血圧を下げるのに降圧剤はいらない:薬を使わない薬剤師が教える  宇多川久美子 (著)

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血圧を下げるのに降圧剤はいらない: 薬を使わない薬剤師が教える

飲まない人の2倍の脳梗塞リスクがあり、認知症の原因にもなると言われる降圧剤の真実と、薬に頼らず自分で血圧を下げる方法を伝授!


第1章 高血圧だけ注目されるのはおかしい

欧米のガイドラインと高血圧マフィアの台頭

日本に色濃く影響を与えている欧米のガイドラインの変遷について少し見てみましょう。

欧米の高血圧の基準は、WHO(世界保健機関)のガイドラインと、米国政府JNC(米国高血圧合同委員会)のガイドラインに則っています。

WHOから最初のガイドラインが出た1959年当時は、「年齢とともに血圧が高くなるのは当たり前」として正常血圧を140/90未満、異常血圧を160/95以上としており、基本的には脳や網膜、心臓、腎臓の異常を調べて治療を行い異常がない時は「正常な変化」として薬物治療は行っていませんでした。

そして、1962年のWH0のガイドライン改訂から1999年までの37年間、「60歳を過ぎて血圧が上がるのは、太い血管の柔軟性低下が原因で正常な変化である」としていました。

降圧剤治療が必要な場合でも、脳梗塞や腎機能低下といった副作用を危惧し、生活習慣の改善と併用して一時的な使用を推奨していたのです。

また、腎性高血圧や糖尿病性腎症の場合でも、病気自体を治療するといった科学的根拠にもとづいたガイドラインだったのです。

ところが、この後、1993年の米国ガイドラインと1999年にWHOが改訂したガイドラインでは、基準値が大きく引き下げられ、世界中から厳しい批判を受けることになります。その背景には製薬会社等からの圧力もかかったようです。

当時、製薬会社が多くの降圧剤を開発して、その売り上げを伸ばす戦略として、ガイドラインに力も持つ臨床学会や医師への利益供与により、「薬を売るために病気を作る」ビジネスモデルが出来上がっていたのです。

このような集団は「高血圧マフィア」と呼ばれました。

とはいえ2004年にEUで不正な治験を罰する条例が出されたのを受け、アメリカでも、2010年医療保険改革法の中に、「製薬会社や医療機器メーカーから医師に対して利益供与を行った場合の報告義務や罰金」に関する取り決めをしたサンシャイン条項が盛り込まれました。

サンシャイン条項とは、米国の医療保険改革法の一部として作られた法律条項で、法的な強制力をもっています。

もし、報告の漏れや意図的な隠ぺいがあれば、最大年間115万ドルの罰金が科せられる可能性があります。

その結果、2014年の米国ガイドライン(JNC8)では、60歳以上を150/90未満とし、ここで「年齢+90」という、以前の基準値に戻されたのです。

30~59歳の人については、140/90未満としています。

ところが、2017年、米国心臓病学会(ACC)と米国心臓協会(AHA)は、SPRINTと呼ばれる大規模臨床試験の結果を反映し、正常血圧の範囲を、従来の140/90未満から、120/80未満とし、アメリカ全土に激震が走りました。

具体的には、120/80未満を「正常血圧」、120ー129/80未満を「血圧上昇」、130ー139/80ー89を「ステージ1高血圧」、140/90以上を「ステージ2高血圧」と分類することが定義されたのです。

これによりアメリカでは、120/80未満を正常血圧の基準とし、130/80以上で高血圧症と定義されることになりました。

2014年人間ドック学会の研究

アメリカのガイドラインが「年齢+90」の基準値に戻った2014年、日本では4月に日本人間ドック学会と健康保険組合連合会がその共同研究事業で新たな検査値の基準範囲を作成し発表しました。

日本でも一大ムーブメントが起こったのです。

その内容は、人間ドックを受診した150万人の健診データを統計的に分析したところ、正常基準範囲の上限を147/94として、95%の人が健康だったという事実でした。

これは、ものすごいエビデンスで、血圧はこの上限までなら問題ない、という「新健診基準」を打ち出したのです。

ところが、日本高血圧学会や、日本動脈硬化学会、日本医師会の大反対を受けて、あっという間に立ち消えてしまいました。

その批判内容は新健診基準が、「超健康人」を対象にしたもので、追跡調査もされていないので信頼性に欠けるため、高血圧症の判定基準にはならない、というものでした。

そうした反発を受けて、日本人間ドック学会は、「あくまで正常の人の基準値であり、日本高血圧学会の基準値は病気を判定する基準なので、全く別のものである」「ーつの指標として考えてください」というような消極的な発言に変わってしまったのです。

この基準が採用されれば、高血圧患者数は3分の1以下に減ってしまい、そうなると、病院に来る患者さんの数や薬の売り上げが激減してしまうことになります。

人間ドック学会のガイドラインが、年齢、男女別など、細分化しているのに対して高血圧学会のガイドラインは、年齢、男女関係なしに、一律同じ基準になっており、説得力に欠けています。

また、2008年に発表された、東海大学医学部名誉教授の大櫛陽一先生らが福島県郡山市で約4万1千人を対象にした研究によると、どの年代でも、総死亡率は収縮期血圧160まで一定で、上昇するのは、180以上という結果が出ています。

そこで、血圧が160/100までは薬物治療の必要はないとしています。

さらに同研究では、高血圧治療は脳梗塞になるリスクを上げていると発表されています。

つまり、脳梗塞のリスクを上げているのは、高血圧そのものではなく、高血圧治療だったというわけです。


安易に処方される降圧剤一生飲み続けますか?血圧が高めと言われたらまず読んでください!