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全身の細胞と神経に「気=エネルギー」が行き渡り巡り巡っている状態が本当の健康

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磯貝昌寛の正食医学【第87回】健康の本当の意味

健康とは何か

武豊さんは、日本競馬界の第一人者。競馬ファンならずとも多くの方が知っている人ではないでしょうか。

「調子のよい時は馬の足と自分の足が同じになったような感覚になります。馬が走っているのだけれど、自分が走っているような感覚です。また、馬が石ころを踏めば、自分が踏んだような感覚にもなります。」

もう10年も前ですが、武豊騎手の言葉です。

人馬一体とはこういうことを云うのではないかと思います。

武豊さん自身の神経が研ぎ澄まされて、馬と一体となっている様子がよくわかります。

さらにもう一人、元体操選手の冨田洋之さんは、日本男子体操界のエースとして活躍し、2004年アテネ五輪で男子団体金メダル、2005年の世界選手権では総合優勝を飾り、2008年に現役を引退した世界的な大選手です。

その冨田選手も武豊騎手と同じようなことを言っていました。

「手先、足先まで全身の細胞と神経が自分の中で一体となって演技する。演技をする自分を俯瞰的にみている自分もいる。調子のよい時はそういう感覚になる。」

二人の言葉から推察すると、二人の心身の状態は全身全霊という言葉がまさにピッタリです。

健康とはまさにこういう状態をも指しているのではないでしょうか。

病気が現れない状態が健康ということでなく全身の細胞と神経に「気=エネルギー」が行き渡り、巡り巡っている状態が本当の健康です。マクロビオティックでいう健康とは、武騎手が人馬一体を感じる以上に、全身の細胞と神経が真に研ぎ澄まされると「自他一体」が体感できるのです。

神経が研ぎ澄まされ、流れに滞りがなくなり、エネルギーが発せられると神経は自らの体を超えて四方八方へと巡り巡っていきます。

その極点が「自他一体」の感覚です。自分と他人は一体であるという感覚であり、悟りです。

自分とは、自然=宇宙=無限=神から分かちいただいたという意味で「自分」といいます。

「自分」の「自」は大自然であり、大宇宙を示しているのです。

ヒトは本来、自他一体を自然に感じられるのです。目の前で人が倒れていたら、誰だって救いの手が伸びるのが自然です。

それが自他一体です。ところが、最近では目の前で人が倒れていても何の手も出さない人がいるようです。

これは自分が大自然から生まれ生かされているということを忘れてしまっているのではないでしょうか。マクロビオティックは自他一体を感じる術を誰にでも簡単に教えています。

その土地で採れる穀物を中心に野菜、海藻、伝統的な製法で作られる調味料、たったこれだけを陰陽の理論に則って作り、食べる。

それも必要最小限の食物を調理していただく。本物が体に入り、身になってくると、少量の食事で心身ともに満足するものです。

こういった状態が現れてくるまではそれなりの年月と月日がかかりますが、それでもあきらめずにコツコツ続けていくと必ず健康と幸福が訪れます。

禅語に「至道無難と唯嫌揀擇」という言葉があります。「えり好みせずにコツコツを着実に進んで行けば、道を極めることは難しいことではない」という意味です。

健康と幸福も、またそういうことではないかと思います。

平成から次の時代へ

平成も残すところ2ヵ月。いよいよ今年は新しい時代への仕切り直しの時となりそうです。

平成の30年は様々なことがありました。大きな変化の一つが情報革命だったと思います。

インターネットの普及で多くの人がもの凄い量の情報を瞬時に得ることが可能になりました。

「念ずれば通ず」と云われますが、現代は「スマホれば通ず」といった方がいいかもしれません。

しかし、スマホで本当に通じているかというと、感情を伝えることはなかなか至難な所もあり、いくらスマホ時代といっても、人と人が心底通じ合うというのはいつの世でもそう簡単なことではないようです。

それより何より、情報革命は私たちの脳に情報洪水を引き起こしました。

私などは誰よりも自分の脳のキャパ( 許容量)が少ないのをわかっていますから、過剰な情報は入れないことに徹しています。

本当に心身が欲するところの情報をしっかり頭と体に刻み込むことの方がいかに有益かは、多くの先人が伝えるところであり、私自身も身につまされて納得するところです。

脳はこの情報洪水を真面目にもせっせと処理しようと頑張りますから、その結果として脳疲労を引き起こしてしまうのです。

一時的な脳疲労であれば、寝て起きれば疲労が取れるのですが、慢性的な脳疲労になると、まずは食が乱れます。

どんな食べ物であっても、食べることそのものが一時的に脳の疲労が取れたような錯覚を起こさせます。

脳疲労時の多くの場合、白砂糖や人工甘味料、人工的な添加物にさらされた食品を摂ることが一般的です。

さらに、そのような食品はゆっくりよく噛んで食べるものはなく、サッと口を通って胃と腸に入るものばかりですから、結果、飽食となって脳疲労から腸疲労へと転移していくのです。

さらにさらに、睡眠薬や精神薬などのクスリに頼るようになると、脳疲労を改善するのではなく、疲れをなかったことにしてしまいます。

疲労がとれぬまま、食と生活を変えずに、今までの脳疲労と腸疲労を勃発させた生き方を続けていきますから、体の細胞は悲鳴を上げます。これが細胞疲労です。

現代人は細胞から疲れています。まずは脳疲労と腸疲労を改善することです。

その「はじめ」に断食があることは、このコラムを継続して読んでいてくれている人には文中よりわかっていることです。

筋肉が疲労したならば休ませれば回復するように、腸が疲労したならば、断食をすれば腸は回復してくるのです。

腸と脳は一蓮托生です。腸の疲労が取れると不思議と脳の疲労が取れてきます。

そして、脳を休ませれば腸の疲労回復は早まりますから、情報を断つことは疲労回復に相乗効果があります。

断食中は胃腸だけでなく頭を休めることがとても重要です。平成は多くの人々の疲労が蓄積した30年でした。

日本人の多くが背伸びをしてきたのが平成でした。次の世も、多くの人々の想い描く時代が到来します。

私たちにとって必要な道が用意されています。さあ、それはどんな時代か? もう間もなくその扉が開きます。

月刊マクロビオティック 2019年3月号より

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磯貝 昌寛(いそがい まさひろ)

1976年群馬県生まれ。

15歳で桜沢如一「永遠の少年」「宇宙の秩序」を読み、陰陽の物差しで生きることを決意。大学在学中から大森英桜の助手を務め、石田英湾に師事。

食養相談と食養講義に活躍。

マクロビオティック和道」主宰、「穀菜食の店こくさいや」代表。