不妊の男女が断食や半断食を通して子どもを授かることは珍しくない

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磯貝昌寛の正食医学【第59回】 不妊症

文明と不妊

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世界を見渡すと、先進国といわれる国ほど子どもが少ない。女性の社会進出や晩婚化などの社会的要因も大きな誘因となっているが、そのベースに食物と生活が原因としてある。

まず第一に飽食が挙げられる。人間は本来、穀物を主たる食物としてきたが、文明が進むと同時に、砂糖や人工甘味料、肉や卵、乳製品などの摂取量が急激に増えた。

これらの食物はエンプティーカロリー(中身のないカロリー)といわれ、食べても満足感がなく、いたずらに摂取カロリーを増やしていった。

飽食で蝕まれた体は、胃腸や肝臓、すい臓などの消化器に負担をかけるだけでなく、生殖器にも大きな負荷がかかり、子宮筋腫や卵巣嚢腫、子宮内膜症や卵管狭窄など婦人科の病気を多発させている。

男性にも大きな影響がある。

精子数の減少や精子の形態異常と活動の低下などが20世紀後半からいわれている。エンプティーカロリーの生みの親は動植物に与えられる成長ホルモンや抗生物質、化学農薬などである。

これらの異物が体内の中でも異物化し、それらの排泄反応として私たちの体は病として表出させている。食だけではない。

便利過ぎる社会は人間の危機感が希薄になり、生命力を喪失させている。人間は危機感と隣り合わせの生活の中から感性を磨き、生命力を高めてきた。

火の使用が人間の脳を飛躍的に向上させた。

火の扱いは危険である。危険だからこそ人間は考え、工夫し、脳を発達させた。

人間から火を奪うと、人間は人間でなくなる。先進国が抱える少子化問題は食と生活の間違いを警告している。

危機感が生殖能力を高める

自然農法を実践する北海道の友人から聞いた話である。友人の家では老羊を雄雌一頭ずつ飼っていた。この老羊はすでに子どもを産まなくなって数年経っていた。

ある年の初夏、友人は羊の毛刈りのワークショップを開いた。子どもから大人まで多くの人が集まってこの老羊の毛を刈っていた。

初心者がオスの毛を刈っている時だった。生殖器の周りが糞尿で毛と肌の境がわかりにくくなっていたため、その初心者は間違ってオスの睾丸を切ってしまった。

「タマ消る」というコトバがあるが、まさかこれから来ているのであろうか?

幸いにも傷で済み、タマは消えることなく無事であった。

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翌年の春、驚くことにこの老羊の夫婦から子どもが生まれた。これこそ本当にタマゲタ! この話を聞いて、私は危機感こそが生命力を高めると確信した。

不妊の男女が断食や半断食を通して子どもを授かることは珍しくない。

食を断つことは生命の危機の最たるものである。この危機感を体験することは、人生においてとても大事なことである。

まして、病気や不妊など、心身の問題を抱えている人は、この危機感との遭遇で眠っている遺伝子を呼び覚ます。

これは、改善への大きな一歩となる。

女性不妊の陰陽

不妊症の相談者をみていると、体の陰陽の偏りが大きい。陰性に偏っても妊娠しづらく、陽性に偏っても妊娠しづらい。

中庸な体は妊娠しやすく、出産も無事に済む。産後の肥立ちも中庸な人はとても順調だ。

卵巣嚢腫や子宮筋腫にも陰陽があるが、総じてみると陽性のことが多い。チーズやバターなどの乳製品、鶏卵、魚卵、ハムやソーセージなどの加工肉も婦人科系の病気と大きな関係がある。

砂糖や人工甘味料は体の中の熱を奪うので、子宮や卵巣を冷やし、筋腫やポリープ、嚢腫ができる下地を作る。

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多くの動物の生殖器が体の中心にあるということは、冷やしてはいけない、温かい状態を維持しなくてはいけないということだ。

旬を外れた果物も、子宮や卵巣を冷やすので気をつけなくてはならない。

卵巣嚢腫や子宮筋腫は体を冷やさず、過去に摂って造られた動物性由来の細胞を分解解毒する必要がある。

第一大根湯、干し椎茸スープや干し舞茸スープ、野菜スープや香辛料スープをお茶代わりに摂るのはよい。

陽性な筋腫や嚢腫であれば、これらのスープを摂ると体温が上がって代謝がよくなる。陰性な病気であれば、これらのスープを「おいしい」と感じない。

むしろ体を冷やしてしまう。味覚で体の陰陽がわかる。

外用の手当て法では大根干葉湯の腰湯や半身浴がよい。血液の力の弱い人は、生殖器に集中的に血液を集める必要から腰湯がよいが、そこまででない人は半身浴でよい。

腰湯と半身浴、両方やってみて「心地よい」と感じる方でよい。大根干葉湯に塩を入れる・入れないも、両方試してみること。

体に合っている方が「心地よく」、体がポカポカと温まってくる。塩を入れて温まる人と、塩なしでないと温まらない人がいるのだから、婦人科の病気にも陰陽がある。

大根干葉湯の他にもしょうが湯を試すのもよい。

しょうが湯も腰湯と半身浴どちらが合っているか。生の生姜と乾燥の粉末しょうがを試し比べるのもよい。

体の「心地よい」感覚の有無または強弱で自分に合った手当て法を探すことである。

下腹部に直接、しょうが湿布や里芋パスター、ビワ葉温灸をすることもとてもよい。

男性不妊の陰陽

男性が原因の不妊は以前は少なかったといわれるが、私の道場に来られる不妊の方の半数近くが男性に原因がある。

精子数の減少、精子の形態異常や不活動は食物や生活日用品からの化学物質や環境ホルモンが大きな影響を与えている。

ホルモン漬け、抗生物質漬け、防腐剤漬けになっている食物は絶対に食べないこと。そして、化学合成洗剤も不妊との関わりが強いので避けること。

男性不妊は特に、電磁波の影響も大きい。

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電磁波からはなるべく離れる生活をすること。早寝早起きの生活を基本として、体をよく動かし、穀物を中心とした食生活を行っていくことが大切である。

老羊が危機感で生殖能力が高まったように、男性は特に、生命の危機感に積極的に取り組んでいくこと。

断食や半断食も生殖能力を高める。体を動かし、運動不足を解消することも生殖能力を高める。

男性不妊は女性不妊と比べると陰性のことが傾向として多い。草食系男子といわれるが、草食動物は子だくさんなので、今の男子は添加物系男子の方が的を得ているだろう。

体に溜まった化学物質や添加物を排毒排泄することが、男性不妊へのまず第一歩となる。

月刊マクロビオティック 2016年11月号より

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磯貝 昌寛(いそがい まさひろ)

1976年群馬県生まれ。

15歳で桜沢如一「永遠の少年」「宇宙の秩序」を読み、陰陽の物差しで生きることを決意。大学在学中から大森英桜の助手を務め、石田英湾に師事。

食養相談と食養講義に活躍。

マクロビオティック和道」主宰、「穀菜食の店こくさいや」代表。