札幌の自然食品店「まほろば」主人 宮下周平 連載コラム
序
2月28日、世界保健機関(WHO)は、新型コロナウイルスによる肺炎(COVID19)を、地域別危険性評価「非常に高い」に引き上げ、世界的流行(パンデミック)を懸念し、3月2日さらに「未知の領域」に突入したと発表しました。
中国武漢に端を発し、韓国、イラン、イタリアなど大規模感染が確認され、日本も高い拡散率で世界的注目を浴びるほどの現況です。
2020東京五輪(オリンピック)開催も危ぶまれ、終息に見通しが立たない危機感・焦燥感に、警戒声明が政府および都道府県、各市町村自治体にて相次いで出されております。
殊に、当地北海道において「緊急非常事態宣言」が発令され、他府県に比べて拡大一途(いっと)の状況下にあります。
まほろばに於いては、お客様や従業員(スタッフ)より一人感染者が出れば、店は休業に追い込まれ、安全な食を提供すべき自然食品店の役割を果たせなくなります。このような非常時こそ、本来の使命を全うすべきと考えます。
これよりも、従業員一同、店内より発症者を出さぬべく、緊張感を持って日々懸命に業務を務めて参りたいと存じます。
急遽、2月25日から、『号外!新型コロナウイルス対策予防について「感染したと思ったら!」』を店頭配布し、健康維持と安全確保を啓蒙させて頂いております。
どうぞ、この困難をお客様と共に手を携えて乗り越えられますよう、互いに励ましの声を掛け合いながら、終息に向けて邁進したい所存でございます。
一、ウイルスを友に
黴菌(ばいきん)は、自分で複製合成できる。だが、ウイルスは細胞膜や小器官を持たない非生物。
他の生物に寄生して宿主からエネルギーを貰って増殖する。つまり、自立していない借り物なのだ。
そんなウイルスが、人の中で「悪さ」しないで宿泊する。肺の中には、何と174種ほどもあるという。
芭蕉の『おくのほそ道』冒頭、「月日は百代(はくたい)の過客(かかく)にして、行(ゆき)かふ年も又旅人也(なり)」のように、ウイルスは、いわば幻の世を生きる漂泊者のようである。
実は、この世は宿主で、全ての生きとし生けるものは、生から生へと渡り歩く旅人なのだ。
だが、漂泊者もウイルスも、宿主に何の害も及ばさない。
ウイルスが人に有害なのは、人が代謝できる以上のエネルギーが与えられた時である。
健康な人は、余剰エネルギーを摂取するも、ウイルスが食せば、代謝出来る範囲でバランスが保たれる。
ウイルスが、飢えて死滅しない程度、多い時は食してもらえる程度、そして増殖しない程度に、 緩衝材になってくれているのだ。
言ってみれば、ウイルスも人もまた、別物でなく、正常な生理の中で共生関係にある。
死も生も超え、敵・味方さえ越え、「あなたは、私」なのだ。
そう思えば、そして、我が身を律すれば、それだけで、ウイルスは自ずと鎮まる。
それが、自然の機序(メカニズム)、天理なのだ。
二、パンデミックの真因
感染症が、世界中で汎(ひろ)く大流行するPandemic(パンデミック)。
14世紀、欧州(ヨーロッパ)人口の1/3が死した黒死病(ペスト)。
16世紀、米国(アメリカ)大陸の先住民を1/10まで激減させた天然痘。
1918年、全世界で死者1億人にも上ったというスペイン風邪(インフルエンザ)。
続くHIV(エイズ)、SARS(サーズ)、MERS(マーズ)、エボラ、鳥インフルなど流行脅威が後を絶たない。
これらの原因は、戦争と侵略と輸送、インフラの拡大、経済のグローバル化にあった。新型コロナウイルスも、ご多聞に漏れない。
ウイルスが原因なのか、人が原因なのか。明らかである。
その根本原因を絶たぬ限り、人類が滅びるまでパンデミックの恐怖は消えない。
人を陥れる墓穴が、やがて自分を埋める墓穴、生物災害(バイオハザード)であったことに気付く。
三、世界経済崩壊へ
「風が吹けば桶屋が儲かる」
一切の物事は、網の目のように連なり、思わぬところに結果する。
今、100nm(ナノメートル)(1nm=1mmの100万分の1)の一ウイルスが、世界恐慌(パニック)の引き金となり、株価暴落、金融危機、景気後退、経済崩壊は必至だ。
身近なところで、中小零細企業の共倒れ、ドミノ倒しが始まった。
中でも、外食産業や観光業界の落ち込みは激しく、見るも聞くも堪え難い。
これら取りも直さず、グローバル経済が、今日身近にまで浸透してしまった証なのだ。
今、「小國寡民」が問われている。
……民をして死を重じんて遠く徙(うつ)らざらしめば、舟輿(しうよ)有りと雖(いえど)も、之に乗る所無く、甲兵有りと雖も、之を陳(つら)ぬる所無し……。
【訳:國民たちに命の大切さを考えさせ、遠くへ移り住みたいと思わせないなら、車と小舟があっても、乗っていくことなく、鎧と武器があっても、並べ(て戦争す)ることがない。】
隣の邑(むら)や街、國の彼方此方(あちこち)を旅する気持ちさえ起らないほど、今のここの生活に満足している。
「吾唯(ただ)足るを知る」
叶う限り狭い地域社会で、自給自足の日常で生を送り、死を迎える。
老子は、これが平和の原理、これで充分過ぎると説いている。
消費増産の拡大指向は、現代社会を席巻している。
「増えよ、拡げよ」の掛け声で、詰まる所、人はどれほど豊かになり、どれだけ幸せになったというのか。
それが、蟻の一穴(いっけつ)で堤が決壊するように、ウイルス一株が、世界を逆襲し、崩壊させようとしている。
その訳は、自然の理に反するからだ。それを防ぐには、逆道を行く。
「汝、ウイルスの如く小さくあれ」と。
四、巨大因陀羅網(マクロネットワーク)のイノチたち
目に見えぬ小さきイノチを侮るなかれ。
彼らは、天空に、地中に、海洋に、草花に、生物に棲息(す)まい、家々とする。
実は、張り巡らされた因陀羅網(ネットワーク)の巨大(マクロ)なイノチの塊なのだ。
世界を駆け巡るインターネットの電氣回路も比としない。
一瞬にして地球の裏側まで行くイノチの連携連鎖で、易々とパンデミックは起こせるのだ。
人が右往左往する姿を尻目に見ながら、悠々と往(ゆ)き来する。
力と力のぶつかり合い。 知能と知能の潰し合い。 戦略と戦略の騙し合い。
そろそろ、そんな金銭勝負(マネーゲーム)、戦争勝負(ワーゲーム)を終わりにしないか。
ウイルス騒動から、この囁(ささや)きが、聴こえないだろうか。
極微(ナノ)世界のイノチに、億兆倍もの人間がいとも簡単に倒される。
とても敵う相手ではなかったのだ。
ワクチンを作れども作れども、自在に変異し、進化し、姿を変えて、擦(す)り抜ける。
理由(わけ)なくして彼らは現れない。これは、行き過ぎた人類への伝言(メッセージ)、警告だったのだ。
小さきイノチの大きな僕(しもべ)となり、微生物の声々に耳を傾けるも、これを恥としない。それが、これからの我らが誇るべき生き改め、悔(食)い改めでもあるのだ。
五、愛の共通無意識
9・11も3・11も、その恐怖は地域外の人にとって、どれほど同情し共感するも、やはり隔靴掻痒(ひとごと)なのだ。
あの広島長崎の原爆とて、その恐怖と悲惨さは、当事者の骨髄からの血の涙にはなり得ないだろう。
だが、この度は何時(いつ)何処(どこ)で誰(だれ)が、感染罹患するかもしれない脅威が、日々刻々迫る。
それは、地球の裏側でも表でも。川を渉(わた)らずとも、海を隔て岳(やま)に遮られても、その恐怖は変わらない。
思わぬ因、思わぬ所、思わぬ人が、発症している。
これほどに、人類が共通意識を持つ時はあり得ないだろう。
この集結した強烈な意識が、良きにつけ悪しきにつけ、世界を震撼させ、激変させる。
さて、これから、どう転ぶだろうか。
1989年の東西ドイツの壁瓦解を、1991年のソ連崩壊を、当時誰が想像し得ただろう。
広い意識の連帯は、大きな革命の歴史を塗り替える。
だが、もしこれが恐怖でなくて、希望だったら、夢だったら、どうだろうか。
一人ひとりが、ウイルスの如き一片(ひとひら)の小さな思いでも、もし重なり合ったなら、寄り添い合ったなら、何が生まれよう、何が変わるだろう。
それが一厘(いちりん)の人への愛、一分(いちぶ)の世の思い遣りであったなら……。
人口の1%が、共通意識で繋がると、世界は根底から変容するとの報告もある。
きっと瞬時にして、世界は美しい蓮華蔵の花々で満たされるに違いない。
AIが、技術的特異点(シンギュラリティ)で、人を超えるのではない。
愛(AI)が、シンギュラリティとなって、人をリードする主役となるのだ。
これは、決して夢物語ではない。
集合無意識、みんなの力である。
そして、その愛こそ、最強の自己免疫力となる。
六、危機即好機
武漢のウイルス漏洩が、2か月ほどを境に、中国本土への蔓延(スプレッド)、そして世界へ感染爆発(アウトブレイク)していった。
人類25万年の歴史で、2000年以降、急速に人工知能AI技術が高度化して、あと四半世紀で、人間は頂点の座を奪われようとしている。
これら感染増加や技術革命のなだらかな曲線も、忽然として急上昇し、手の付けられない次元変換の事態を招く。
指数関数的計算は、人の予測に反し、驚愕の数字を弾き出す。
これが、シンギュラリティとパンデミックの恐ろしさなのだ。
2020年の幕開け。
突如として、この第一波が襲って来た。そして、第二の波、第三の波も、間もなく来襲するであろう。
これよりも、4000億匹の巨大バッタが、作物を求めて東アフリカから印度を越え、中国青海(チベット)・新疆(ウイグル)・雲南(ウンナン)に向かっているという。
人生一変する事態が、何時でも、誰でも、何処にでも起こり得る。
その刹那、どう進むか。
項垂(うなだ)れて怯むか、首(こうべ)を天に向けて昇るか。
人生の分かれ目は、その一瞬の判断にある。
肺炎ウイルス罹患にも、そこにさえ神の恩寵(おんちょう)がある。
古今未曽有の、今の難局こそ、人生を再生させ、世界を更生する絶好の好機(チャンス)なのだ。
2点間の最短距離は、最長の曲線である。
これまでの人生の回り道、世界の迂回も、無駄ではない。
その答えは、明瞭である。
自然に帰ること。
「原点回帰」
この課題に真剣に取り組み、これからを生きてみませんか。共に生きて、幸せになってみませんか。
闇から、必ず日は昇る。
正に、太陽(コロナ)である。
世界は、夜明け前だった!!!
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宮下周平
1950年、北海道恵庭市生まれ。札幌南高校卒業後、各地に師を訪ね、求道遍歴を続ける。1983年、札幌に自然食品の店「まほろば」を創業。
自然食品店「まほろば」WEBサイト:http://www.mahoroba-jp.net/
無農薬野菜を栽培する自然農園を持ち、セラミック工房を設け、オーガニックカフェとパンエ房も併設。
世界の権威を驚愕させた浄水器「エリクサー」を開発し、その水から世界初の微生物由来の新凝乳酵素を発見。
産学官共同研究により国際特許を取得する。0-1テストを使って多方面にわたる独自の商品開発を続ける。
現在、余市郡仁木町に居を移し、営農に励む毎日。