認知症高齢者特有の昼夜逆転と睡眠障害に対するアロマセラピー

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認知症高齢者特有の昼夜逆転と睡眠障害に対するアロマセラピー

私は認知症専門グループホームでの勤務を経て、現在、アロマセラピスト、介護福祉士として、高齢者にアロマトリートメントを行っています。

介護士としての経験から利用者様の状態を把握し、1人ひとりに合わせて精油を選び、施術を提供しています。

そこで今回は、これまでの経験を元に、認知症高齢者に対するケアの実際をレポートします。

人は加齢に伴い、睡眠障害を引き起こしやすくなります。

その原因には、日中の活動量が減る、眠りの質が悪くなる、体内時計に関わるホルモンである「メラトニン」の分泌量が減る、不安や心配事など精神面による、などが考えられます。

中でも認知症の方の場合、脳の細胞伝達が上手くいかず、メラトニンホルモンの減少から体内時計が乱れ、自律神経のバランスも崩し、昼夜逆転や入眠障害が起こりやすくなるのです。

以前、認知症専門のグループホームに勤めていた頃、眠れず帰宅願望から不穏になる方や、妄想や幻想から歩き回る方、外へ出ようとする方がいました。

とりわけ眠れない方の転倒リスクが高い場合は、その方につきっきりになるため、他の利用者の方の安全面にも影響を及ぼします。

また、昼夜逆転の悪循環も続くのです。

そのため施設では、日中のレクリエーション、体操、散歩などのアクティビティや料理、洗濯、洗い物など、興味があることを積極的に行う「個別ケア」に力を入れていました。

また、日光浴ができるようにも意識していました。介助の方法も、ご本人の持つ力を最大限に引き出して行う「生活リハビリ」を実践していました。

アロマハンドトリートメントで悪循環が好循環に!

このように、介護の力でできることをしていても、やはり昼夜逆転や入眠障害は起きてしまいます。

そこで、私が夜勤のときに行ったのが、アロマハンドトリートメントでした。

背中をさするだけでは眠ることができない利用者の方が、フランキンセンスやローズウッド、ネロリなどの香りでハンドトリートメントをすると、その最中にウトウトと入眠されるのです。

さらに凄いと思ったことは、普段は夜間に2~3回トイレに起きられる方が、ハンドトリートメントをした日の夜間は1回も目覚めず、朝までぐっすり眠れたことが何度もあったのです。

また夜間に、尿失禁が時折あった方も、症状なく朝まで休まれていました。

このように朝までぐっすり眠れると、日中もしっかり起きていられるので、面会に来られる家族も本人も喜ばれ、好循環が巡ります。

認知症高齢者の方は嗅覚がほとんどありません。それでも、香りを使うことにより、脳に届いていることが確信できましたし、タッチングの素晴らしさも体感しました。

近い将来、介護施設のケアの場に、ハンドトリートメントやアロマの香りがあって当たり前、となることを願っています。

取材・文◎砂川沙央里
取材協力◎Healing Space Micro
TEL082-962-8031 http://kaigoaroma-micro.jp

セラピスト 2019年6月号より

隔月刊『セラピスト』は、アロマテラピー、ロミロミ、整体などのボディセラピーから、カウンセリングをはじめとする心理療法、スピリチュアルワークまで、さまざまなジャンルを扱っている専門誌です。

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セラピスト 2019年 06月号