それでも薬剤師は薬を飲まない–食事が変わると、健康になる (廣済堂健康人新書)
ベストセラー『薬剤師は薬を飲まない』の待望の続編。
前著では、薬の弊害と運動が2大テーマだったが、今回は、薬の弊害と食事にまつわる話を、薬を使わない薬剤師の著者がお伝えしていく。
●“ハッピーウォーク”と「感食」のススメ
●朝ごはんは食べるべき?
●添加物は女性の身体にたまりやすい
●「ベジタブルファースト」と「セカンドミール」が合言葉
●冷ごはんを食べられるとやせられる
●「スキスキエクササイズ」で免疫力をアップ
●「三角食べ」と「口内調味」ができる日本人
2章 なぜ胃腸を休めなくてはいけないのか より
朝ごはんは食べるべき?
「朝食を食べないと脳にエネルギーが回らないから、集中して仕事や勉強ができない」
「朝食をとらないと、寝ている間に下がった体温が上がらず精力的に活動できない」
こうした理由から、1日のスタートとして朝食をとることが推奨されています。
確かに、生活のリズムを整え、丈夫な身体を作るという意味から、成長過程にある子どもたちが朝食をしっかりとることは大切だと思います。
けれど、身体がすでにできあがっている大人にとって、果たして朝食は必要なのでしょうか?
ちまたで朝食の大切さが叫ばれているのは、朝食をとらない人が多いということの現れとも言えます。
朝ごはんを食べない人が多いという事実があるからこそ、それに歯止めをかけようと、朝食の重要性を説いているわけです。
ではなぜ、それほどまでに朝食をとらない人が多いのでしょう?
私も朝食をとる習慣がありませんが、それは単純に食べたくないから。
食欲がないのは身体が食べものを要求していないということであり、欲していないものを無理して食べる必要はないと考えるからです。
時間的な理由などから「食べたいけれどどうしても食べられない」という人もいることでしょう。
けれど朝食をとらない人の大半は、私と同じように単純に「お腹がすかないから食べない」のではないでしょうか。
そもそも、たとえば朝ごはんがパンにジャム、マーガリンだけでは、糖質、脂質のみで、ミネラル、ビタミンなどは全然足りていません。
私が学んだ健康法の一つに、「ナチュラルハイジーン」というものがあります。
ナチュラルハイジーンは、1830年代に薬や手術を主流とする西洋医学に疑問を抱くアメリカの医師などによって体系づけられた健康理論で、20世紀になり世界中に広く知られるようになったものです。
わかりやすく言うと、「新鮮な空気や水」「ふさわしい食事」「十分な睡眠や休養」「適度な運動」「日光」「ストレスマネージメント」などで、健康を保とうというものです。
ナチュラルハイジーンでは、1日の身体のサイクルを8時間ごとに3つに分け、午前4時から正午までを排泄のサイクル、正午から午後8時までを摂取と消化のサイクル、午8時から午前4時までを吸収と代謝のサイクルとしています。
この理論に従うなら、いわゆる朝食をとる時間は排泄の時間帯にあたります。
排泄の時間帯だから、身体が食べることを拒否していると考えることもできます。
実際に身体が一生懸命排泄をしようとしているのだとしたら、食べものを無理して取り入れることは、排泄というメインの仕事に加えて、消化という仕事をも強いることになります。
もしも私たちが、メインの仕事に加えて負担の重い仕事を課され同時にこなさなければならないとしたら、体力が消耗し疲れ果ててしまいますよね。
同じように、余分な仕事を強制的に任されてしまったら胃腸もまた過労状態になり、腸内環境が乱れてしまいます。
とはいえ、「朝からお腹がすいてたまらない!」「朝食を食べないと身体が動かず調子が出ない」と感じている方であれば、身体の欲求に応じて食べたほうがいいでしょう。
体質は人によってそれぞれですし、健康によいとされることも身体によってそれぞれ違うはず。
同じ身体であっても、デスクワーク中心の生活を送っている場合と、身体を精力的に動かす生活を送っている場合とでは、身体によいことも微妙に変わってくるはずです。
当然、この健康法がいい、この健康法はよくないということはいちがいに言うことはできませんし、そうしたことを言うつもりも一切ありません。
肝心なのは、自分の身体の声にしっかり耳を傾けることです。
そのときどきの流行りの健康法に振り回されるのではなく、身体の声を聞き取ることによって、朝食を必要としているのであれば朝食を食べ、朝食を欲していないのであれば食べなければいいのです。
食べることは本能的な行為であり、そもそも頭で良し悪しを考えて判断するものではなかったはずです。
自分の身体のことは自分がいちばんよく感じることができるのですから、情報に流されるのではなく、自分の身体にとってよいやり方で、自分の身体にとってよいものを食べるようにしていくのが何よりの健康法と言えるでしょう。
■風邪をひいたとき、あなたは食べますか?
風邪をひいたときや体調をくずしたときなど、ほとんどの人は「元気になるよう栄養のあるものを食べなくては」と思われるのではないでしょうか。
おいしいものを食べればモチベーションがあがるのと同じように、スタミナのあるものを食べれば免疫力がきっと活発に働いてくれるはず。
そんな期待があるからこそ、「食欲はないけど、無理して食べよう」と思うのでしょう。
確かにおいしいものを食べてモチベーションが上がり、仕事や勉強がはかどることはあります。
けれど、免疫力の場合は事情が違います。
食べものは私たちのエネルギーの源ですが、食べものをエネルギーに変えるには消化吸収という作業が欠かせません。
また胃腸は365日24時間黙々と働いてくれるので私たち自身も気にとめていませんが、消化吸収というのは身体にとって非常にエネルギーを使う作業なのです。
食べたら食べた分だけ、消化吸収にエネルギーが費やされます。
すると、免疫力や回復力にはエネルギーが十分に回らなくなってしまうのです。
体調が悪くて食欲がないときは、食事をせずに寝ているのがいちばんです。食欲がないのに無理やり食べたら、胃腸には大きな負担がのしかかり、免疫力の活動が妨げられてしまうのです。
もちろん1週間も10日も食べないというのでは身体が衰弱してしまいますが、水分補給をしっかりしているのであれば、1~2日くらい食事をとらなくても心配はいりません。
身体が回復して食欲が出てきたときに、少しずつおかゆなどを食べればよいのです。
ちなみに野生の動物は、ケガをしたり病気になったとき、ただひたすら横たわっています。
動かないことで身体を休め、体内のエネルギーを総動員させて、回復することに集中しているのです。
文明生活を営んでいる人間と野生の動物をいっしょにするなとおとがめを受けそうですが、いくら文明生活を送っていようが、人間も自然の一部であり、動物の一種です。
見た目は違っていても、身体のメカニズムにそれほど大きな違いはないのです。
「食べないと身体に悪い」「食事をとらないのは毒」とよく言われるのは、私たちの中に「お腹がすく」イコール「生命力が低下する」というイメージがあるからでしょう。
けれど野生の動物たちが活動するのは、お腹がすいたときです。
備蓄していないから食べたくても食べられないと言えばそれまでですが、彼らはお腹がすいてから狩りに出かけるのです。
活動するために、エネルギー源として食事をとるということは決してありません。
つまり野生の動物にとっては、空腹→活動→食事→消化吸収→空腹というサイクルが自然なのです。
空腹でも活動できるようになっていて、活動した後に食事をとるのです。
そして、計生の動物は、自分が食べるべき適正量を本能的に知っています。
私たち現代人のように、お腹は満たされているのに目の前においしいものがあるからつい食べてしまうといったことは決してしません。
もちろん、朝食を必ず食べるわけでもありませんし、お腹がすいてもいないのに、時間が来たからといって1日3食生真面目に食べることもしません。
狩猟・採集をしていた頃の人間は、おそらく野生動物と同じようにしていたはずです。
薬は病気を治せないと考えて、10年前に薬剤師の白衣を脱いだ著者。それからは、世の中の人の健康のためにウォーキングレッスンと栄養指導をするようになった。
そのおかげで、体調がよくなり、薬を手放すことができた人々がいる一方、どうしても効果が出ない人もいた。それはなぜ?と著者が行き着いた先は“食事”だった。健康になるための食べ方を訴える。
それでも薬剤師は薬を飲まない–食事が変わると、健康になる (廣済堂健康人新書) | ||||
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