アメリカ食は早死にする―ハンバーガー・フライドチキンはおやめなさい 船瀬 俊介 (著)

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アメリカ食は早死にする―ハンバーガー・フライドチキンはおやめなさい

バーガー中毒 毒を「食わされている」アメリカ人

「バーガーは毒だ!」意見広告

アメリカ人は一人当たり年間約二○○個もハンバーガーを食べている、という。そのアメリカで一九九○年4月にショッキングな新聞全面広告が話題になった。

そこには「The POISONING AMERICA!」(毒を盛られるアメリカ!)の大見出し。

この意見広告はニューヨーク・タイムズ、ワシントンポストなど全米主要一五紙朝刊に一斉掲載されてアメリカ人の度肝を抜いた。

そこには、なんとマクドナルドのビッグマックとフレンチフライのイラスト入り。つまり、これらハンバーガーとフレンチフライは“毒”と、新聞広告で断罪したのだから、おだやかではない。

つまり世界最大のハンバーガー・チェーン、マクドナルド社は“毒を売っている”と決めつけ、真っ向から批判しているのだ。

この勇気ある意見広告を打ったのは全米心臓病救助協会(NHSA)という市民団体。広告料だけで五○万ドル(当時、約七九○○万円)。

広告には、これらファストフードが“毒”である理由も解説。

「ビッグマックとフレンチフライを食べると、心臓によくないアブラ(飽和脂肪酸)を二五グラムもとることになる」。それはハンバーガーに使われる牛肉に占める脂肪はニ―・五%もあり、さらにフレンチフライも質の悪い牛脂をつかって揚げているから、という。

動物脂肪が心臓病、脳卒中、大腸ガンなどの元凶であることは常識だ。「ハンバーガーなどは“毒”だ!」と堂々と広告を出した市民団体の勇気には脱帽だ。

毎年二八万人が太り過ぎで死ぬ

肥満は今や、喫煙に続きアメリカ人の死亡原因の第二位になっている。

毎年約二八万人のアメリカ人が、太り過ぎが直接原因で死亡している(疾病管理センター推計。)

そうして「肥満に関する健康管理コストは年間二四○○億ドル(約二四兆円!)にたっする。加えてアメリカ人はさまざまな減量計画やダイエット商品に三三○億ドル(約三兆三〇○○億円)も使っている」(『ファストフードが世界を食いつくす』E・シュローサー著、草思社)。

一方でハンバーガーを貪り、他方でダイエットに狂う。もはや、グロテスクな喜劇でしかない。

そして「太り過ぎの人は、早死にの危険性が非常に高い。極度に太り過ぎの人は、標準体重の人に比べ四倍も多く早死にしている。並の肥満でも二倍リスクがある」(米国ガン協会、一九九九年)。

アメリカでは人間だけでなく、食品もどんどんジャンボ化している。

「一九六○年、マックのフライドボテトは二○○キロカロリー。その後、九0年代末には五四○キロカロリーに、現在では六一○キロカロリーになっている。しかも、メニュー商品はすべてジャンボサイズになった」

「かつて五九○キロカロリーだったマック商品が、いまでは一五五○キロカロリー。九九年までファスフードに支払われた一一○○億ドルのうち、じつに六六○億ドルをマックで一か月に二○回以上、食事をするヘビーユーザーが支払っている」(『デブの帝国』前出)

ひたすら食べ太ってテブ大国に

アメリカ人は、まちがいなく世界でもっとも不健康な国民である。その元凶こそがアメリカ型食生活の高カロリー、高たんぱく、高脂肪、高精白、高砂糖の”五高食“にある。

つまり肉食過多で加工食品だらけ。ハンバーガーなどファストフード漬け。

一九七○年代後半からの「肥満体」(BMI二五以上)急増と、調味料、キャンディ、スナック、菓子パン類の新製品数は見事に比例している(図1ー⑤)。

また、外食が二0%弱から九五年には約三五%まで増加。ファストフードも約五倍に急増している(図1ー⑥)。

さらに一九六○年フレンチフライの一人当たり消費量○・九キロが八四年には六キロに、コーラなどソフトドリンク消費量も六三年から八四年で三倍以上に激増。

また過去七五年間で脂肪摂取量は三一%、砂糖消費量は四0%も増えている。

これでは“デブの帝国”にならないほうが不思議だ。

ファストフードが人類を滅ぼす

「一世代前のアメリカでは、食費の四分の三が家庭での手作り料理にあてられていた。しかし、今日では食費の半分は外食店にーーそれも、主としてファストフード店に支払われている」

「一九六八年、マクドナルド社の店舗数は約一○○○だった。現在(二○○○年)、世界中に約二万八○○○店があり、毎年、新たに約二○○○店が開店している」

「九二年には、北京のマクドナルド第一号店に入るために、数千人が何時間も辛抱強く待った、という」

「中国の子どもたちが今いちばん好きな飲み物はコカコーラで、いちばん好きな食べ物がある店がマクドナルドだ」(『ファストフードが世界を食いつくす』前出)

アメリカ文明の象徴であるファストフードは、核兵器より先に人類を滅ぼしかねない。

「七○年代後半にアメリカで始まった肥満という流行病は、現在、ファストフードをひとつの媒体として、世界じゅうに蔓延しつつある」

「中国では、過体重のティーンエイジャーの割合が、ここ一0年間で約三倍に増えた」とシュローサーは警告する。

伝統食を捨て去る日本人の愚かさ

さらに、以下の彼の警句は傾聴に値する。

「日本では、人々はハンバーガーとフライドポテトを食べて金髪にはならず、ただ太ってきた。かつて日本には太り過ぎの人はほとんどいなかった。この国の米、魚、野菜、大豆製品などの伝統的な食べ物は、世界でも有数の健康的な食習慣とされてきた。それなのに、日本人はこの食習慣をさっさと捨て去ろうとしている」

日本人に耳の痛い忠告は続く。

「第二次世界対戦後、アメリカ軍による占領以来、日本では赤肉の消費量が増加した。そして、一九七一年のマクドナルドの上陸が、日本の食習慣をさらに大きく変化させた。

八○年代、日本におけるファストフードの売り上げは二倍以上に増加し、子どもの肥満率もすぐに倍増した。

今日、日本の三○代男性——この国でハッピーセットとビッグマックに育てられた最初の世代——の三分の一は、太り過ぎだ」

「心臓病、糖尿病、結腸ガン、乳ガンといった主な『ぜいたく病』は、繊維不足で動物性脂肪の多い食生活に関係があるとされている。アメリカには昔からあった、これらの病気が、ファストフード世代が年をとるにつれ、日本でも広がりそうだ」

その予測は見事に的中している。これより一○年前の研究でも、アメリカに移住した日本人の中年男性は、欧米食のため心臓病リスク二倍、脳卒中リスクは三倍に増加している。

「食は命なり」の教えに学べ

そもそも伝統和食には先人の「食の哲学」がこめられていた。

水野南北(一七六○~一八三○)は「食は命なり」「食は運命なり」と説いている。

さらに「少食の人は福相になって長生きする。晩年は恵まれる」「少食の人は難病、苦病がなく、長患いもしない」と少食を称えている。

さらに「粗食の人は、財をなし、長寿で晩年は楽になる」「過食の人は、心労絶えず、晩年は惨めとなる」「美食の人は財産を使い果たし、成功も出世もしない」と過食。美食を戒めている。

さらに「大食、飽食の人は人相は良くても、運勢は一定しない。財産があっても無くなる」とは、まさに現在のアメリカを批判しているようだ。

また『養生訓』で知られる貝原益軒(一六三○~一七―四)は「養生の極意は、体に良くないものを遠ざけること」と説いている。

「節度のある飲食が基本」「食事は物足りない位が良い」さらに「御飯をしっかり食べて肉は控えよ」「大食い、大酒飲みは、必ず短命に終わる」。

まさに、現代アメリカ人に聞かせてあげたい。

また「子を育てるのに三分の飢えと寒さを与えよ!」は、目からウロコといってよい至言だ。

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