コーヒーで、糖尿病の発症率が3割減。
コーヒーと糖尿病の論文。世界初登場は40年以上前
コーヒーが糖尿病の発症を抑えるらしい、というデータが世の中に最初に登場したのは1970年のことです。
ところがこの発表は、当時、ほとんど注目されませんでした。
1980年代になって、コーヒーの消費量と糖尿弱との関係を取り上げた論文が少しずつ出始めます。2000年以降になると、さらに論文の数は増えていきました。
今やその医学論文の数は400を超える勢い。
今まさに世界中で、コーヒーと糖尿病の関係に注目が集まっています。
「前向きのコホート研究」でコーヒーの健康作用が明らかに
さて、コーヒーと糖尿病について、具体的な話をする前に、研究方法について少し触れておきましょう。
先ほどの400を超える医学論文の多くは「疫学的研究」と呼ばれるものです。
疫学的研究とは、特定の集団(コホート)における、病気の発症を調べる研究です。個人ではなく、集団を対象にするところが特徴です。
そのなかでも中心となったのは、「前向きのコホート研究」と呼ばれる研究方法です。
たくさんの人を集めて、ある対象について調査をして、それから何年後、何十年後と追跡調査をすることによって、最初の調査との因果関係を分析します。
未来に向かって追跡調査をすることから「前向き」という名前がついています。
前向きのコホート研究は、数万人~数十万人を長期間にわたって追跡をすることから、大変な手間と費用がかかります。
それだけに信頼できるデ—夕ということができます。
この前向きのコホート研究で、どういう人が糖尿病を発症したか、発症しなかったか、という分析をしていくと、コ—ヒーをたくさん飲んでいる人は糖尿病になる人が少ないというデータが次々に報告されたのです。
糖尿病の発症を抑制する効果が世界中で確認された
日本で初めて、コーヒーと糖尿病についての研究が報告されたのは、2002年。国立国際医療センターの研究論文が、イギリスの権威のある医学雑誌「ランセット」に掲載されたのです。
海外の有名な研究としては、ハーバード大学で行われた「ナース・ヘルス・スタディ」看護師を対象にした前向きのコホート研究があります。
コーヒーを飲む習慣がある人は、飲まない人よりも、2型糖尿病を発症するリスクが低いことがわかりました。
ヨーロッパでもアメリカでも、アジアでも、人種にかかわらず、いくつもの大規模な疫学的研究が行われています。
「コーヒーを2、3杯飲んでいる人は、長期的に見て糖尿病の発症が30%少ない」
「コーヒー1杯につき発症率が7%減る」
「1日3、4杯のコーヒーを飲むと、糖尿病の発症リスクが約25%減る」
「1日7杯以上飲む人は、2杯以下の人と比べて2型糖尿病のリスクが半分」……と、枚挙にいとまがありません。
コーヒーの消費量が多いほど、糖尿病の発症は少ないというのが、ほぼ共通の結果です。
もっとも、コーヒーを飲み過ぎると、健康被害が出ることも考えられます。
カフェインのとり過ぎで眠れなくなることもあります。日本人の場合は1日3杯程度がちょうどいいでしょう。
血糖値を下げる物質は「クロロゲン酸」と考えられる
それでは、コーヒーの中のどんな成分が、糖尿病の発症を抑える慟きをしているのでしょうか。
研究報告によると、カフェインが入っているかどうかにかかわらず、発症率を下げる効果は出ているようです。
メイン成分はカフェインではない、ということです。
コーヒーの中には1000種類以上の化学物質が含まれています。カフェインはほんの2%を占
めるにすぎません。
どの成分がよい作用をもたらしているのか、それを特定するのは簡単ではありません。
今、最も可能性が高い成分としては、「クロロゲン酸」が注目されています。クロロゲン酸はポリフェノールの一種。
抗酸化作用、抗腫瘍作用など、さまざまな作用があることがわかっています。
クロロゲン酸がインスリンの効きめをよくすることで、血糖値が下がり、糖尿病の発症が抑制されるのではないかと考えられています。
血糖値コントロールに役立てたい食前に飲むコーヒー
さて、40歳以上の約3人に1人が糖尿病患者または糖尿病予備群であるといわれています。
糖尿病は、インスリンが作用しないことによって、慢性の高血糖が続いて、さまざまな合併症を引き起こす病気です。
初期のころは自覚症状がないため、気づかず放置している人が多いのも特徴です。そしていったん糖尿病になると完治することは難しいといわれています。
ですから、糖尿病予備群のうちに、血糖値をコントロールして、糖尿病にならないことが大切です。
1型糖尿病は基本的に生活習慣は関係ありませんが、2型糖尿病は生活習慣が大きく関係します。
カロリーのとり過ぎや運動不足で肥満になることは、2型糖尿病の発症に大きく関わります。
健康な人であっても、食後に血糖値が急に上がるのはあまりよくないといわれています。
なぜなら、血糖値を下げようとしてインスリンが分泌され、脂肪が燃焼しにくくなり、蓄積されるからです。
食後血糖値の急上昇は、太りやすくなる原因の1つというわけです。
さらに、血糖値が急激に上がると、その反動で、逆に下がり過ぎてしまい、食欲が湧いて、食べ過ぎの原因になることもあるようです。
糖尿病予備群の人は特に食後血糖値が急上昇しないように、血糖値をコントロールすることが必要です。
コーヒーを食前に飲むと食後の高血糖が抑えられるので、習慣にしてみるのもいいかもしれません。
コーヒーの秘密 ―1日3杯の飲み方ガイド | ||||
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