バーニー・サンダース自伝 バーニー・サンダース (著)

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バーニー・サンダース自伝

アメリカ大統領選挙で快進撃!全米の若者が熱狂する「社会主義者」とは何者か?

ヒラリー・クリントンを相手に、まさかの大接戦!働く人々、貧しい人々、弱い立場の人々に味方して、驚異的な支持を集めるサンダース。

民主主義にこだわりつづける「社会主義者」のユニークな闘いを記した自伝。

真面目すぎる、と言われることがあるのだが、それを私は褒め言葉だと思っている。

私はいつも、政治とは、国と、理想と、そしてゲームの駒にされている余裕などない人々の運命に関わる、真剣な努力であると考えてきた。

こんな考えを持っているために私は、現代アメリカ政治の中で、はぐれ者になっているのだろう。

けれども、高額寄付者を求めてジェット機で飛びまわり、コーク兄弟が資金援助するサミットからシェルドン・アデルソンの「予備選挙」へと走りまわる候補者より、

私のほうが政治に対して真面目だとしても、私はアメリカ国民よりも自分のほうが真面目だとは思わない〔コーク兄弟とシェルドン・アデルソンは、いずれもアメリカの大富豪〕。

アメリカ国民が望んでいる選挙戦は、候補者がさまざまな問題にどう立ち向かうかについてのものなのだ。

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資金集めやら票読みやら、誠実な討論をないがしろにするネガティブ・キャンペーンやらを望んでいるのではない。

選挙は、草の根運動や思いがけない連帯に影響されるべきであり、個人崇拝や億万長者の小切手帳に影響されてはならないのだ。

私がシカゴ大学で公民権運動を組織する学生として、またヴェトナム反戦の平和活動家として、さらには労働運動や市民運動の支援者として政治に関わりはじめた頃は、選挙政治のくだらなさにイライラしたものだった。

メディアも政党も、有権者に対して、哲学や、ましてや理想主義にもとづいてではなく、候補者が明るい笑顔をしているかとか、他の候補者を痛快にこき下ろすかどうかとか、

そんなことにもとづいて重大な決定を下すよう、促しているように私には思えた。

そんな魂のない政治世界の一部になりたいとは、私は決して思わなかった。

そして現在、理想や当選を求めて選挙活動をしてきた年月を眺めてみれば、そんなふうにはならずに、私はよくやってきたと思う。

この本の初版は、もともと『アメリカ下院のはぐれ者』〔Outsider in the House〕という題で、二〇年前、私がヴァーモント州から下院議員に選出された後に書いたものだった。

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その時はまだ、大統領選挙に出るなんて思ってもみなかった。

この本は、私たちが、いかにして自立した進歩的政治を一つの市に打ち立て、次いで一つの州で生み出したかを語ったものだ。

それは、ヴァーモント州で最も大きな市バーリントンで市長の座を勝ち取り、続いて、州からの連邦議会議席を勝ち取った、反乱の物語だ。

より重要なことに、この本は、権力とあまり縁のない人々の生活をより良くするために、これらの勝利から得られた権限をどう使ったかの物語だ。

この本の本当の主人公は、ヴァーモントの働く人々だ。

彼らは経済的・社会的公正のための闘いに、粘り強く取り組みつづけた。メディアや政治エリートから、そろそろあきらめるだろうと見なされてから、もうずいぶん経った。

彼らは、単にやりつづけただけではない。

他の多くの地域で選挙の投票率が下がっていった時に、友人や隣人を引き込んで投票率を上昇させたのだ。

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私はいつも言うのだが、バーリントンでの私たちのいちばん偉大な成果は、一九八一年の市長選挙での最初の勝利にあるのではない。

それも気持ちいい勝利だったけれど、いちばん偉大な成果は、それに続くいくつもの選挙戦での勝利だった。

そこでは投票率、とりわけ低所得者や若者の投票率が上昇したことにより、経済的・政治的エリートが寄ってたかって私たちを阻止しようとするのを打ち破ることができた。

私たちは、対立候補をカネで打ち負かしたのではない。票で打ち負かしたのだ。まさに、民主主義における投票の本来の役割どおりに。

最近この『アメリカ下院のはぐれ者』を読みなおして、あらためて気づかされたのは、これがどんなに苦しい格闘の物語であるかということだ。

これは、簡単で安定した成功物語ではない。

つらい骨折りをしたり、正しい方向にちょっと進んだと思ったら押し戻されたり、選挙に負けたり勝ったり、誰も可能だと思っていなかった打開策が実現したり――そんな物語なのだ。

苦闘の政治は、価値観とヴィジョン、そして何より信頼に根差している。

そこには、候補者と、その価値観を共有しヴィジョンを受け入れる人々との、約束が含まれているのだ。

それは、「私に投票してくれ、何でも解決してあげるから」というものではない。

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「私が選ばれたら、あなたのために働くだけでなく、あなたと共に働くつもりだ」というものだ。

その「働く」というのは、地域レベルでの計画の実施かもしれないし、連邦レベルでの法案の提出かもしれないが、いちばん大事なことは、人々と、その選んだ代表とが、つながりを持つことなのだ。

権力の広間の外側にいる市民のために、その内側で闘おうとする人がいる、ということを示すつながりだ。

闘いが進んでいると悟れば、市民は活気づく。より大きな要求が出てくる。

より強力な運動が組織される。

彼らは、単に選挙に勝つこと以上の政治をつくりだす。市を、州を、国を、いや世界をもたぶん変えてしまう政治をつくりだすものなのだ。

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私たちは、世界の歴史上、最も富裕な国に住んでいる。だが、その事実にあまり意味はない。

その富のほとんど全部が、ほんのひと握りの個人によって支配されているからだ。

トップ0.1パーセントの人々が、下から90パーセントの人々とほぼ同じだけの富を持っている。

増えた所得の99パーセントが、トップ1パーセントのものになってしまう。

何かが根本的に間違っているのだ。下から一億三千万人のアメリカ人よりも多くの富を持っている一家族があるというのは、どこかに根本的な間違いがあるのだ。

こうした反道徳的で持続不可能な経済は、本来のアメリカではない。

これは変えなければならない。私たちは、みんなでこれを変えるだろう。

バーニー・サンダース自伝
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