私の人生を一変させた食事とは?
私にとって、プロ生活で最低の瞬間が、2010年1月27日のあのダブルフォルトだった。
しかし、2011年7月までに──あれからわずか18カ月後である──私はまったくの別人になっていた。
体重が約5キロ落ち、かつてなく強靭になり、子ども時代から振り返っても一番の健康体になった。
そして生涯の目標だった2つのゴールに到達した。ウィンブルドン優勝と、世界ランキング1位だ。
最後に、ラファエル・ナダルのギリギリのバックハンドの行く末を確かめて、ウィンブルドンカップに手が届いたとき、私はまだ何もなくて不可能な夢を見ていた6歳の目でそのシーンを見ていた。
私はグラウンドに倒れ込み、思いきり腕を天に突き上げた。そしてかがみこんだ私はウィンブルドンの芝を少し引き抜き、食べた。
そこには汗の味がしみ込んでいた。私の汗だ。それまで味わったことがない甘い味が口に広がった。
わずか18カ月で、私をただの「そこそこいい選手」から「世界最高の選手」に生まれ変わらせたのは、新しいトレーニングプログラムではなかった。
私の無駄な体重を落とし、集中力を高め、生まれてこのかた最高の健康状態を作り出してくれたのは新しいラケットでも、新しい練習でも、新しいコーチでも、新しいスタイルのサーブでもなかった。
それは、新しい食事だった。私の人生が大きく変わったのは、体に合った正しい食事を始め、体が求めるとおりに従ったからだ。
新しい食事にしてから最初の3カ月で、体重は82キロから78キロまで落ちた。
家族と友人がやせすぎではないかと心配するほどだった。だが体のキレがよくなり、神経はさらに研ぎ澄まされ、かつてないほど活力がみなぎるようになっていた。
さらに動きが速くなり、柔軟性も増し、他の選手ならラケットが届かないボールにも届くようになり、かつ強さも増し、精神面の集中力も今までになくしっかりしてきた。
疲れを感じることも、息切れすることもなくなった。
アレルギー症状も消えた。喘息も出なくなった。今まであった恐怖や疑念はすべて自信と置き換えられた。もう3年近くひどい風邪やインフルエンザにかかったこともない。
一部のスポーツライターは私の2011年のシーズンを「プロテニス史上最高の一年」と呼んだ。
タイトルを10個獲得し、グランドスラムで3勝、そして43連勝だ。そのために変えたのはただ一つ、食事だけだったのだ。
私が一番驚かされたのは、わずかな変化なのに、もたらす結果があまりにも劇的だったということだった。
私はただ、グルテン(小麦に含まれているタンパク質)を数日間排除しただけなのに、私の肉体はすぐに良い方向に向かったのだ。心身ともに軽くなり、速くなり、クリアになった。
2週間後、私は人生が大きく変わったことを実感した。
その後さらにいくつかの要素(砂糖を減らし、乳製品を除いた)を付け加えたが、毎朝目覚めたその瞬間に、かつての自分、幼少時代の私とは全然違うことが感じられた。
ベッドから跳びだせるようになり、その後の一日が楽しみになった。そして、私が学んだこの素晴らしい内容を、せっかくだから皆さんと分かち合わねばならないと考えるようになった。
“最高の食事”とは何か、を知るための術
本書はプロのアスリートのためのものではない。体の状態や健康を向上させるうえでもちろんプロテニス選手だけに役立つ本でもない。
実際、ここで私がお話しする内容は厳密な意味で「食事」の話ではない。
そんなことを言ったら、読者は私が食べろと言った物をそのまま食べるしかなくなってしまうではないか。まったく筋が通っていない。
ほとんどのダイエットプログラムでは、相手が27歳のテニス選手でも、35歳の二児の母親でも、50歳の副社長でも、同じ物を「食べなければならない」と指導する。バカげた話だ。
「…しなければならない」(Must)という言葉自体がおかしいのだ。
あなたの肉体は私の肉体とはまったく違う代物だ。指紋を見ればわかるだろう。
一人ひとりが違い、同じ人は世界のどこにもいないのだ。つまり、あなたの肉体も全世界の他の人たちとまったく違う。
だから、私にとって最高の食事を、あなたにとってもらいたいわけではない。ただ、あなたにとって最高の食事が何かを知るための術を伝えたいだけなのだ。
ジョコビッチの生まれ変わる食事 | ||||
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