遺伝子組み換え食品の真実  アンディ リーズ (著)

シェアする


遺伝子組み換え食品の真実

「いったい誰がこの責任を取るのか。貪欲な少数の企業人か、それとも私たち市民なのか。いずれ誰かがこの代償をつぐなうことになる。

主権者は国民であるのなら、誰がどのようにして最終判断を下すことになるのだろうか」

ジム・ハイタワー(作家、編集者、「テキサス農業委員会」元委員長)

laboratory-1009190_640

改ざんされた安全性試験

悪質な科学的操作の最たる例が、バイテク産業による異常な行為である。彼らは、遺伝子組み換え作物の問題点が発覚しないように、安全性試験を改ざんしているのだ。

ジェフリー・M ・スミスは次のような事例を指摘する。

•アベンティス社は、自社が開発した「スターリンク・トウモロコシ」のタンパク質が変化していないことを証明するため、標準の四倍もの時間をかけて加熱した。

•モンサント社は、マウスを使った動物実験において、遺伝子組み換え大豆由来のタンパク質を1O分の一の量にして給餌した。

•モンサント社の研究者は、生乳に含まれるホルモンの量を試験するため、遺伝子組み換え「牛成長ホルモン」の量を四七分の一に減らして乳牛に投与した。

しかも、生乳中の牛成長ホルモンが破壊されたことを証明するため120倍もの時間をかけて殺菌した。

•モンサント社は、タンパク質が急速に分解されることを証明するため、国際基準が推奨する1250倍以上も酸性度の強い消化酵素を使用した。

•「ラウンドアップ・レディ大豆」と一般の大豆の組成を分析して発見された相違点については、公表された文書から削除した。

•米国の食品医薬品局(FDA)は、「牛成長ホルモン」を投与されたラットに抗体が形成されたことを無視した。

•遺伝子組み換え「フレーバー・セーバー・トマト」を給餌したラットが死んだ原因については、いまだに解明されてない。

•スターリンク事件の原因究明にあたって、アベンティス社は、遺伝子組み換えトウモロコシ由来のタンパク質ではなく、バクテリア由来のタンパク質を食品医薬品局(FDA)に提出した。

以上のように、ずさんな科学的調査が多数、実施されている現実を踏まえれば、バイテク産業に関わる科学者が、遺伝子組み換え作物の安全性をいくら主張しても信用することなどできないはずである。

もみ消された情報

corn-634214_640

1139ページにわたるモンサント社の「部外秘」の調査報告書によれば、「害虫抵抗性トウモロコシ(MON863)」を90日以上にわたってラットに給餌したところ、腎臓が縮小、白血球の数が増加したという。

一般の餌を与えていたラットには何も問題はなかった。

ところが、「欧州食品安全機関(EFSA)」は二00四年四月十九日に、この遺伝子組み換えトウモロコシを認可していた。

NGO「GMフリー・ウェールズ」によれば、この事実は「モンサント社と、遺伝子組み換えトウモロコシの安全性を早々に宣言したEUの規制当局の権威を守るために、もみ消されたのだ」という。

事実、「欧州食品安全機関」は、「企業秘密は保護される必要がある」といった都合のいい論理を持ちだして、この報告書と添付資料を公表しなかったのである。

しかし、企業秘密といえども、健康と安全に関わる情報はすべて公開するのが原則のはずである。

しかも「欧州食品安全機関」のウェブサイトは、今もこの遺伝子組み換えトウモロコシが安全であるという方針を変えておらず、企業秘密を盾にして、問題があると考えられる情報を公開していない。

さらに、2004年の下期になって、ドイツ政府はアーパッド・プシュタイ博士にこのモンサント社の調査報告書の内容の評価を依頼したが、

博士がこの調査報告書を見る前には、企業秘密を理由に、守秘義務の誓約書に署名することを要請した。

contract-1464917_640

プシュタイ博士がこの調査報告書を分析した結果、この遺伝子組み換え作物について強く危惧することになったが、ドイツ政府は、彼の見解を公表することを認めず、企業秘密を守ることを要請しだ。

しかし最終的に、プシュタイ博士の見解はインタ—ネットを通じて公表された。

プシュタイ博士は、「この調査報告書には多くの不備や重大な省略部分があり、全体としては科学的な研究と呼べない」と批判し、次のように問題を指摘している。

「雄のラットの白血球とリンパ球がいちじるしく増加し、腎臓が縮小しており、それを産生物に特有のばらつきとは考えられない。

リンパ球が増加しているのは、ウィルスの感染や腫瘍ができている可能性を示している。

モンサント社の調査報告書によれば、遺伝子組み換えトウモロコシ(MON863)を多量に給餌されたラットには、腎臓や肝臓など主要な臓器に重大な病変が起きていたり、

免疫機能(白血球、リンパ球、顆粒球)に障害や、糖代謝に異常をきたしている可能性があることを示している」

モンサント社は、この調査報告書が公開されるのを阻止するため、裁判所に訴えた。

2005年6月、ドイツの裁判所は、モンサント社に対して調査報告書の公開を命じる判決を下したが、モンサント社は上告して公表を拒否している。

同月には欧州評議会が、「MON863」の認可を取り消す決定をした。

ところが欧州連合は非民王的で複雑な構造の組織であるため、欧州委員会は現在も承認を取り消していない。


「未知の毒性やアレルゲンの影響をもっとも受けやすいのは子どもたち」―。

発がん性リスクなど隠蔽される人体への影響と、米国の巨大企業を中心とした組織的な策略の全貌を明らかにする!

問われる消費者の選択。

遺伝子組み換え食品の真実
アンディ リーズ 白水社 2013-02-25
売り上げランキング : 147630

by ヨメレバ