電気自動車(EV)を、〝殺した〟のは誰だ? ――失われた30年の痛恨――

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船瀬俊介連載コラム

マスコミのタブー100連発〈93〉(月刊『ザ・フナイ』)

電気自動車(EV)を、〝殺した〟のは誰だ?

――失われた30年の痛恨――

地球環境評論家 船瀬 俊介

EV開発について――無知の悲劇、臆病の喜劇

私は、一貫して電気自動車(EV)開発を訴え続けてきた。

一連の著作でも、その必要性を熱く論じてきた。日本の言論人として、ただ一人、EV導入をアピールし続けてきた、と自負する。

EV関連の著作数でも私の右に出る者はいない。私は不思議でならない。日本経済を大きく飛躍させたはずの唯一無二のEV技術だ。

その開発の必要性について――

なぜ……メディアは沈黙を保つのか? 業界は躊躇したのか? 政界は口をつぐむのか? 世間はEVに無知なのか? 消費者は「EVを作れ!」と声をあげないのか?

結論からいえば――無知の悲劇、臆病の喜劇――なのである。

私が電気自動車(EV)の可能性に衝撃を受けた〝事件〟がある。

それが〝IZA〟の登場である。そのときの感動は忘れ難い(写真A)。

この〝IZA〟こそ、〝幻のEV〟として、知る人ぞ知る名車である。

開発したのは、たった一人の青年エンジニア。その名は清水浩(写真B)。

1947年生まれ。東北大学大学院卒(工学博士)。現・慶応大学教授だ。

彼こそは、〝電気自動車の父〟の称号が相応しい。彼こそは、天才だ。世界に誇る日本の頭脳である。

彼は、過去30年間で、なんと10台ものEVを開発し、路上走行が可能な実用車として世に問うたのである。

しかし〝ヒロシ・シミズ〟の名をメディアは、ほとんど黙殺して今日に至る。

なぜ、メディアは、学界は、天才を黙殺し続けたのか?

無知で、臆病だったから。ただ、それだけである。

航続548km!幻のEV〝IZA〟衝撃デビュー

〝IZA〟の衝撃を、まず私は『地球にやさしく生きる方法』(三一新書 1993年刊)で報告した(写真C)。

書き出しはこうだ。

「………最高速度176km/h、ワンチャージ548km、夢の電気自動車はすべてに、画期的技術を導入」

「世界最高性能の電気自動車、颯爽と登場――」

1991年、〝IZA〟実車モデルの走行テストは、つくば市にあった日本自動車研究所のテストコースで行われた。

車体は、まだ濃い灰色で、なんのマークも入っていない。ゆっくり走りだした流麗なボディからは、ほとんど音はしない。

耳を澄ますと、ウィーンという軽いモーター音が聞こえるだけだ。不気味なほど無音のまま、試走車は150……160kmと急速にスピードを増していく。

ものすごい加速力だ。こうして、計測機はみるまに最高速度176km/hを表示した。さらに、一充電の航続距離548kmも立証された。

いずれもEVとして、ケタはずれの世界最高記録であった。

テストコースのかたわらで、力強く握手を交わした二人の男がいた。 開発者の清水浩氏(44歳)と、製造メーカー、R&D社長の小野昌朗氏(45歳)。

この〝IZA〟の超高性能が、いかに驚異的かは現在のEVにくらべても、よくわかる。日本の市販EV、日産〝リーフ〟は最新モデルで、ようやく航続距離400 km を達成したばかりだ。

前モデルは200kmだった。走行距離を二倍と飛躍的に向上させた日産技術陣の功は多とすべきであろう。

しかし、それでも〝IZA〟が26年前に達成した548kmには遠く及ばない。

世界〝EVの父〟清水浩氏の功績を称える

清水氏は当時、国立環境研究所の一研究員だった。

その彼が、たった一人で〝IZA〟を構想し、計算し、設計図を描き、そして完成させたのだ。

私は、その〝IZA〟の誕生秘話を『近未来車EV戦略』(三一書房)にまとめた(写真D)。

その帯には、興奮と希望をこめて、こう記した。

「地球時代――。ガソリン車は、もはや〝過去の遺物〟。環境危機(エコ・クライシス)を救う切り札。いま21世紀に向け、近未来EVワールドが開く」

とにかく〝IZA〟は、なにから、なにまで革命的だった。

■航続距離548km:これを達成したバッテリーは、ニッケル・カドミウム電池だ。その容量は現代のリチウム・イオン電池の3分の1強。

それで、このレンジ(距離)は驚異的だ。「リチウム電池にすれば、一充電で約1200km、東京から岡山まで時速100kmで走りますね」と清水氏は平然と言った。

■最高速度176km:これも当時、世界最速。その達成には、さまざまな考案、工夫、発明がこめられていた。

■ダイレクト・ドライブ:〝IZA〟はモーターを車載していない。車輪に内蔵している。つまり、四つの車輪がモーターなのだ。

車軸を車体に固定することで、モーター(車輪)が高速回転する(写真E)。

このメリットは、従来の自動車に不可欠だった駆動部分(トランスミッション)が、一切不要となることだ。

(図F)は、部品が半減し、製造コスト・重量とも激減することを意味する。

■ホイール・イン・モーター:清水氏は、車輪にモーターを内蔵するという奇想天外なアイデアを、いとも簡単に実現化してしまった。

さらに、希土類とコバルトの合金で強力な永久磁石を製造し、超高性能モーターまで完成させた(図G)

■DC(直流)モーター:EVで懸念するのが電磁波被害だ。しかし〝IZA〟が採用したのは直流モーター。これで、電磁波発生を極限まで抑えた(図H)。

その加速力は、フェラーリなど既成のスポーツカーをもしのぐ。

■回生ブレーキ:ブレーキをかけると、その制動エネルギーでモーターが〝発電〟し、バッテリーに充電される。

■空気抵抗:〝IZA〟の空気抵抗係数(Cd)は0・19。これがいかに驚異的かは、旧来のガソリン自動車が0・45~0・5であることからもわかる。

ガソリン車はエンジン冷却用に空気取り入れ口(ラジエター・グリル)が必要だ。だから、完全な流線型デザインは不可能。

しかし、EVの〝IZA〟なら流麗なフォルムで、それが可能となった。

走行距離ガソリン車の3倍の驚異!

ここで、〝IZA〟の決定的な超高性能を記さねばならない。

〝IZA〟の車格は、トヨタ〝マークⅡ〟と同タイプだ。しかし、〝IZA〟はガソリン1リットルを発電に回して走行したと換算すると65km走る。

〝マークⅡ〟など普通車はせいぜい20kmだ。他方、〝IZA〟のリッター当たり走行距離は65km。ガソリン車の三倍強だ。

つまり、自動車輸送にかかる石油総量は約三分の一ですむ。つまり、三分の二の石油が、〝不要〟となるのだ!

さらに清水氏は素晴らしい事実を語ってくれた。

「日本の乗用車やトラックなど、すべてのガソリン車をEVに切り替えても、発電量を10%増やすだけでいいのです」(清水氏)

これは、発電所を現在より10%増設しなければならない、ということではない。

「夜間電力は余っています。だから、それをEV充電に回せば、発電所の増設は一基も必要ありません」(同)(図I)

あなたは、耳を疑い、眼を疑うだろう。それだけではない。

ホイール・イン・モーターのダイレクト・ドライブ(DD)方式にしたため、従来のガソリン車に不可欠だった駆動系(トランスミッション)が、スッポリ要らなくなった。

エンジンの回転は……クランク・シャフト→ギヤ→クラッチ→プロペラ・シャフト→ディファレンシャル・ギア→車輪……と、複雑な駆動システムを経て、ようやく車輪の回転運動となる。

その間に、エネルギーはロスし、さらに車体重量は増す。とうぜん、製造コストも増す。それが、DD方式のEVなら、すべて不要となる。

つまり、EVの部品数はガソリン車の約半分となる。それは、重さ、コスト、価格も半減する……ことを意味する。

むろん、替わりに電池が搭載されるが、その低価格化、軽量化で、さらにEVは身近なものになるだろう。

「〝IZA〟は性能が良すぎて作れません」(日産)

私は〝IZA〟の登場に興奮し、天才、清水氏との出会いに感激した。

〝IZA〟が普及すれば、日本は長年の不況から脱出することができる。

清水イズムのEVを大量生産すれば、不況克服どころか、雇用確保で人々は豊かになり、日本は世界に冠たるEV大国として、地球経済と技術の発展に貢献できる。

そう信じた私は、取材をかねて日本の各自動車メーカーにアタックした。

まず、日産。自動車部門の責任者の方に、私は熱く語りかけた。

「技術の日産が〝IZA〟を作れば、トヨタも追い越せますよ。世界トップのEVメーカーになれますよ!」

私の意気込みに対して、彼は、ためらいがちに口を開いた。

「……無理です。日産では〝IZA〟は作れません」

「エーッ!?どうしてですか?」

私は、思わず、大声を出していた。それに対する日産の答えは、耳を疑うものだった。

「〝IZA〟は……〝IZA〟は、余りにも……」

「余りにも、なんですか!」

「……性能が良すぎます」

私は、思わず、のけぞりそうになった。

「性能が、良すぎて作れない……!?」

こんな台詞は、初めて聞いた。呆れて天を仰いだ。日産を見限り、マツダを直撃した。

「マツダが〝IZA〟を作れば、世界のEVメーカーになれますよ」

「……いや、わが社一社では無理です。もはや、これは国策ですから……」

日本は、いつから社会主義国家になったんだ! と、怒鳴り返してやりたくなった。

ホンダの回答は、さらにひどかった。応対に出たのは女性の広報部長だった。

「〝IZA〟を作ってください」と、懇願すると……。

「〝IZA〟って、何ですか?」

広報部長で、このていたらく。私は、思わず説教していた。

「本田宗一郎さんが墓場の陰で泣いてますよ。彼が生きていたなら自転車フッ飛ばして、見に行ったでしょう。好奇心と行動力こそ、本田イズムでしょう」

これに対して、女性広報部長は「ハア……」とキョトン。

最悪は、トヨタであった。EV開発について取材を改めてFAXで申し込む。

わざわざ、名古屋本社から環境部長氏が上京して取材に応対してくれた。

隣には若い男性社員。ズバリ、トヨタの電気自動車の開発状況を尋ねる。

すると、部長氏は、隣に振り向き

「おい、どうなってるんだ?」

若い社員がパンフをひっくり返して「ああ、これですね」と示した写真に眼がテンになった。ブリキのおもちゃのような不格好な写真。

一充電当たりのレンジ(走行距離)を訊く。

すると、部長氏「レンジとは……? はぁ、走行距離ですか。おい、どうなってるんだ」。社員が資料を見つつ「60キロですね」に、アゼン。

「たった、60kmですか!?」

「ですから、30km先は行けんちゅうことですな。戻れんようになりますからナァ、ワッハハハ」(部長)。

私は、笑う気も失せて社員に尋ねた。

「バッテリーは何ですか?」

「……鉛ですね……」

私はついにブチ切れた。30年も時代遅れの鉛電池。つまり、トヨタは初めからEV開発する気はゼロ。ただ、アリバイ的に〝おもちゃ〟を作っているのだ。

「鉛ですかッ! 天下のトヨタが鉛とは。わかりました。もう、取材の意味もありません。失礼します!」と、決然と席を蹴って、東京支社を出た。

あとには、鳩に豆鉄砲の二人が残った……。

以上――が、日本のEVをめぐる顛末である。

ここで、読者のあなたも、「だれが電気自動車を殺したか?」、その犯人像が見えてきたはずである。

そう……地球を支配する〝闇の勢力〟ロックフェラー財閥である・・・

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ザ・フナイ 2017年12月号  マスコミのタブー100連発〈93〉 より

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船瀬俊介 (ふなせ しゅんすけ)地球環境問題評論家

著作 『買ってはいけない!』シリーズ200万部ベストセラー 九州大学理学部を経て、早稲田大学社会学科を卒業後、日本消費者連盟に参加。

『消費者レポート』 などの編集等を担当する。また日米学生会議の日本代表として訪米、米消費者連盟(CU)と交流。

独立後は、医、食、住、環境、消費者問題を中心に執筆、講演活動を展開。

船瀬俊介公式ホームページ= http://funase.net/

船瀬俊介公式facebook=  https://www.facebook.com/funaseshun

船瀬俊介が塾長をつとめる勉強会「船瀬塾」=  https://www.facebook.com/funase.juku

著書に「やってみました!1日1食」「抗がん剤で殺される」「三日食べなきゃ7割治る」「 ワクチンの罠」他、140冊以上。

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