●遺伝子組み換えの表示がなくなる
マレーシアで開催された第18回TPP交渉の会合で、米国は食品の表示について新たな提案を示した。
遺伝子組み換え食品については表示の義務付けをしてはならない。
さらに食品の安全基準についてコーデックス基準を参考にTPP交渉参加国ではすべて統一するというこのことは驚くにはあたらない。
すでに2年前に日本政府が提出した「TPP協定交渉の分野別状況」の中に、懸念する事項として遺伝子組み換え食品のことが記載されているからだ。
韓国では米国とのFTA締結によってすでに遺伝子組み換え食品の表示ができなくなってその為の法律の改正がなされているところだ。
遺伝子組み換え食品については、最近フランスのカーン大学のセラリーニ教授らがラットの実験で長い間食べ続けるとがんになることを証明している。
遺伝子組み換え食品は、食べ続けると人間でもがんになる蓋然性がかなり高いのだ。
これを単なる試験管での実験だけで、人間の健康に害がないとするのは、あまりにも乱暴な結論ではないだろうか。
これまでも過去に、FDA(アメリカ食品医薬品局)の中でも遺伝子組み換え食品について瞥告を発表した学者はことごとく、すぐに研究職を解かれるなど迫害を受けてきたという。
このようなことから、今でもEUは遺伝子組み換え種子の作物は作らせないし、輸入もさせていない。
ただ家畜の餌としての輸入は認めている0.5%以上、況入されているものには必ず表示義務が課されている。
ほとんどの国では、遺伝子組み換え食品については、消費者に選択できるように表示義務が課されている。
日本でも表示義務が課されているが、5%以上の混入にのみ課せられてきたので、コンビニ、スーパーに並んでいる食品のほとんどは、遺伝子組み換えトウモロコシからの合成甘味料、異性化糖が使われていても、表示もされていない。
日本では食用油の大半が遺伝子組み換えの大豆から搾られていて、その粕から味噌、醤油が作られている。
国産丸大豆使用の表示があれば安心である。
私は国会でそのことを何回か追求したが、なぜかいまだに表示されていない。実は日本人が世界で一番遺伝子組み換え食品を摂取しているのではないかとも言われている。
古いデータになるが、豆腐、油揚げ類について「遺伝子組み換え食品ではありません」との表示されたものを調査してみたところ、そのうちの82%が虚偽の表示であった。
私はかつてBSE(狂牛病)問題で米国に何度か行ったが、その時に遺伝子組み換え食品について気になっていたので、米国の政府高官に質問したことがある。
「なぜ米国はトウモロコシと大豆は遺伝子組み換え種子で栽培しているのに、小麦では遺伝子組み換えにしないのか」
「それははっきりしている。トウモロコシ、大豆は家畜が食べるものだから遺伝子組み換え種子を使うが、小麦は人間が食べるものだから遺伝子組み換えにはしない」
「日本では大豆もトウモロコシも大事な食物なのだが・・・・・」ところが今度は変わっていた。
2012年1月に「TPPを慎重に考える会」が訪米した時、米国小麦協会のアラン・トレーシー会長にお会いして同じ質問をした。
「これからは小麦も遺伝子組み換え種子で始めます」とはっきり答えた。
いよいよ、米国の政府は多国籍企業の圧力に屈してしまったのだ。国民の健康よりも、新自由主義による市場の利益拡大を優先させてしまった。
米国民にもこれからの子供たちのことを考えて、遺伝子組み換え食品の表示くらいはしてほしいと考えている人々は多い。
2012年には米国のカリフォルニア州において、遺伝子組み換え食品については表示を義務付ける法律案の住民投票が行われた。
残念ながら結果は、賛成47%、反対53%で否決されてしまった。
どんなに市民運動に取り組んで頑張ってみても、米国の政治そのものが多国籍企業の金で動かされるようになってしまった。
それを決定的にしたのが、2O10年1月に米国の最高裁判所で出された「企業による選挙の広告費を制限することは言論の自由に反する」とする違憲判決である。
最高裁では裁判官5対4のきわどい採決であったが、最高裁判所の裁判官も米国では国民投票で決められる。
多国籍企業はこのために周到な準備をしたと言われている。
日本では公職選挙法によって、企業からの政治献金は、政党、政治家に対して上限が定められている。
米国もそうであったのが、事実上これで米国は政治家にも青天井で政治献金できるようになってしまった。
私も国会の選挙を何回も経験してきたので、選挙には金がかかきるようになて、米国での議員の選挙運動を見たことがあっることを身に染みて感じてきた。
若い頃訪米したが、日本と変わらなかった。
米国では海外からの多国籍企業、サウジアラビアなどの大富豪も名前を出さずに政治家に献金できるようになってしまった。
これで、残念ながら政治家も金で動かせるようになってしまった。
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