2週間で体が変わるグルテンフリー(小麦抜き)健康法 溝口 徹 (著)

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2週間で体が変わるグルテンフリー(小麦抜き)健康法 (青春新書インテリジェンス)

脳内で麻薬様物質に変化する

今までも話してきたように、私のクリニックには、発達障害と診断されたお子さんも診療にくる。

そこで自閉症と診断されたお子さんにIgG抗体の検査をすると、その多くが小麦に対する抗体を持っているのだ。

今や自閉症への食事指導としてグルテンフリー・カゼインフリーは基本中の基本としておこなわれている。

序章で紹介したA君も例外ではなく、小麦に対するIgG抗体の値が高かった。そこで厳密なグルテンフリー・カゼインフリーをおこなったところ、抗体値は明らかに下がったのである。

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もちろん一生グルテン・カゼインを含む食品を食べられないということはなく、値がよくなれば、アレルギー反応は起こりにくくなる。

多少食べても、グルテンに過敏に反応することが少なくなっていくのだ。

こうして、ある程度食べてもいい状態にしていくのがべストだ。

最近では自閉症のお子さんを持つ親御さんでグルテンフリーやカゼインフリーの認識を持つ人は増えてはきているが、まだ一般的ではないようだ。

いまだに自閉症=療育・環境整備という考え方がメインなので、なかなか食生活までは思い至らない。

自閉症の臨床現場で、もう少し食生活に関心を持つドクターが増えていけば自閉症のお子さんに劇的な改善が得られるのではないだろうか。

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私の印象では、発達障害系のお子さんは、例外なく腸の状態が悪い。自閉症も遺伝的素因もあるとはいわれているが、いまだそのような遺伝子は見つかっていない。

ここからは私の推察なのだが、もしかすると、腸の粘膜の弱さ、腸内細菌のバランスの悪さが根本的な原因で、自閉症を発症している可能性もあるのではないだろうか。

私がおこなっている「分子整合栄養療法(オーソモレキュラー療法)」は、もともと精神疾患の治療法として確立されたものだ。

その創始者の1人であるカナダのエイブラハム・ホッファー博士も、かなり自閉症の患者さんを診ていたが、発達障害には「一に腸、二に腸」と、自閉症やアスペルガーには腸が関係していると考えていた。

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さらに、1950年にオランダの小児科医であるW- K・デッケは、小麦が利用できなくなった第二次世界大戦中にセリアック病の子どもの症状が改善したということを記載している。

また、統合失調症の入院患者が激減していることもわかっている。ストレスの度合いが高いはずの戦争中にもかかわらずだ。

最近では一部の精神科の先生の中で、統合失調症の患者さんにもグルテンフリーの食事指導もおこなわれるようになってきた。

なお、グルテンの感受性が高い場合、子どもでは、腸管以外の症状を訴えることは少ない。多くは腹痛、慢性の下痢など典型的な消化器症状を訴えることが多い。

ところが大人では、腸管以外の症状を訴えることが多くなり、その代表的な症状が疲労感である健康診断などで何の問題もないといわれている方でも、おなかが弱い、下痢や便秘が見られる、または疲れやすいという症状があれば、一度グルテンフリーを実践してみることをおすすめする。

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小麦アレルギーではなくても、潜在的にグルテンの感受性が高い人は多いだろう。

それで症状が改善すれば、グルテンの感受性が高いということであり、今後の食生活を考えていくうえで参考になると思う。

ところで、グルテンやカゼインで怖いのは、麻薬のような中毒性があることだ。

グルテンフリー、カゼインフリーの話をしても、「パンやパスタがどうしてもやめられない」「牛乳とチーズは毎日食べているから、やめるのは難しい」という人が少なからずいる。

それは、あなたの意志が弱いからではない。グルテンとカゼインのアミノ酸の配列のせいなのだ。

カゼインとグルテン由来のグリアジンのアミノ酸の配列をそれぞれ見てみると、「トリグトファン」「ブエニルアラニン」などの聞に、「プロリン」というアミノ酸が並んでいる。

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実はその配列が、モルヒネにそっくりなのだ。

たんぱく質は、一つひとつのアミノ酸がくっついてペプチドになり、それが総動のようにつながってたんぱく質になるという構造をしている。

私たち人間の体は、アミノ酸の配列で物質を認識している。

小麦と乳製品のアミノ酸の配列は、モルヒネに似ているため、「同じものが来たな」と認識してしまう。

しかもその成分は、脳の関所といわれている血液脳関門を通過してしまい、レセプター(受容体)にくっついてしまうのだ。

モルヒネと似た構造のものが血液脳関門を越え、神経細胞のシナプスのオピオイドレセプター(モルヒネ様物質の受容体)でキャッチされると、中毒症状を引き起こす。

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たとえば、ハイになってしまったりイライラしたり、幻覚や妄想まで起こしてしまう。

それだけではない。神経伝達物質の発現を阻害してしまうのだ。

シナプスから出てくる正常な神経伝達物質を阻害するため、心の安定に欠かせないセロトニンやGABAが出づらくなったり、あるいは神経を興奮させるノルアドレナリンを過剰に分泌させてしまう。

すると、記憶があいまいになる、情緒が不安定になる、うつになる、興奮しやすくなる
といった症状を引き起こす。

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