アメリカも批准できないTPP協定の内容は、こうだった! 山田 正彦 (著)

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アメリカも批准できないTPP協定の内容は、こうだった!

このままでは日本は破滅する! 国民は本当のことを知らされていない!!このままでは日本は破滅する! 国民は本当のことを知らされていない!!

TPP反対派の急先鋒である元農水大臣の山田正彦氏が、専門家たちによる分析チームを結成して、6300ページにわたるTPP協定文書を精査。

政府の説明や既存の報道とは大きく異なる、TPPの恐怖や問題点を「農業」「漁業」「医療」「食の安全」「公共事業」など、分野別に解説。

2人の米大統領候補までもが揃って反対し、秋の国会では大きな争点になるであろうTPP批准論争を前に、国民が知るべき情報をまとめた一冊。

米国では金持ちでないと医療は受けられない

私の友達で酪農家の山下英俊氏が2015年に米国で、突然脳梗塞で倒れた。幸い、1日入院して薬の治療だけで元気に帰ってきた。

その2か月後、山下氏が米国の病院の治療費の請求書を持ってきたので見せていただいた。

驚いた。請求書には304万円と書かれてあった。

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米国では「救急車は呼ぶな」と言われる。呼ぶと20万円とられるためで、だから、米国人は滅多なことでは救急車を呼ばないと聞く。

歯の治療も高い飛行機代を払ってでも日本で治僚を受けた方がいいとよく耳にする。

現在では、米国はオバマケアになっているが、堤未果氏は『沈みゆく大国アメリカヘ逃げ切れ!日本の医療〉』の著書の中でオバマケアを厳しく批判している。

結局は保険収載の医薬品の価格について野放しにしたがために、保険料の値上げが生じ、米国民は相変わらず高い医療費に苦しんでいる。

高い医療費が払えなくて破産する人(医療破産)が、米国の破産事件の6割を占めていると言われている。

マイケル・ムーア監督の『シッコsicko』(2007年)という映画を見たことがあるだろうか。

米国では、救急車でERに運ばれても、加入している保険会社に連絡して保険会社の同意が得られなければ緊急手術もできない。

指を切断した患者が、医師から指1本で300万円2本繋ぐなら700万円かかると言われるシーン、入院費がなくなったお年寄りをタクシーで公園に連れて行って捨てるシーンなど、日本では考えられない場面が次々と出てくる。

私は当時、民主党の政権交代前でネクスト厚生労働大臣をしていたので、

これからの日本の医療が米国のように金持ちでないと受けられないような世界にしてはならないと考えて、民主党の全議員に呼びかけて憲政記念館で『シッコ』の上映会を開いた。

当時の小沢一郎代表、鳩山由紀夫元総理、菅直人議員などほとんどの議員に見ていただいた。

「確かに、米国などと比べても、日本の国民皆保険制度は素晴らしい」「世界に冠たるものだ」

「突然倒れて救急車を呼んでも分け隔てなく病院で治療してくれる。たとえお金がなくても」と良い反響があった。

私も2011年に腎臓の移植手術を受けて2週間入院したが、高額療養費制度の適用を受けて9万円で終わった。

しかし、この国民皆保険制度もTPP協定によって、徐々にではあるが確実に壊されていくことが明らかになってきた。

国民皆保険制度が危なくなる

政府はTPP協定でも国民皆保険制度は守れたから安心であると国民に説明している。本当だろうか。

確かに、TPP協定では第11章「金融サービス章」には「締約国が採用し又は維持する措置であり、公的年金計画又は社会保障制度に係る法律上の制度の一部を形成する活動やサービスには適用しない。

ただし、公的機関又は金融機関との競争を争うことを認める場合には当該活動又はサービスについて適用する」とある。

それだけを読む限りでは、政府が説明しているようにあたかもTPP協定では国民皆保険制度は守られたかに見える。

ところがその条文の「金融機関」が示すものとして、私達日本人には銀行しか馴染みが無いが、

原文では「FIANCIALSERVICES」となっていて、これは銀行、クレジットカード、保険、会計、証券取引、投資ファンドなどの業務を意味する。

保険会社といえば、日本生命とか三井住友海上火災とかいろいろあるが、外資系としてはがん保険を一手に手掛けているアフラックが有名である。

米国の弁護士に知人が多い事情通の苫米地英人氏に原文にあたって調べて頂いたが、苫米地氏も私と同様の見解だった。

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「これでは国民皆保険は守られたではなく、外資の巨大保険会社に40兆円の市場を明け渡したことになる。

いずれ国民健康保険は交通事故の自賠責保険のようになって、米国のように民間保険会社との競争になってしまう」と。どう考えても、政府は国民を蝙しているのではないか。

すでに、テレビのコマーシャルでも、日本生命もアフラックも「入院保険」ではなく「医療保険」としての宣伝を始めている。

仮に国民健康保険も、アフラックなどの外資の保険会社と競争できるようになったら、TPPにおける「公正、衡平」の原則、「内国民待遇」の規制によって、国民健康保険だけに国費を投入することはできなくなる。

そうなれば、5、6年後には現在の私達が負担している健康保険の保険料は米国並みになって現在の支払い額の2、3倍になっていくことになるのではないだろうか。

さらに重要な部分がTPP協定の本文ではなく、日米間での公的医療保険に関しての附属文書にあった。そこには次のように書かれてある。

〇 医薬品及び医療機器に関する透明性及び手続の公正な実施に関する附属書の適用に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の文書(概要)

附属書に規定する協議制度の枠組みの下では、両国政府は、附属書に関するあらゆる事項(関連する将来の保健制度を含む。)について協議する用意があることを確認

これを読めばわかるとおり、日本政府は今回のTPP協定で国民皆保険制度は守られたと言いながら、米国とは健康保険制度についても将来、民営化することを書面で約束したことになる。

その将来がいつになるか定かでないが、すでに混合診療、先端医療において民営化は始まっている。

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