菜食は、心臓病死を予防するベストの選択　

船瀬俊介連載コラム

『新版・ぼくが肉を食べないわけ』（邦訳、築地書館）の著者で、ベジタリアンの国際的啓蒙家として知られるピーター・コックス氏は、「肉を食べるとガンにかかりやすくなる理由」として、以下をあげている。

ガンが怖ければ肉はできるだけ控え目に

①ハンバーガーを焼き、加熱し過ぎると染色体を損傷し、ガン原因となる化学物質が、少なくとも八種類、生成される（ローレンス・リブモア国立研究所）。

②炭火焼ステーキ一キログラムには、600本のタバコに含まれる量の強力な発ガン物質ベンゾピレンが含まれる。

③（ウィンナーやハムなど）肉製品には（発色剤などで）亜硝酸塩が含まれる。これらは人体内で、強力な発ガン物質ニトロソ・アミンを生成する。

④肉の多い食事は、性的成熟を早め、乳ガンリスクを増大させる。

⑤ベジタリアンの免疫システムは、肉食のひとより強い。たとえばガン細胞を攻撃するキラー細胞は二倍の強さをもつ。

⑥ベジタリアンは肉食者より環境汚染の影響を受けない。たとえば母乳のPCB汚染度は、肉食者のほうがはるかに高い。

⑦ヘジタリアンは大量のビタミンAをベータカロチンの形で、植物からとる。これは肺ガンなど様々なガンを予防すると考えられている。

菜食は、フリーラジカル形成を妨げる物質が豊富である。フリーラジカルは、遺伝子(DNA)を傷つけるなど、ガン、老化など様々な疾患の原因物質である。

われわれ日本人は、古くから「肉は、ごちそう」と思い込んでいたが、とんでもない間違いであった。

肉は、あきらかに恐るべき発ガン物質であったのだ

肉を食べなければ心臓病死は12％に激減

[グラフE]は、アメリカの報告。セブンス・デイ・アドベンティストと呼ばれる宗教集団と一般のひとびととの心臓病による死亡率を比較したものだ。

このアドベンティスト教団のライフスタイルは、肉食中心のアメリカ型と、大きく異なる。

かれらは菜食主義を基本とした生活を送っている。

研究対象とされたアドベンティストは約二万五千人。かれらは全員カリフォニア州在住。

同州に住んで、肉を食べている平均的アメリカ人と比較すると、心臓病死亡率は極めて少なく、男性26％、女性36％。

つまり心臓病発作の死亡リスクは、男性は四分の一、女性は三分の一に急減するのである（一九七八年、フィリップス博士ら）。

ここで興味深いのはアドベンティスト教会は菜食を強制はしていない。

だからアドベンティストでも、肉をまったく口にしない完全ベジタリアンは45％にすぎない。

残りは、いくらか肉食をたしなんでいる。

これら肉食アドベンティストの心臓病死亡率は、通常人の37％。驚くべきことに完全ベジタリアンのアドベンティストの死亡率はわずか12％なのだ。

肉を食べなければ心臓病で死ぬ確率は八分の一以下になるのだ。

さらにフィリップス博士らは、致命的心臓病リスクは肉を食べる頻度に比例することをつきとめた。

週に1～2回肉を食べるだけで、肉を食べないひとより、心臓病で死ぬ危険性は44％も跳ね上がる。

3～5回食べると60％に、6回以上では62％に達する[グラフF」。

これをハンバーガーにたとえれば週に1～2回マックを食べるだけで心臓病リスクは44％、6個以上だと62％アップ…ということになる。

「ベジタリアンは、ノンスモーカーが多いからではないか？」と疑問を挟むひともいるだろう。

しかし、ベジタリアン喫煙者ですら心臓病死亡は、肉食喫煙者のわずか40%。やはり菜食は、心臓病死を予防するベストの選択なのだ。

(*グラフAーH『新版・ぼくが肉を食べないわけ』（邦訳、築地書館）参照）

続きはこちらから→　ベジタリアンの食事は高血圧、糖尿病の予防、治療に最適　

月刊マクロビオティック　2000年7月号より

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