ウイルスと人間

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磯貝昌寛の正食医学【第102回】ウイルスと人間

ウイルスは生命の進化に不可避的な一部

信頼する学者の一人に福岡伸一さんがいます。生物学者である福岡さんの命に対する洞察は深く、東洋の叡智である無双原理( 易)にも通じ、興味深いのです。

その福岡さんが4月3日の朝日新聞に「ウイルスは生命の進化に不可避的な一部」と題する記事を寄稿していました。非常に重要な内容だったので、要約して紹介したいと思います。

ウイルスは自己複製だけしている利己的な存在ではなく、むしろ利他的な存在であるといいます。

ウイルスは自らの内部の遺伝物質を私たちの細胞内に注入するというのですが、それはウイルスが一方的に私たちに襲い掛かってくるのではなく、私たちが極めて積極的にウイルスを招き入れているというのです。

これはどういうことかというと、ウイルスの起源をみるとよくわかるといいます。

ウイルスは高等生物が登場した後に現れたというのです。それも、高等生物の遺伝子の一部が外部に飛び出したものがウイルスであると。

つまり、ウイルスはもともと私たちのものだったのです。

それが家出をし、再びどこからか流れてきた家出人を、宿主である私たちは優しく迎え入れているのです。

なぜそのようなことをするのかというと、ウイルスこそが進化を加速してくれるからだというのです。

親から子に遺伝する情報は垂直方向にしか伝わりません。しかし、ウイルスのような存在があれば、情報は水平方向に、場合によっては種を越えて、立体的にさえ伝達しうる。

子育てに置き換えて考えたらよく分かります。親だけの価値観を植え付けていたのでは親のコピー人間にしかなりませんが、多様な人たちに関わることによって、個性豊かな人物になっていくのと同じかもしれません。

ウイルスという存在が進化のプロセスで温存されたといいます。私たちに全く気付かれず私たちの内部に潜り込むウイルスは数多く存在しているようです。

現に、新型コロナウイルスが出現する前と今の世界の死亡率は変化していないのです。

ウイルスの活動は、時に私たちに病気をもたらし、死をもたらすこともあります。

しかし、ウイルスからもたらされる遺伝情報がなければ、私たち人間はこれほどまでに多様な生き方ができなかったのです。

今の私たちの存在は、ウイルスなしには成り立たなかったのです。

時にウイルスが病気や死をもたらすことですら利他的な行為といえるかもしれないのです。

病気は免疫システムのバランスを揺らしますが、同時にそれは新しい調和を求めることに役立つのです。

環境の変化に対応するのが病気であり、それを担っているのがウイルスなのです。

ウイルスは私たち生命の不可避的な一部であるがゆえに、それを根絶たり撲滅したりすることはできません。私たちはこれまでも、これからもウイルスを受け入れ、共に調和的に生きていくしかないのです。

感染症と動物食

テレビ、新聞、インターネットなど、情報という情報から新型コロナウイルスの地球規模での感染が広がっているようです。

今のところ実体感なき感染というのが一般市民の率直な感想ではないでしょうか。ヨーロッパに何人か知人がいるので現地の様子を聞いてみたのですが、みんな揃って「自分たちの周りでは感染者はいない」と言っていました。

感染が広がってきているとはいえ、4月11日現在、日本での感染者数は7593人(人口約1億2000万に対して0・006%)、世界では約180万人(人口約70憶に対して0・0025%)です。

身近に新型コロナウイルスに罹患した人を見かけることはまずないというのが確率論から言ってもうなずけます。

とはいえ病院に多くの患者が押しかけたら、世間で言われるような医療崩壊が起こってもおかしくはないでしょう。

新型コロナウイルスの問題の底辺にあるのが私たちの生き方ではないかと思います。身体の症状が出たら何でも病院に行くという姿勢では病気は治るべくもないのです。

病は本質的には自分で治す以外にはないのです。自らの治癒力を免疫力とも自然治癒力ともいいますが、この力を信じて高める以外に、病は治らないのです。

むしろ、病は身体を良くしようという働きで現れていますから、病という体の働きを邪魔しないことが何より大切なのです。

感染症が蔓延した歴史は枚挙にいとまがありません。天然痘は仏教伝来とともに大陸から日本に入ってきたとされ、奈良時代には平城京で大流行したといわれています。

コロンブスの新大陸発見以降も様々な伝染病が旧大陸から持ち込まれ、先住民が壊滅的被害を受けたとも伝えられています。

中世ヨーロッパがペストの流行で壊滅的状況に陥ったのも、主要国の都市同士で人の往来が活発化したところにアジアから菌が持ち込まれ、一気に広がったそうです。

今回の新型コロナウイルスの広がりも世界の交流が活発になり、世界がひとつになりつつある状況下で引き起こされています。

私たちは国や都市、そして私たち一人ひとりが、様々な形でつながる開放系の社会の中で生きています。

近年の歴史も開放系社会の構築そのものが歴史になっています。ウイルスを専門とする多くの学者は「感染症との戦いは開放系社会の宿命」と言っています。

人と人の交流は気の交流であり、それが濃密になれば血液の交流になりさえします。

開放系社会に暮らす私たちは、開放しても差し支えない、周りの人に振りまいても問題のない、そんな気を振りまかなくてはなりません。

食養的に考えると気は血から生まれています。力(ちから)は「血から」といわれています。

病原ウイルスが繁殖するような血液を持っていたら、開放系社会では社会全体の問題にまで広がってしまうことを新型コロナウイルスが教えてくれているのではないでしょうか。

世界はひとつになりつつあります。

先に紹介したように、ウイルスは生命の進化を促すものです。世界がより良く一つになるためにウイルスは働いているのではないかと思うのです。

病原ウイルスが繁殖するような血液は、身土不二という自然を無視した食生活から造られる血液ではないかと私は考えています。

今回の新型コロナウイルスの感染が拡大している地域をみると肉食が多いのです。陰陽( 無双原理)で見れば、陽性な人間と陽性な動物は結ばれないのです。

生物学的には人間は動物ですから、植物に比べたら陽性です。

その陽性な動物である人間が陽性な動物を食すことにはどうしても無理があるのです。感染症は動物食からの警告と言ってもいいでしょう。

月刊マクロビオティック 2020年6月号より

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磯貝 昌寛(いそがい まさひろ)

1976年群馬県生まれ。

15歳で桜沢如一「永遠の少年」「宇宙の秩序」を読み、陰陽の物差しで生きることを決意。大学在学中から大森英桜の助手を務め、石田英湾に師事。

食養相談と食養講義に活躍。

マクロビオティック和道」主宰、「穀菜食の店こくさいや」代表。