闇の支配者たちの情報操作戦略 サイオプス 金融サイバー攻撃から始まる「第3次世界大戦」のカラクリ
開戦前夜特有の「意識の断絶」
まさに「断絶」といっていいぐらい意識、いや認識が変化していている。
おそらくこれほど日本人の意識が変化したのは、1990年のバブル崩壊、あるいは終戦直後の1945年以来のことではないか。
こうした「意識の断絶」は決してめずらしくない。 典型的な例でいえば「9・11」のアメリカがそうだ。
2001年9月11日以前と以後ではアメリカ市民の「テロ」に対する認識は一八〇度変わった。
「9・11」以前のアメリカ人に「アフガニスタンと戦争をする」といえば、ほぼすべての市民が猛烈に反対しただろうし、ましてや「愛国者法」といった人権を著しく制限する法律に賛成するはずもなく、そんな政策を掲げるような政権はあっという間に崩壊しただろう。
しかし、現実には「テロとの戦い」を掲げたジョージ・W・ブッシュ(ベイビー・ブッシュ)の政権は空前の高支持率に支えられて戦争に邁進した。
じつはアメリカが戦争するとき、必ずこの「意識の断絶」が起こっている。
いくつか列挙してみよう。
◎メイン号事件
1898年にアメリカの戦艦メイン号が爆破・撃沈された事件。
アメリカの新聞がいっせいに「スペインによるテロだ」と報じた結果、戦争に反対する世論が南北戦争後に一気にスペインとの戦争に傾いた。
この米西戦争で勝利したアメリカは中南米の権益およびフィリピンを支配下に置いてアジア再進出の足がかりを得た。
◎ルシタニア号事件
1915年にイギリス船籍の客船ルシタニア号がドイツのUボート(可潜艇)によって撃沈されて、アメリカ人128人を含む1198人が犠牲となった事件。
当時のアメリカは外国との戦争には関与しない「モンロー主義」から第1次世界大戦には不参加を表明。
その結果、戦争特需で空前の好景気に沸いていた。ところが、このルシタニア号事件がきっかけになって対独参戦を決定する。
◎真珠湾攻撃事件
1941年にアメリカ太平洋艦隊の根拠地であるハワイ真珠湾を日本海軍機動部隊が宣戦布告前に奇襲し、戦艦16艦と2400名のアメリカ兵が卑劣な日本軍の騙し討ちによって虐殺されたと喧伝した結果、
第2次世界大戦への不参戦を求めていたアメリカ市民は対日参戦を熱烈に支持することになった。
その後、アメリカはヨーロッパ戦線にも参戦し、第2次世界大戦の覇者となる。
◎トンキン湾事件
1964年に北ベトナムのトンキン湾で北ベトナム軍の哨戒艇がアメリカ海軍駆逐艦に2発の魚雷を発射した事件。
この事件によってアメリカは本格的に軍事介入してベトナム戦争へと突入する。
アメリカ人が戦争を始めるための「ルール」
勘違いされやすいが、アメリカ市民の多くは別に好戦的な人たちではない。世界的に見ても「戦争」を嫌っている人が多いぐらいだろう。
これには理由がある。
アメリカは建国以来、移民の国家として成立してきた。
とくに初期の市民は宗派の弾圧を受けて逃げてきた人たちであり、その後の大半は本国の飢饉や不況、経済的な理由から移住してきた人たちだ。
それは現在も変わりあるまい。
宗教や文化、民族の違う人が集まり、出身国もバラバラなのだ。当然、他国に軍事介入すればその国出身の市民が反発する。
なかなか市民の同意を得にくいのだ。また、移民してきたばかりの人たちは、まずは自分たちの生活が最優先で戦争などしたくはない。
そんなアメリカ市民が一致団結できることがある。
──ルールを破って不正な方法で罪なきアメリカ人を殺害した。
この瞬間、アメリカ世論は一致団結して敵を倒せと叫ぶようになる。
アメリカは文化も人種もバラバラゆえに、この人種が殺されたときは戦争をして、この人種のときはしないでは国家が成り立たないのだ。
アメリカ政府は、いつ、いかなるときもアメリカ市民を不正に殺害した組織や国家に対して断固たる態度で挑む。
そして市民は不正な方法で市民を虐殺した「悪の組織」に正義の鉄槌を下すときのみ戦争を受け入れて協力する。
これがアメリカという国家とアメリカ市民の「ルール」となっているのだ。 逆にいえば、それ以外ではアメリカ市民は「対外戦争」を許さない。
あの領土が欲しい、あの権益が欲しいというだけで軍を派遣すれば猛烈な反対運動が起きる。そこには「正義」がないからだ。
実際に正義のない戦争に対するアメリカ市民の反発は本当にものすごい。日本を含めた普通の国では「始まったものはしかたない」とズルズル戦い続けてしまいやすいが、アメリカは違う。
正義がなければ即座にやめろという世論が生まれる。
アメリカ人が戦争を嫌っている何よりの証拠だろう。許容される「正義」の戦争はアメリカ市民を卑劣な方法で虐殺した「悪」と対峙するときだけなのだ。
本来ならばこの条件がそろってアメリカが参戦する事態は起こりにくい。
たとえそういう事件が起こったとしても、起こした側は「犯人」を捕まえ、国際法にもとづいてきちんと対処すればアメリカ人だって矛を収める。
戦争になることはない。 ところが、である。
この「卑劣な方法によるアメリカ市民の虐殺」がじつにタイミングよく起こり、犯人側はこぞって「自分たちはやっていない」「自分たちもハメられた」、あるいは「無関係だ」と開き直るのである。
当然、犯人は捕まらず、法で裁かれることもない。「不幸な事件」「お悔やみ申し上げる」という言葉のみ。
結果、アメリカ社会の怒りは火に油が注がれたように爆発していくことになる。
いずれにせよ、こうした事件が起きるとアメリカ市民はあまりのショックで当初は茫然自失となりやすい。
次にアメリカのメディアがいっせいに「敵」を認定し、その悪辣で卑劣な手口を報じる。
ショックを受けたアメリカ市民はそのやり場のない感情を「敵を倒せ」という目標で解消しようとする。
それ以外のことには関心を失い、「卑劣な敵に正義の鉄槌を下す」ためならば、どんな犠牲もいとわなくなる。
一種の集団ヒステリーが起こって、あれほど戦争を嫌っていた国民が突然、異常な好戦性を発揮してしまう。
いつもこのパターンでアメリカは戦争を始める。 例外はないと断言できるほどだ。
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