病気がイヤがる暮し方: 江戸式健康心得 丁 宗鐵 (著)

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病気がイヤがる暮し方: 江戸式健康心得

健康不安はつくられる

一年に何度も健康診断をしている人がいますが、中には、医者にすすめられるまま必要のない検査をやったり、何人もの医者、たくさんの病院や診療科をはしごし、ドクターショッピングする人もいます。

最悪なのは、検査したら気が済んでしまい、その結果には注意を払わず、それどころか生活改善を心がけない人です。

不健康なのは体というより気持ちの方ではないか?と首をかしげたくなる人がたくさんいます。

本来、健康はポジティブなものです。よりよい健康を求めようという発想でなければ、真の健康は手に入らないのではないでしょうか。

いくつもの不要な検査を経て、ようやく確定診断にたどりついても、本人はなかなか納得しない場合もあるのが、これまたやっかいです。

治療がゴールではなく、たくさんの検査を受けて通院することが目的化している人もいて、ことは複雑なのです。

ほかにも、一定期間診療に通ってストレスが発散されると、とたんに治療をやめてしまう人、情報収集こそ治療努力だと勘違いしている人、検査や薬を指定してくる人、

もの珍しさから最先端の検査や治療、有名医師の診療を受けたがる人、医師や看護師や周囲に同情してほしいだけの人、自分が軽症と知りながらも大げさに訴える人などを目の当たりにしていると、

自分で健康管理に責任を持つという摂養の概念を理解してもらえる日はくるのだろうかと、がっくりきてしまいます。

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江戸時代においては、健康であることは社会人としての責任であり、マナーでした。

日頃のちょっとした努力を積み重ね、いつでも健康な状態を保つことをなにより大切にしていました。

健康管理は大きな使命

「摂養」という言葉は、今は聞き慣れないですが、江戸時代では、「養生」よりも一般的でした。

摂養は、養生よりも広い概念で、①日頃の摂生、②養生、③保養の三つの要素を含んでいます。

日頃から食養生(食養)を心がけ、病気に向かっている状態(未病)のうちに、適切な予防策をとること。

疲れをためないように日頃からきちんと休むこと。病気の手当て。

看病や介護。病後の保養・・・。こういったことを、個人のみならず、家族単位で実践するのが、摂養の考え方でした。

個人や家族の健康は、君主への忠孝をまっとうするためには欠かせないもの、ひいてはそれが社会の利益になるもの、という発想があったのです。

最近、ジム通いをしているスラリとした体型の主婦がけっこういます。

「食事に気をつかって、運動もシェイプアップもしているんですよ」

とおっしゃる彼女たちの中には、家族そっちのけでダイエットをしている人もいます。

「私はジム通いで忙しいから、夫はコンビニ弁当。子どもはファーストフードで済ませています」という返事がかえってくることもあり、なんだか変な世の中になってしまったという感じすらします。

江戸時代ではこういうことは絶対に許されません。健康は家族単位で考えるものだからです。

セルフメディケーションは難しくない

外国の人がさらにびっくりするのが、日本人が二日酔いや、食べ過ぎで病院に行くことです。

自分が好き勝手やっておいて、頭が痛い、気分が悪い、吐き気がするといって健康保険で医者に診てもらうだなんて詐欺ではないか、わざと車をぶつけて保険料をもらうのと同じだと彼らはいいます。

私もまったくそのとおりだと思います。

会社員は厚生年金に入っていますが、その保険料でまかなわれる分は企業と国が払っています。

国民の税金が、飲み過ぎや食べ過ぎのために割かれていることは、おかしいといわざるを得ません。

セルフメディケーションができていないのです。生活習慣を見直す。初期の段階で早く手を打つ。

これだけで病気になる確率は減るというのに。

ましてや、摂養を徹底した結果、得をするのは本人です。不具合で苦しまなくなるのですから。

健康に対して責任感を持てといわれると、なんだか押しつけられた感じがするかもしれません。

でも、自分が幸せになる方法でもあるのです。

江戸の人々は、体質、経済状況や、身分、生活スタイルに合わせた最適な健康法を考えていました。

今なら、家庭状況、住んでいる地域、職業などを鑑みて、自分に合ったやり方をチョイスすればいいでしょう。

「これをやれば誰もが健康になる」というお題目があるわけではありませんし、時代とともに選択肢も少しずつ変わっていきます。


江戸の人々はセルフメディケーションの達人だった!

日常的に心身に気を配るだけでなく、家族・社会でまるごと健康を追求するのが、先人の知恵。そしてこれこそが医療依存の現代を救う鍵なのだ。

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