お酒の神様 反骨在野の評論家、故・穂積忠彦先生を称える
二セ酒の元凶「原料用アルコール」
「ニセ物の系譜ーーー原料用アルコールの原料は廃糖蜜だ!」
これはサトウキビの搾り浮(廃糖蜜)からつくった工業用アルコールである。
お酒の神様とまでいわれた硬派の酒類評論家、故・穂積忠彦氏は、「日本の酒・・・堕落の元凶」として、この「原料用アルコール」を告発しつづけてきた。
それはニセ酒横行に対する酒類専門家としての怒りに他ならなかった。彼は、わたしにとって酒問題を啓発し、導いて下さった、水遠の師匠でもある。
この腐敗と諸悪の根源は、酒税法にあった。
そこに、このサトウキビ搾り滓(モラセス)を原料とするエチルアルコールが「スピリッツ類・原料用アルコール」として明記されていたのだ。
ウイスキーにも、清酒にも、ワインにも・・・
穂積氏、怒りの指摘だ。
「それは、現行酒税法の中にどっかりと居座り、焼酎甲類どころか、ウイスキーにも清酒にも、ワインにも、はた又、ブランデーにも盛んに原料として使われ、わが国の酒類にとっては必要不可欠の主原料と化しているのである」
穂積先生が一生をかけて告発し、戦い続けた「原料用アルコール」なるものの正体を、さらに探る。
なにしろ消費者には、その存在すら、知らされていなかった。
マスコミにとっても、戦後の酒業界の最大恥部は、触れてはいけないタブーだったのだ。
それは酒税法に「スピリッツ類・原料用アルコール」として明記されていながら・・・
「消費者の前には決して姿をあらわさない。すなわち、商品として流通することは決してない。消費者が買おうとしても決して買うことはできない」
「これを必要とする酒類メーカーがアルコールメーカーから直接にバルク(樽)買いできるだけである」(「本物の美酒名酒を選ぶ」)
つまり、表には全く出ない閣の世界で、この大掛かりな取引は行われてきた。
「消費者には、まったく実態のつかめないこの『スピリッツ類・原料用アルコール』は日本の酒類のもっとも普遍的な主原料として酒類界を支配する。まさに酒類界のフィクサー(黒幕)と呼ぶにふさわしい」
と、真っ向から先生は断じる。
日本酒の四割かサトウキビ原料
その正体はズバリ増量用アルコールだ。日本酒のラベルに注目して欲しい。
「醸造アルコール」とあったら、その正体こそが「原科用アルコール」だ。後述のようにサトウキビの搾り浮、廃糖蜜から大量に生産されている。
これらはアルコール添加酒と呼ばれる(略してアル添酒)。日本で流通している清酒の全体量の半分近くが、この増量用アルコール。
すると、ラベルの「原材料一米、米麹、醸造アルコール」が、おかしい・・・ことに気付く。
「原材料一米、米麹」と原料植物名を表示しているなら、続けて「サトウキビ」と表記されないと、絶対におかしい。
しかし、いまだアル添酒を大量に売る大手酒メーカーは、頭をかきむしりたくなるだろう。
「日本酒は、お米から造っている」という大前提が崩壊してしまうからだ。しかし、わたしはハッキリ正直にラベル表示すべきだと思う。
アル添酒に加えられた増量用アルコールの原材料はほぼ全量サトウキビ廃糖蜜なのだから、「原料一サトウキビ(廃糖蜜)」と正直に書いたほうがスッキリする。
しかし、呑ん兵衛はビックリするだろう。
アル添酒はラム酒の混合酒(リキュール)だ
さらに、真実を告白すると、またやっかいなことが起こる。
廃糖蜜アルコールは、連続蒸留という方式で製造される。つまり、その真実の正体はサトウキビ蒸留酒なのだ。有名なものにラム酒がある。
かつて、カリブ海の海賊たちがグビッとあおり気勢を上げてドクロ・マーク押し立て帆船を襲った。
「ラムの大通り」という映画もあった。南米の熱情ラブ・ロマンスにはラムの甘く危険な香りは欠かせない。
清酒をはじめ日本の酒類に大量に潜み込んできた「原料用アルコール」の正体はサトウキビ廃糖蜜を連続蒸留した蒸留酒であった。
早くいえばラム・スピリッツ。つまりラム酒の兄弟分だ。なんと日本酒全体量の四割近くに、このラム・スピリッツが混ぜられているのだ。
アル添酒がで約半分。万本醸造酒。でも四分の一以下・・・。
酒税法の定義によれば「二種類以上の酒類を混ぜた混合酒はリキュール類混成酒とする」とされている。
つまり、「原料用アルコール」を添加された清酒の正体は、ラム・スピリッツを大量に混ぜられた混合酒(リキュール類)に他ならない。
だから本来ならアル添酒本醸造酒がは、清酒売り場ではなくリキュール売り場に陳列しなければならなくなる。
しかし「そんな恥ずかしいことが、いまさらできるか!」というのが酒業界、政府(財務省)の苦しいホンネだろう。
消費者大衆を欺いてきたツケは、まさに恐ろしい。
ほんものの日本酒を! | ||||
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