アレルギーの9割は腸で治る!  藤田 紘一郎 (著)

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アレルギーの9割は腸で治る! (だいわ文庫)

腸内細菌を活性化することでアレルギーを治し、免疫力を高める方法

花粉症、アトピー、ぜんそく等など……現在、日本人は、3分の1がなんらかのアレルギー疾患を患っていると言われています。なぜ、こんなに増えてしまったのでしょうか?

花粉症は突然始まった

日本で初めてスギ花粉症の症例が認められたのは、今から約50年前、1963年のことでした。私の先輩である、東京医科歯科大学の斉藤洋三博士が発見しました。栃木県日光市に住む成年男性でした。

原因はもちろんスギ花粉ですが、日光のスギ並木は花粉症が発生したその年に植えられたものではありません。

7世己前半に、全長37cm、約2万4千本のスギが植えられたそうです。つまりスギ花粉は昔から飛んでいたのです。 しかし、昔の人はそのスギ花粉を吸っても、スギ花粉症にはならなかったわけです。

ということは、昔の人にはスギ花粉を異物として排除する機能が、体内に備わっていたのだと推測できます。

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スギ花粉症は第一号患者が出た初年から毎年のように増えていきました。

初年代半ばといえば、ちょうど結核や寄生虫の感染者が減り、清潔志向が高まっていく頃です。

それと同時にその他の花粉症やアトピー、ぜんそくなどのアレルギー性疾患も猛威を振るい始めたのです。

西ドイツと東ドイツのアレルギー発症率は大きく違う

近年になってアレルギーが急増したのは、日本人だけではありません。

ドイツ人、正確に言えば旧西ドイツ人がそうです。しかし、同じドイツ国民でも旧東ドイツ人の聞ではアレルギーがまったく増えていません。

ドイツのすべての医科大学でアレルギーの患者さんたちを調べたところ、旧西ドイツ人のほうが旧東ドイツ人より334倍も多かったそうです。たとえば、9~11歳の子どもたち7800名を対象とする花粉症の調査では、旧西ドイツ児童の8・6%、旧東ドイツ児童の2・6%に花粉症が認められました。

約3・3倍の人数に当たります。

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ベルリンの壁によって東西の、ドイツがわかれていた頃、旧西ドイツでは、工業の発達と共に、大気汚染、などの公害への対策や住環境、食品添加物や農薬などに対する法的基準の整備も行われていました。

そして、清潔志向が人々の聞に浸透し、私たちの周りにいて免疫力を高めてくれている細菌類を一方的に追い出した「キレイ社会」になっていたのです。

このような「キレイ社会」が免疫力低下を導き、花粉症ばかりでなく、ぜんそくやアトピー性皮膚炎などのアレルギー性疾患を生みだしたのです。

なぜ、急速にアレルギーが増えたのか?

私たち人間の体は、1万年前とまったく変わっていません。体を構成する細胞は同じだし、体に備わっている免疫システムも同じです。

これは、1996年から、医学者や生物学者、遺伝学者、生態学者などが一堂に会して議論を重ねてきた「人類の家畜化現象を考える研究会」で出した結論です。

では、なぜ、 1万年前と同じ細胞を持つ人聞に急にアレルギーが増えてしまったのでしょうか。

その大きな原因として、人間が文明の名の下に、より快適でよりキレイな環境をつくってしまったことがあげられます。

1万年前、人類は裸・裸足でジャングルや草原を走り回っていました。

自然とともに、体をめいっぱい動かして、元気に生きていたのです。しかし、38億年という生物の歴史から見れば「ほんのまばたきをする一瞬」に過ぎない1万年の間に、人類の生活環境は一変しました。

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とりわけ、ここ50~60年の変化は凄まじいものがあります。山奥の土地に住まない限り、現代人は極端な話、清潔でキレイな小屋にこもり、ファストフードやコンビニ食などの便利で安い餌で飼い慣らされた家畜のようになってしまったのです。

アレルギーの発症だけではなく、生きる力そのものが弱ってきたと言えるかもしれません。しかし、この流れは今後も続くでしょう。

人聞は文明を発展さぜることがいいと思っている、珍しい生き物だからです。

問題は、体のほうが急激な変化についていけないことです。自然と切り離されて、身の回りにあったはずの菌を退治したキレイすぎる社会に、体はそう簡単に馴染むことができないのです。

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