれるなら十分に効果があると言えるでしょう。でも海外のデータでは、薬の効果が期待できるのは3~4割の人だといわれています。

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一方で、薬の量がその人の状態に合っていなければ副作用でよけいに暴れたり、怒りっぽくなったり、生活の質(QOL)が悪化する人も珍しくありません。

ところが、突然怒りやすくなったことを、「それは副作用ではなく主作用です。怒る元気もなかった人が元気が出て怒るようになったのは良いことなので、決して薬を中止してはならない」などと言う、えらい先生方もいます。

また、抗認知症薬が効いて元気で穏やかになり進行を遅らせることができた人でも、いつまでも効くわけではありません。

使い続けているうちに必ずいつかは、効き過ぎたり、反対に効かなくなったりしてしまいます。

だから、薬に過度に期待しないでほしい。

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私は、認知症医療で大事なのは、「1にウォーキング、2に食事、3、4がなくて、5に薬」と考えています。

しかも、最後の薬については、河野和彦先生が提唱する「コウノメソッド」を参考に、必要なときに必要なだけ、さじ加減を大切に、最小限に使うというのが鉄則です。

歩くと脳の血流が増える

脳を健康に保つには、十分な血流が欠かせません。なぜなら、脳内の神経細胞は、血流不足に弱いからです。

脳のエネルギー源には、ブドウ糖とケトン体の二つがあります。

通常はブドウ糖を使い、ブドウ糖を使えなくなるとケトン体に切り替わるのですが、どちらも血流に乗って運ばれてきます。

だから、血流が不足するとエネルギー不足で脳の機能まで低下してしまうのです。

脳の血流は加齢とともに低下するものですが、認知症になると、より顕著に血流の低下が見られます。

アルツハイマー型認知症、脳血管性認知症、レビー小体型認知症、ピック病のいずれでも、それは同じです。

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ただ、脳のなかでもどの部分の血流が低下しやすいかは、次ページのイラストのように、認知症のタイプによって違っています。

たとえばアルツハイマー型認知症の場合、「側頭葉」から「頭頂葉」にかけてと、「後部帯状回」での血流低下が特徴です。

一方、レビー小体型認知症では、「後頭葉」の、ピック病では「前頭葉」の血流の低下が見られます。

脳は、場所によって役割分担があります。アルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症、ピック病で血流の低下が見られる場所の役割はそれぞれ次のとおりです。

•側頭菓……主に記憶にかかわるほか、聴覚や臭覚の認識にもかかわる

•頭頂葉……体全体からの感覚情報が集まり、外界の認識にかかわる

•帯状回……勘定の形成と処理、学習、記憶にかかわるほか、呼吸器系の調整も

•後頭葉……視覚にかかわる

•前頭葉…:思考、自発性、感情、性格、理性などにかかわる

ここで、それぞれの認知症の特徴的な症状を思い出してください。

「なるほど!」思いませんか?

血流が低下している部分が担っている役割と特徴的な症状に関連性があることがわかると思います。

たとえば、レビー小体型認知症で特徴的なのは前述したとおり幻視です。

そして、このタイプの認知症で血流が低下しやすい後頭葉は、まさに視覚を司っているのです。

性格の変化が特徴的なピック病の場合、前頭葉の血流が低下しているわけですが、前頭葉が担当している役割を見ると「まさに」という感じです。


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第1章 認知症、4つの間違い

1年を取ったら認知症になるのは仕方ない?
2認知症はお年寄りの病気?
3認知症になるかどうかはボケが始まってからでなければわからない?
4認知症になったら、まず薬?

第2章 歩けば認知症が遠ざかる理由

5歩いて、メタボを克服!
6歩けば、骨粗しょう症、ロコモ、寝たきりにならない
7よく歩くほど、よく眠れる
8睡眠薬は認知症を引き起こす
9歩くと脳の血流が増える
10歩くと脳の神経細胞が増える
11歩くと、不安も和らぐ
12歩き方によっては逆効果

第3章 「ながら歩き」のススメ

13ただ歩くだけではもったいない
14「川柳ウォーキング」のススメ
15「計算ウォーキング」のススメ
16「カラオケウォーキング」のススメ
17「肘引きウォーキング」のススメ
18 いちばん簡単なながら歩きは「見ながら歩き」
19 ウォーキングに物足りなくなったら?
「ダンス」「ノルディック(ポール)ウォーク」のススメ

第4章 要介護になってからの歩き方

20 一本杖より2本杖のポールウォーキング
21 室内ウォーキングで家を運動場に
22 座りながら歩く「座位ウォーキング」のススメ
23 要介護になっても抜け出せる!

第5章 死ぬまでハッピーに暮らすには

24 認知症のタイプ別歩き方
25 咀嚼で脳を刺激する
26 空腹が頭をスッキリさせる
27 歩くことほど、多面的に良いものはない

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