アメリカからポストハーベスト農薬による有毒小麦の押しつけ 

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船瀬俊介連載コラム

小麦戦略第ニラウンド、ポストハーベスト

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パンを食べるなら、白い四角いパンから丸い茶色いパンヘ 

潜在的な恐怖…それが有機リン系農薬の環境ドラッグ作用だ。

汚染化学物質は「脳の発達を阻害し、神経・行動異常をもたらす」ーーこれは1995年11月、イタリアでのシシリー島で開催された国際会議で緊急警告として発せられた。

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学校給食用パンの九割からも3種類の有機リン系殺虫剤が検出されている。これは市販食パン、グルメパンよりも多く含有していたので深刻だ。

残留農薬が検出されたことで、2000年5月10日、衆議院(農林水産委員会)で「学校給食のパンからもマラチオンなど有機リン系殺虫剤が検出されている。

子供も含め、弱者の立場を考慮した対策が必要だ」と佐藤健一郎議員(民主党)が追及している。

これに対して政府は「輸入小麦などの残留農薬を調べても、いずれも基準値以下で問題はない」(食糧庁)と回答。

この回答に、私は、日本はアメリカの属国でしかない…ことを、改めて痛感した。

対日小麦戦略の第ニラウンドは、このポストハーベスト農薬による有毒小麦の押しつけであろう。

アメリカの強行圧力で「整合化」(ハーモニゼーション)の名のもとに、日本の食品添加物、残留農薬の「規制緩和」が行われた。

残留農薬は91年以降に、多数の農薬についてポストハーベスト使用を前提とした甘い残留基準が新たに設定された。

138もの新たな農薬の甘い残留基準が設定された。(1997年)

日本の農家は「収獲後の作物に、農薬を散布する」と聞いたら眼をむく。農薬とは栽培中に散布するもので、収獲作物にできるだけ「残留しないよう注意する」のが常識だからだ。

だから国産小麦には残留農薬は「不検出」なのだ。収獲した小麦に、農薬をまぶすなどは、日本の農民にとっては「狂気の沙汰」としか映らない。

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アメリカは、日本の糧道すなわち胃袋を握るために、このポストハーベスト残留基準を押しつけた。

太平洋を超えて、膨大な食糧を日本に輸出するには、腐敗、カビ害虫などによる品質劣化を防ぐ農薬散布が不可欠だったからだ。

いわばアメリカの愧儡政権である政府自民党が、ポストハーベスト農薬の危険性を指摘できるわけはない、のである。

燻蒸処理で基準の30倍もの薬剤を!

前出の市民団体テーブルは「ごく微量の化学物質でも頭痛などが生じる化学物質過敏症の人にとっては、一日に1マイクログラム(マイクロ”100万分の一)ていどの殺虫剤などの接種でも発症することが、知られている。

(殺虫剤) 0.012ppmのパンを100グラム食べれば、1マイクログラムになるから、決して安心はできない」(『毎日新聞』2000 /5/18)

同テーブルは、ポストハーベスト農薬を使わない国産小麦の生産流通の拡大をアピールしている。まったく同感だ。

これら、有毒なポストハーベスト農薬は直接散布の他、燻蒸処理で気化して小麦に吹き付けられている。

収獲後、①倉庫燻蒸トラックなどの②車両燻蒸、港の③倉庫燻蒸、さらに船積みされたあとも④船倉燻蒸…と、呆れるほど繰り返される。

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恐ろしい証言をパン製造関係者から聞いた。小麦の外皮には気孔という小さな孔があり、いくら燻蒸しても薬剤はその気孔から内部に浸透して外皮表面に付着しない。

そこで「これでもか…」と基準値の30倍もの量の燻蒸剤を使用することもあるという。「健康食品店で売られている小麦胚芽は、ぜったい止めたがいい。あそこに高濃度に燻蒸剤が残留していますから」ーー輸入小麦をつかった市販パンから検出されるのも当然だったのだ。

ごはんこそが、もっとも理想の基本食

「学校給食で、牛乳以上に問題になるのがパンです」

自然育児を唱え、全国的に知られる小児科医、真弓定夫医師の意見は傾聴に値する。

「ヒト本来の生息圏(温帯)にあるわが国では、弥生時代以降、稲作文化が定着し、ごはんが食卓の主役の座を占めつづけてきました」(『あやもよう』2000 /7/1)

真弓医師は、寒帯に定住するようになった欧米人は、コメがとれないため、代用食文化として麦類に頼らざるを得なかった、という。

「コメとちがってパンやパスタは、主食とはなりえないのです。

フランス料理のフルコースでもパンはあくまで脇役にすぎません。イタリア人は、パスタをオードブル的に食べた後で、肉を主体にしたメインデッシュを口にします。

これらは寒帯に住まざるを得なくなった彼等が永年にわたって、ヒトの食文化とは違う食事を工夫してとりつづけることによって、彼等なりの代用食文化を築き上げてきたのです」(同)

それを体系づけたのが「現代栄養学」なのだ。

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理想の基本食ごはんがあった日本人は、それに春夏秋冬の季節のものを食べれば、完璧な食生活であった。

「ごはんは、それだけで食べられます。パンと違ごはんにはバターやジャムなどは無用の長物です」(真弓医師)

さらに「パスタと違って、そばやうどんにはオリーブ油などの植物油は不要です」という指摘にもうなづく。

「温帯に住む日本人が、パンやパスタを食卓にのせれば、おのずから動物性食品の摂取量が増してきます。

それが身体の大型化、とくに肥満につながり、かってあまりみられなかった糖尿病、心臓病、腎臓病、ガンなど、いわゆる生活習慣病の引きがねになっているのです」


自然流育児のすすめ―小児科医からのアドバイス

この真弓医師の指摘は、ようやく日本人にも広く理解されはじめてきたようだ。

『粗食のすすめ』(東洋経済新報社)が100万部に迫るベストセラーとなり、『伝統食の復権』(同社)という本が、広く受けいれられてきた。

同書は「おかずを減らして、もっとご飯を食べよう!」とすすめる。

そこでは「ご飯と味噌汁を2、3倍。おかずは3分の1に、よく噛んで」食べる習慣の復活をうったえている。

たまには「アンバランスな外食(グルメ)を楽しむ」。そんな食のスタイルを提案している。

そして、ごはんを中心とした和食の深い奥行きを、じっくり見直してみたいものだ。

月刊マクロビオティック 2001年02月号より

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アメリカの占領政策「日本人にコメを食わせるな。パンを食わせろ」 

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船瀬俊介 (ふなせ しゅんすけ)地球環境問題評論家

著作 『買ってはいけない!』シリーズ200万部ベストセラー 九州大学理学部を経て、早稲田大学社会学科を卒業後、日本消費者連盟に参加。

『消費者レポート』 などの編集等を担当する。また日米学生会議の日本代表として訪米、米消費者連盟(CU)と交流。

独立後は、医、食、住、環境、消費者問題を中心に執筆、講演活動を展開。

船瀬俊介公式ホームページ= http://funase.net/

船瀬俊介公式facebook=  https://www.facebook.com/funaseshun

船瀬俊介が塾長をつとめる勉強会「船瀬塾」=  https://www.facebook.com/funase.juku

著書に「やってみました!1日1食」「抗がん剤で殺される」「三日食べなきゃ7割治る」「 ワクチンの罠」他、140冊以上。

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