自然農法 わら一本の革命 福岡 正信 (著)

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自然農法 わら一本の革命

驚異の〈自然農法〉

田を耕さず、肥料をやらず、農薬などまったく使わず、草もとらず……それでいて豊かな収穫をもたらす、驚異の〈自然農法〉

四大原則とは

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第一は、不耕起(無耕転あるいは無中耕)です。

田畑は耕さねばならぬものというのが、農耕の基本ですが、私は敢えて、自然農法では、不耕起を原則にしました。

なぜなら大地は、耕さなくても、自然に耕されて、年々地力が増大していくものだとの確信をもつからです。

即ち、わざわざ人聞が機械で耕転しなくても、植物の根や微生物や地中の動物の働きで、生物的、化学的耕転が行われて、しかもその方が効果的であるからです。

第二は、無肥料です。

人間が自然を破壊し、放任すると、土地は年々やせていくし、また人間が下手な耕作をしたり、略奪農法をやると、当然土地はやせて、肥料を必要とする土壌になる。

しかし本来の自然の土壌は、そこで動植物の生活循環が活発になればなるほど、肥沃化していくもので、作物は肥料で作るものだとの原則を捨て、土で作るもの、即ち無肥料栽培を原則とします

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第三は、無農薬を原則とします。

自然は常に完全なバランスをとっていて、人間が農薬を使わねばならないほどの病気とか害虫は発生しないものです。新作法や施肥の不自然から病体の作物を作ったときのみ、自然が平衡を回復するための病虫害が発生し、消毒剤などが必要となるにすぎない。

健全な作物を作ることに努力する方が賢明であることは言ううまでもないでしょう。

第四は、無除草ということです。

草は生えるべくして生えている。雑草も発生する理由があるということは、自然の中では、何かに役立っているのです。またいつまでも、同一種の草が、土地を占有するわけでもない、時がくれば必ず交替する。

原則として、草は草にまかしてよいのだが、少なくとも、人為的に機械や農薬で、殲滅作戦をとったりはしないで、草は草で制する、緑肥等で制御する方法をとる。

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自然食ブームの意味すること

自然食の直販がどこまで伸びるかは、今後の問題ですが、一つの希望はあるんです。

果物作りというのは、今、非常なピンチに追いこまれていますが、このピンチがかえって自然食ブームを伸ばすというような点からいうと、一つのチャンスになってきたような気がするんです。

というのは、いくら百姓が努力して、一生懸命で薬をかけ、そして苦労して作っていてもですね、もう現在では、再生産ができかねるような価格でしか売られていない。

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ミカンでいいますと、温州ミカンあたりで、キロ四十五、六円が生産費ということになっておりまして、それで、農家の手取りは、悪いものは四十円くらい、いいものが六十円くらい、今年で五十円くらい。

今年あたり、特にいいものを作った農家でも、本当の手残りというのは一キロでいって、十円か二十円というのが実伏なんです。

下手をすると、もう、生産費が上がったために、手には何も残らないという程度なんです。

こういうふうになってきますとね、一生懸命努力しても追いつかない。価格が暴落してからのこの1~2年は、共選や農協の指導が全く厳重になってきまして、悪い品を作った場合には、没収というようなところまできています。

だから悪いものを作ったときにはもう、共選に出せないというのが実状でして、そのために庭先選別が強化されてきた。

庭先選別というのは、昼中かかって一生懸命とってきたミカンをですね、夕飯を食べてからのちに、自分の庭で、十一時、十二時頃までかかって、みんな、それを一つ一つ手にとって、悪いミカンを選別して、いいものだけを残して出荷するということなんです。

だからもう、ここ四、五年は、ミカン作りの農民は、夜ねむれないほどのところまで追いこまれている。

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こうまでしても、その何割かは没収される。

そして、平均の手取りは、わずかに五円でもあればいいといった状態になってきた。

そうすると、私が薬もかけない、化学肥料も使わない、土地も耕さないで作った、そのミカンがですね、生産費が安いから、これを引けば、どうかすると、一生懸命作った人よりも、手取りが多いということになってくる。

しかも、私が出すのは、もう、ほとんど無選別でただとったやつを、箱に放り込んで送るというかっこうですから、夜はもちろん早く寝てるというわけです。

隣近所の人が、それを見ておりまして、こう差があって、苦労して、しかも手残りがないのではかなわない、もう、来年から薬をかけるなって言えば、かけなくてもいいから、是非一緒に出荷させてくれというような具合になってきた。

そういうふうに生産者の方に、自然食を作って出すのも悪くないという気運が出てきた。

そして消費者の方もですね、一昨年は悪口もぼつぼつ出ましたけど、昨年は少しも苦情が出てこなかった。

それで、話を聞きますとね、消費者は、従来、自然食品というと、高いのが常識になっている、高くなけりゃ自然食品じゃないということになっている。だから、本当の自然食品でも、安く売ったら、むしろ売れないんだ、という話も小売人の方から聞いていたんです。

高い自然食品だとですね、これは必ず商売人が横槍を入れるというか、それに便乗しようとする気運が出てくる。

自然食品でもないものも、自然食品として売ったら、馬鹿儲けができるということになってくる。

また、自然食品が高ければ、一部の人しかそれを利用しない、買わないということになるし、そうなれば、どんなにいってみても、高利少量販売ということが起きるだろうと思う。

だから大衆性をもって、誰でもが自然食品を食べるという運動を起こすためには、安くなければいけないというのが、私の考え方だったわけです。

高いと、それは貴重品扱いにして、少数の人は買ってくれますが、そういう人を相手にしていたんでは、結局、本当の生産が伸びてこない。

つまり、大量に流通されるかっこうにならなきゃ、百姓も安心して作物を作れないわけなんです。

だから、安い自然食品っていうものを、やってみたわけです。

消費者が、やっぱり安ければ安くていい、という気持ちになってくれさえしたら、これで軌道にのれる、ということです。

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