ドイツ薬草療法の知恵 聖ヒルデガルトのヒーリングレシピ (veggy Books)
ドイツの森を散歩していると、自然の中に「Viriditas(ヴィリディタス)」が満ちているのを感じます。
それはヒルデガルトが表現した、緑の癒しの力、神から流れる生命の源、生きとし生ける全てのもの。
緑豊かなドイツをはじめヨーロッパの国々では、ヒルデガルトの教えが今も息づいています。
ヒルデガルトは今から約900年前に生きた修道女で、ヨーロッパの自然療法の母と言われています。
彼女は自然界にある秘められた力を見出し、万物の声をスピリチュアルな能力で聴くことができました。
そして自然の中には全ての癒しが隠されていることを知っていたのです。
ヒルデガルトの自然療法は、とてもシンプルで優しいものです。
自然からの癒しはすぐそばにあり、私たちの生活の中でも気軽に取り入れることができます。
最初の一歩は、毎日の暮らしの中から始まります。そう、まずは台所から。そして生き方、考え方も……。
この本では、私たちの身近にある野菜や果物、薬草を使った、簡単で美味しいヒルデガルトのレシピをたくさんご紹介しています。
食はとんな薬よりも貴重なものーーそんなヒルレデガルトの教えを暮らしに取り入れてみませんか?
ドイツの自然の中を散歩しているような、そんな気持ちでページをめくっていただければ幸いです。
森ウェンツェル明華
幸せな毎日を送るための7つの知恵
ーベネディクト会修道女たちの暮らしから一
ヒルデガルト修道院では、彼女の知恵を受け継いだ修道女たちが今日も祈りと共に日々の暮らしを営んでいます。
1. 日常の中で四元素を感じる
ヒルデガルト療法の基本と言える「四元素(空気・火• 土・水)」(P30参照)。これらを意識的に取り入れて、地球とのつながりを持ちましょう。
空気…旅に出たり、想像力をかきたてる本を読む。
火…ときにはキャンドルの灯りを食卓に。
土…ハーブを植えて土に触れたり、自然の中に出かけてみる。
水…意識しながら水を飲んだり、ゆっくりお風呂やスイミングヘ。
2. 住まいを静けさと光のある場所に
修道院の中はいつも静謐に保たれ、清められています。家庭がほっと心落ち着けるる場所であるように、すっきりと片付け、シンプルな生活をこころがけましょう。
3. 心身の休息をとる
定期的にファスティング(P46参照)をして、心・体を休める習慣をもちましょう。質のよい睡眠をとっているとき、魂は肉体を健やかにします。
4. 食を薬とする
ヒルデガルト療法で用いられてるハーブ・スパイスや季節の野菜を食卓に取り入れてみましょう。
5. 天を向いて、共に歩む
私たちは決して一人では生きていけません。人や自然、多くの存在と関わり合って生かされています。
社会的な成功や世間体を気にするのではなく、天を向き、常に感謝と愛をもって生きていれば、その想いに惹かれた人々があなたの周りに集うのです。
6. 祈りなさい、働きなさい
祈りには、心の中に静けさをもつことや瞑想することも含まれます。また働くというのは、生活のための労働という意味だけではありません。
自分の心をみつめ、直観(魂の声) に従って生きること。私たちには、一人ひとり使命があるのです。
7. 真の美しさを磨く
ヒルデガルトが述べた美しさとは、「愛」「徳」「知恵」があることです。捉われから解放され、宇宙と調和して生きていると、それが真の美しさにつながっていきます。
ドイツでの暮らし
自然療法の宝庫
ドイツでは国民の自然療法への関心が高く、補完医療として市民権を得ています。
「ハイルプラクティカー(自然療法士)」という職業もあり、約60パーセントの人が自然療法による治療を体験したことがあるそうです。
一般的な病院でも自然療法が取り入れられていて、次男が腹痛で入院したときも抗生物質などの投薬はなくホメオパシーのレメディが処方されました。
ホメオパシーやフラワーエッセンスのレメディ、薬草類などは全て薬局で購入することができますし、自然療法を学べる場所もたくさんあります。自然療法の雑誌や本も多いです。
家庭でも自然療法はとても身近です。我が家でも、風邪や怪我なとのお手当ては全て自然のもの。
検査はきちんとしますが、ドイツで暮らしていると自然の癒しのパワーを本当に感じることができるのです。
各家庭には「おばあちゃんの知恵袋」として薬草のレシピなとが伝わっています。
オーガニック大国
ヨーロッパでは、オーガニックのことをBIO (ビオ)と呼びます。
元はドイツ語のbiologischdynamisch ( ビオロギッシュ ダイナミッシュ農法、バイオダイナミック、生命循環農法) の略で、1924年にオーストリアの哲学博士であるルドルフ・シュタイナーが提唱したことが始まりです。
シュタイナーはヒルデガルトから影響を受けた人物の一人で、古来からあった自然哲学を学術的に定義づけてシステム化し、ビジネス、教育、医療など幅広い分野に取り組みました。
シュタイナーの学校はドイツ各地にあり、自然療法や教育関連の研修など独自の教育を行っています。
そもそもドイツでオーガニック産業がさかんになったきっかけは 、100 年前にさかのぼります。
当時のヨーロッパは産業革命ののち一気に近代化が進み、人間が自然や宇宙と切り離され、唯物主義や戦争へ突き進んでいくような時代でした。
そういった中で、化学肥料や農薬中心となっていく農業に危機感をもった生産者たちが立ち上がり、集会がもたれました。
こうした市民運動からの流れがあり、年々オーガニックヘの関心が高まっているドイツ。私の暮らす小さな街にも行きつけのBIO農場やBIOスーパーがいくつかあります。
また普通のスーパーでもBIOブランドを開発したりと、毎日の生活でBIOが当たり前のチョイスになってきています。
またドイツでは、無駄遣いをせず全てを循環させていく経済の仕組み(サーキュラー・エコノミー、循環型経済)や、「私の幸せ=地球の幸せ」という概念が深く根付いています。
各地域には衣類や靴をリサイクルするための収集ボックスがありますし、近所のオーガニック農揚では正式な収穫の後に残った作物を自由に持ち帰ることができます。
ある日、私が電気をつけっぱなしにしていたときのこと。
ドイツの小学校に通っている息子に「今、ママのせいでアマゾンの木は切り倒されてるんだよ」と言われ、その一言が胸につきささりはっとさせられました。
エネルギーの無駄遣いをはじめ、毎日の暮らしの選択の一つひとつが、地球環境、アマゾンの森につながっているーーそんな風に子供たちが理解していることに感動し、同時に大きな反省と学びになりました。
世界で愛される偉大な修道女の叡智。中世ヨーロッパから900年のときを超え、内なる美しさと健やかさ、真の強さをあなたへ。
ヒルデガルトの薬草やベジタリアンレシピを多数掲載した、ホリスティックな癒しの入門書。