なるだけ医者に頼らず生きるために私が実践している100の習慣  五木 寛之 (著)

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なるだけ医者に頼らず生きるために私が実践している100の習慣 (中経の文庫)

無数の病を抱えつつ、50年病院にいかない作家が常識にとらわれず徹底的に研究しつくした健康に楽しく齢を重ねる「エンジョイ・エイジング」の秘訣を図解とイラストで大公開!

養生は、治療とは異なります。

治療という考えかたには、人間は本来、調和のとれた理想的な体をもって生まれてきたという感覚があります。

異常が生じたら故障を直すかのように治療を行い、治療が終われば再びもとどおりに動き出す、といった考えです。

燃料さえ補給してやれば快調に動くのが当たり前、といった感覚です。

人間というのは、生まれた日からこわれていく、それが老いというものである、というのが私の考えです。

そこを少しでもよいコンディションをたもち、故障しないように工夫するのが養生です。

養生の第一歩は、体が発する信号(「身体語」)を的確に受けとめることです。

頭は洗わない「清潔すぎ」は病気である

一部の人のあいだですっかり有名になってしまいましたが、私はなるだけ髪を洗わないようにしています。

これは、若いころからそうでした。

新人作家のころは年に二回ほど、年をとるとともに春夏秋冬の四回洗うようになりました。

最近は加齢臭などといういやな言葉が出てきたせいもあり、二ヶ月に一回くらいの割合で洗髪しています。

回数は増えたとはいえ、洗髪はほどほどにしたほうがよいと、いまでも思っています。

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コマーシャルなどでは毛根にたまった皮脂を目の敵にしていますが、はたしてそうでしょうか。

皮脂には皮脂の働きがあるように思うのです。

毛髪をケアする若い世代に髪が薄い人が多いのは、洗いすぎ、ケアしすぎで皮脂がなくなっているからではないでしょうか。

私が髪を洗わなくなったのは、若いころに海外を歩き回ったときの見聞によります。

その当時のインドや東南アジア諸国には、髪を洗わない人がたくさんいました。

モンゴルの遊牧民、また、チベットやネパールの山岳民にも、髪を洗わない人が大勢いたのです。

彼らの毛髪はじつにたくましいもので、禿頭の人はほとんど見られません。

そのような経験、直感にもとづいて、髪を洗いすぎるのはよくないと思っているのです。

一週間に一回でも多すぎるくらいです。

「清潔」という言葉には、何かしら不自然な感じがつきまといます。

人間は本来、バイ菌と共生して暮らしているのです。

皮膚には何十種類もの常在菌がすんでいますし、体内にも無数の微生物が暮らしていて、それらと同居しながら、人は生きてきたのです。

「健康診断はうけない」という選択

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サラリーマンなら年に一度は、うける健康診断、いわゆる定期健診を、私はうけたことがありません。

なぜなら、私の体の奥から「行かなくてよい」「行かないほうがいい」という「身体語」が聞こえてくるからです。

どんな元気な人にでも、成人病は出てきます。

ガンをはじめとして、早期発見こそ治療の王道、そのためにも健康診断はうけたほうがいいとされています。

しかし、私の考えでは、病気は治りません。治めるだけです。

「病気が完治した」などといいますが、それはマヤカシです。

早期発見できたガンの手術に成功したら、体はもとに復するのか、といえばそうではありません。

体にメスを入れたという経歴は、決して体の歴史から消すことはできないのです。

ということは、早期発見よりも、むしろ、手をつけられないほど症状が進み、末期発見されることこそ望ましいのではないでしょうか。

末期発見というのは、体が急に衰え、自分にも変調がはっきりわかり、病院に行かなければ苦痛が治まらない状態で診察をうけることです。

検査をうけずに生きるということは、手遅れを覚悟して生きるということなのです。

そうなったときは、あきらめるしかない。

それは、命を粗末に扱うということでは決してありません。

命を大切にしたいからこそ、できる限り、切ったり、薬を使ったりしない。

自分の天寿を受け入れて世を去る、ということを認めるための、代償を払う決心がつくかつかないか、なのです。

あらゆる養生訓は、すべて他人の養生法である。ほかの三人に効果があっても、自分に合わないと感じれば迷わず捨てる。世界にただ一人の自分には、必ずしも役に立たない。それを参考にして、自分だけの養生法を工夫しよう。

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