隔月刊『セラピスト』より
「香道」では、香りは嗅ぐのではなく「聞く」という
茶道、華道と並ぶ日本の三大芸道の一つである「香道」。
香道の歴史は古く、約1400年前に淡路島に漂着した一本の香木に端を発するのだそうです。
そして、日本の精神文化とともに育まれ“香りの芸術”とも評されるこの芸道とは、どのようなものなのでしょうか。
香りの文化としてセラピストの皆さんに馴染み深いのは、やはり、ヨーロッパに端を発する「アロマテラピー」でしょう。
身体のケアだけでなく、好みの香りで自分や空間を香らせたり、またそれによる癒し効果も注目され、もはや日本でもポピュラーな存在になっています。
その一方で、日本古来の香文化である「香道」については、まだ一般的に知られていないことが多いのではないでしょうか。
反面、各地で開催される香席の体験会やセミナーなどは、席がすぐに埋まってしまう程盛況な場合も。
はたして、現代の日本人が香道に求めるものは何なのでしょう。
学校法人国際文化学園国際文化理容美容専門学校(東京・渋谷)では、そんな日本古来の香文化である香道の世界を気軽に体験できる香席「お香の会〜名香合わせ」(解説:有識文化研究所 仙石宗久氏)を定期的に開催。
「香り」を芸術にまで昇華させたその世界観の一端に触れることができます。
昨年11月に開催された名香合わせは、仙石氏所蔵の勅命香(天皇、上皇によって銘がつけられた貴重な香木)「楊貴妃」「末廣」「君が代」の三種類の香を聞き比べ、どれが「君が代」であったかを当てるという雅なもの。
香道では、香りを「嗅ぐ」のではなく「聞く」と表現します。
そこには、嗅覚だけでなく、心を傾け心の中でその香りを味わい、そして人それぞれの価値観や精神性を加味して感じるものという解釈が込められているのだといいます。
それぞれの名香の由緒を知り、焚かれた一辺の香木からほのかにたつ香りを聞くー。
複雑で深い繊細な香りの中、一定の決められた所作を通して感じる知覚の広がりと安らぎ。
この感覚こそが、「香道」の世界感をあらわす一つなのかもしれません。
香木は、東南アジアの島々で採取される数千年前の天然の埋もれ木です。新たに生産されるものでない、限りある貴重なもの。
近年、マインドフルネスとしても注目されつつある要因として、森羅万象を感じさせる香木の重厚な香りがあげられるのではないでしょうか。
静寂を味わいつつも最後には、聞香の感想をシェアしたり歌を詠んだりと、いかにも“日本らしさ”を感じさせてくれる作法も興味深いところです。
日本人の心の深い部分にまで触れる「香」の文化。
探してみると、入門者向けの体験会やワークショップなどが各地で開催されているので、ぜひ、足を運んでみてください。
香りを「嗅ぐ」から「聞く」に変えるー。きっと、セラピストとして新たな気づきに出合えるはずです。
取材・文◎本誌編集部
取材協力◎学校法人国際文化学園 衣紋道東京道場
TEL03-5459-0075
https://kokusaibunka.ac.jp
セラピスト 2020年2月号より
隔月刊『セラピスト』は、アロマテラピー、ロミロミ、整体などのボディセラピーから、カウンセリングをはじめとする心理療法、スピリチュアルワークまで、さまざまなジャンルを扱っている専門誌です。
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