それでも命を買いますか? 杉本 彩 (著)

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それでも命を買いますか? – ペットビジネスの闇を支えるのは誰だ – (ワニブックスPLUS新書)

巨大化する「生体展示販売」の裏側で起きていること

一般社団法人ペットフード協会の調査によると、2015年の日本国内での犬の飼育頭数は991万7000頭、猫の飼育頭数は987万4000頭。犬猫合わせると、1979万1000頭とされています。

ちなみに2015年の子ども(日歳未満の男女)の数は1617万人。少子化が叫ばれている日本では、子どもの数よりペットの数のほうが多いのです。

こうした背景もあって今や「ペット王国」とも呼ばれる日本。現在もペット産業- ペットビジネスは拡大を続けています。

しかし日本は本当にペットにやさしい国、ペットが暮らしやすい国なのでしょうか。

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ケージやショーケースのガラス越しに見える子犬や子猫の姿に「かわいい!」という声が飛び交う、あちこちのペットショップでごく普通に見られる光景でしょう。

このように、犬や猫など生きている動物を店頭に展示して販売する業態を「生体展示販売」と呼びます。

日本におけるペットの生体展示販売は伸び悩んでいるともいわれますが、私は逆に、この20年くらいの間に、ペットの生体展示販売の市場は巨大化しているのではないかと考えています。

近年、ペットの生体展示販売の中心は、従来の個人経営のペットショップから集客力の高いホームセンターやショッピングセンターなどに移行しています。

つまり個人経営による「少数仕入れ・少数販売」から、大型専門店化やチェーン展関、大企業参入などによる「大量仕入れ・大量販売」へと、ペットビジネスのシステムが変化してきたということです。

私が「生体展示販売の規模はむしろ巨大化している」と考えるのは、こうした市場背景があるがゆえです。

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生体展示販売には「利幅が非常に大きい」というメリットがあります。ペットショップでは、ペットフードやペットグッズを売るよりも、子犬や子猫が1頭売れるほうが利益は圧倒的に大きくなります。

犬種や猫種によって異なりますが、1頭で数万円から十数万円、種によっては何十万円という価格がつくケースもあります。

例えば2000年代初頭、消費者金融会社のテレビCMの影響でチワワがブームになったときは、1頭50万円近い価格がついたこともありました。

そのため1頭売れれば1日の目標売り上げは十分達成できてしまいます。そうしたうまみがあるからこそ、大手企業もペットの生体展示販売に参入し、その規模は巨大化を辿っているわけです。

また、かわいい子犬や子猫を展示することが動物園感覚の客寄せになるため、ショッピングモールなどで重宝がられるというメリットもあります。

現在の日本のペットビジネスは、この生体展示販売というビジネスモデルをベースにして成り立っています。

しかしその陰には驚くべき、そして心ある人ならば目を背けたくなるような実態が潜んでいます。

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動物を「飼う」とは「育てる」こと

子どもたちが群がるペットショップのショーケースの裏側には、動物たちがさらされている残酷な負のスパイラルが渦巻いているのです。

抱っこさせて「かわいい」と言わせて無責任に売ろうとする生体展示販売のペットショップと、「買う」と「飼う」を取り違えて勢いだけで衝動買いしてしまう購入者。

そこでは、もっとも重要な「責任と覚情」が置き去りにされています。

動物を「飼う」とは「育てる」こと。動物を「育てる」とは、「その命に責任を持つ」ということです。

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ペットを迎えるときには、飼う前にまず次のことを考えていただきたいのです。

・食費やトリミング、医療費などペット用品や設備費などを最後まで負担することができますか。

・犬が近所の人を噛んだ、夜に吠えてうるさいなどペットが起こしたトラブルは飼い主の責任です。万が一トラブルになったり苦情が出たりした場合、責任を持ってしつけをして状態を改善する余裕がありますか。

・今後、子どもが生まれたり、親を引き取ったりといった家族構成に変化が起きる可能性を想定していますか。家族が増えても犬や猫の世話にきちんと手が回りますか。

・動物愛護法によって終生飼養が義務付けられているのを知っていますか。犬や猫が高齢になって介護が必要になっても最期まで面倒を見ることができますか。

・今後、引っ越しをすることになったら、ペットOKの住宅を探せますか。それが難しい場合は、責任を持って犬や猫の新しい里親を探せますか。そこに労力をかける余裕がありますか。

ペットはぬいぐるみではありません。「かわいい」という一時の感情だけでは飼ってはいけないのです。

動物を苦しめる悲劇は、動物を「売る側」だけでなく、「買う側」の意識の問題からも生まれていることを知っていただきたいと思います。

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