おなかの中から始める子育て―胎内記憶からわかるこれだけのこと 池川明 (著)

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おなかの中から始める子育て―胎内記憶からわかるこれだけのこと

子育てに常識はない

現代のお母さんは、特有の悩みを抱えています。かつては地域の人たちとの交流が盛んで、誰もが知らず知らずのうちに赤ちゃんを産んだばかりの人や小さな子供を育てている人と接し、実地で学んでいました。

どこかで近所や親戚の赤ちゃんのお世話をしたことがあれば、いざ自分に赤ちゃんが生まれたとき、あまり戸惑わずに育てられます。

ところが、現代のお母さんたちは経験がないため、抱っこの仕方すら教わらなくてはできないのです。

そんなお母さんたちが頼りにするのが育児書ですが、マニュアルがびったり当てはまる人が二割、まあまあ当てはまる人が六割、当てはまらない人が二割くらいなものです。

これを二割の法則または2,6,2の法則と私は勝手に呼んでいますが、自然現象は比較的多く当てはまります。

けれど、多くのお母さんは100パーセント当てはまると思い込んでいるので、育児書どおりにいかないと自分を責めてしまいます。

そして不安でたまらないので、赤ちゃんが熱を出すと、きげんや顔色がよくても大急ぎで病院に駆けつけたりします。

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そんなお母さんには「病気じゃなくても熱が出ることもありますよ。前日興奮することがあったのではありませんか」と言うと納得し、そのとたん赤ちゃんの熱もすっと下がったりします。

小さな子供や赤ちゃんは、お母さんの不安を鏡のように映し出します。

お母さんが不安な顔をしていると子供も具合が悪くなり、どんと構えているとよくなってしまうことも多いのです。

自信がないお母さんのなかには、神経質なまでに清潔にこだわる方もいます。

たとえば、ほとんどのお母さんはおっぱいをあげるとき乳首をアルコール綿で消毒していますが、昔のお母さんはそういうことはしませんでした。

おっぱいにはもともと乳腺からの分泌物があって、ある程度きれいになっていますし、日常生活の中でいつも乳首についている善玉菌なら、むしろ早く取り込んで免疫をつけてしまうほうがいい場合もあります。

そもそもアルコール綿の効果は不確実ですし、その成分が赤ちゃんの口に入るほうが問題ではないでしょうか。

菌を排除して人工的な環境を整えるより、赤ちゃんの生きる力を引き出すことに、もっと注目したほうがいいように思います。

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新生児室では、お母さんは手を消毒薬で洗いマスクをして赤ちゃんを抱っこしますが、赤ちゃんのころの記憶があるお子んたちから聞くと、赤ちゃんは顔が見えないことを非常に怖がっているようです。

大切なのは、お母さん自身が自然の営みに敏感になり、何が必要で何が不必要か、見分ける感覚を磨いていくことだと思います。

また、身近に相談できる人を見つけることも必要です。それにお母さんが赤ちゃんとの絆を深めて自信をつければ、わからないことは赤ちゃんに聞いてみることだってできるのです。

赤ちゃんに聞いてみる

赤ちゃんの知能レベルは私たちが想像するよりはるかに高く、お母さんに子育ての方法を教えてくれます。

赤ちゃんにずっと意識を向けつづけ、目や表情や泣き方に注意していると、赤ちゃんが何を考え、何を望んでいるかがわかるようになります。

赤ちゃんは抱っこが大好きなので、思いっきり抱っこしてあげましょう。

体だけでなく心も丸ごと抱っこしてあげると、赤ちゃんは全身でコミュニケーションをとろうとしてくれます。

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アフリカのウガンダでは、お母さんが赤ちゃんを二十四時間抱っこしつづけることによって、生後二日で首がすわり、生後六週から八週ではいはいを始めたという調査があります。

また、お母さんも赤ちゃんの心を理解できるので、生後七日でうんちををしたいのかおしっこをしたいのかがわかり、赤ちゃんを包む布はほとんど汚さずにすむといいます。

日本でも、生まれてすぐからトイレトレーニングを始めて、おむつが一日一枚ですむお母さんもいるそうです。

赤ちゃんとコミュニケーションがとれているとおしっこやうんちをしたいときがわかるので、おむつを汚す前におまるに連れていけばいいのです。

おむつは汚れてから替えるものと思われていますが、その常識こそ間違っているのかもしれません。

赤ちゃんはどんなに訴えてもおむつを替えてもらえなかったので、そのうちあきらめて教えてくれなかっただけかもしれないのです。

赤ちゃんと絆を深める方法

おなかの赤ちゃんに話しかけなかったお母さん、難産だったお母さん、赤ちゃんが生まれたときにふれあえなかったお母さんでも、赤ちゃんとの絆を強める方法はいろいろあります。

ベビーマッサージは、お母さんと赤ちゃんが密着する機会を人工的につくり出し、親子のつながりを感じられるプログラムとしてすぐれています。

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実は、皮膚感覚は八週の胎児からあって、人間が最初に獲得する感覚だと考えられています。

生まれたばかりの赤ちゃんの肌は、「第二の脳」と呼ばれるくらい過敏です。肌のすぐ下には神経線維が張りめぐらされ、温かい、冷たい、触られているなどの刺激を脳に伝えています。

犬や猫は、子供を産むと親が全身をよくなめて刺激しますが、人間にとってもふれあいは体に刺激を与えて免疫力を高めるだけでなく、心の安定をもたらすという意味でとても大切です。

お母さんにとってもふわふわした赤ちゃんをなでるのは気持ちがよく、親子のつながりを肌で感じて愛情がわいてきます。

小さく生まれて保育器に人っている赤ちゃんでも、看護師さんが一日十五分ふれてあげたらミルクの飲みがよくなり、ぐんと成長したという報告もあります。

また、ベビーマッサージではお母さんがオイルをつけた手で裸の赤ちゃんの全身をなでてあげるのですが、オイルを使うと汗をかくというのもマッサージの利点です。

肌には汗腺があり、便や尿と同じように、汗と一緒に体にたまった毒素を排泄してくれます。

特におっぱいはお母さんの脂肪からつくられており、脂肪にはダイオキシン、PCB(ポリ塩化ビフェニール)、重金属、化合物などがたくさんとけ込んでいます。

そこで、特におっぱいを飲んでいる赤ちゃんにとっては、マッサージをして汗を出すことがとても役に立ちます。

湿疹がよく出る赤ちゃんも、マッサージをすることできれいになるのです。

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