認知症には「噛む、歩く、書く」ことが3大予防策

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磯貝昌寛の正食医学【第74回】食養と老い

人間の特徴

キリンは首が長く、高い木の上の葉まで食べることができます。ゾウはその体の大きさから、肉食動物に襲われることは少なく、草食動物の王様的存在として君臨しています。

ネズミは動きが素早く、至るところに出没して縦横無尽にエサを確保し、世界各地に棲みつく生命力はゴキブリなどと同様、野生そのものです。

人間の肉体的特徴は他の動物と比べると顕著なものはありません。

しかし、人間は大きな脳を獲得して、火をあやつり、物を作り出し、食物を栽培するという一大特徴を持つに至りました。

そして、脳の特徴は人間同士、コミュニケーションを活発にし、多様な言葉を生み出しました。

人間は言葉を発せず、人と触れ合わずにいると脳が委縮し始めます。

脳が委縮してくると、人間同士のコミュニケーションがうまくいかず、社会生活に問題が生じてきます。

人間の一大特徴である脳はどのように生み出されたのでしょうか。

人間の歴史と生物と地球の歴史を見てみると、オモシロイことがわかります。

ヒトの特徴は歯と口腔内にあります。

食べ物をよく咀嚼できる歯と舌が自由に動く口腔を持ち合わせている動物は人間だけです。噛むことは脳に血液を上げるポンプです。

人間は食物を徹底して噛むことで脳を発達させてきました。

噛むことは、脳を活性化させる上でもっとも重要なことです。

人間は世界の至るところに棲み家を持って暮らしています。

ネズミやゴキブリも世界各地に生息していますが、これらの生物は人間と共に世界に広がったということですから、人間の行動力は群を抜いています。

車や飛行機のない時代から世界各地でそれぞれの生活を営んでいるということは、人間は歩いて世界に広がっていったのです。

歩くということも人間の脳を活性化させる最も重要なことです。

人間の特徴で忘れてはならないのが「文章を書く」ということです。言葉の発達は、文章を書くということがどれほど強く後押ししたか想像に難くありません。

人間は文章を書くことで次世代に叡智を引き継ぎ、脳の発達を積み上げてきました。

人間は、噛むこと、歩くこと、書くこと、これらの作業を通して脳を活性化し、人間同士のコミュニケーションを円滑にしてきました。

現代の日本は認知症の患者が急増しています。2020年には600万人を超え、2050年には1000万人を超えるという予測もあります。

認知症は大きな社会問題です。

認知症の予防

認知症には「噛む、歩く、書く」ことが3大予防策です。

噛むことは脳の血流を促す他、唾液の分泌を活性化させます。唾液腺が刺激されて活性化すると、ホルモンの分泌も盛んになります。

脳内ホルモンも他の体内ホルモンと同様、唾液との関係が非常に深い。唾液がよく出る人は認知症にもなりにくく、ドライマウスや口内炎ができやすい人は脳や体のホルモンも少ない傾向にあります。

唾液がよく出て脳内ホルモンが活性化されていると、未知へ挑戦する心が大きくなります。

年をとると保守的になってくるのは、脳と体のホルモンの影響が強いのです。

逆に、年をとっても新しいことに挑戦したり、知らないことを学ぼうとすることは、脳内ホルモンを活性化させて認知症を予防します。

講演会の時、食養のある大先輩から「大変勉強になりました」とお声がけいただいたことがあります。

年の離れた先輩からの激励に恐縮したのですが、それ以上にその方の凄みを感じました。

高齢になっても学ぶ気持ちを持ち続けていることは最大の認知症予防です。

「噛む、歩く、書く」ことはとても簡単ですが、継続するのは難しいです。

しかし、「噛む、歩く、書く」ことを続けていると、それ自体が瞑想になって心が休まり、心が休まると体と心の間合いが調います。

それが日々の生活の一部になります。生活は生きた活動ですから、「噛む、歩く、書く」ことは生活そのものといえます。

歩くことは一人でもできますが、家族や友人、隣人との相方歩きもまたよいものです。

書くことは、創作文でも写経でもよいです。写経は本来お経を写すことですが、気に入った文章ならば何でもかまいません。

師の石田英湾は、ホツマツタヱ( ※ )のホツマ文字48字を毎日写経していました。般若心経や古事記も写経するのに適しています。

もちろん日記もよいです。昨年91歳で亡くなった祖母も、毎日書いていました。

亡くなった後で日記を読み返してみて祖母の心がよくわかりました。

血の繋がらない私を気にかけてくれていたことがよくわかり、目頭が熱くなりました。認知症を予防することは、人生を心の底から楽しむことです。

老いは腸から

老いは腸からきます。腸が若々しければ、人間もまた若いのです。小腸には絨毛( 細かい毛)が無数に生えています。

土から栄養を吸収しようとする植物の根のように、私たちの腸には食べ物から栄養を吸収して血液を造り出すための絨毛が生えています。

この絨毛がすり減っていくのが老いです。緩やかにすり減っていくのは自然な老いですが、急激にすり減るのは病気です。

小腸の絨毛が急激にすり減るのには理由があります。

栄養素の吸収や造血を促進するのではなく、体に溜った毒素や老廃物を排泄するのに一時的に絨毛が短くなります。

食べ物の栄養の吸収を弱めて、体の排毒と排泄を優位にさせているのです。これ以上色々なものを取り込むのでなく、断捨離をしたいという体の声です。

体の声に素直に従って腸を休ませれば、絨毛は再びよみがえってきます。

植物も枯れたり腐ったりしても、土の状態がよくなれば根がよみがえって緑を取り戻します。

小腸の絨毛が生い茂っていたら、一汁一菜の食事で健康な体と心を生み出すことができます。むしろ、動物性食品や白砂糖、人工甘味料などの高タンパク・高糖分の食事では、小腸の絨毛はすり減って造血力を低下させます。

白血病や悪性リンパ腫などは血液の病気ですが、血液を造り出す腸の病気といえます。小腸の絨毛は、生える状態にならなければしっかり生えてきません。

体の毒素がある程度なくならなければ造血の体にはならないのです。

すり減った絨毛を再生させるには、断食や半断食が極めて有効です。断食や半断食で胃腸を休めてあげると、小腸の絨毛は再生しやすくなります。

とはいえ、単に食を断つだけで絨毛が再生されるわけではありません。

お腹を温めること、姿勢を正して深い呼吸をすること、深い睡眠をとること、体を良く動かすこと、唾液の分泌を促すことなどを実践していくと、小腸の絨毛は短期間のうちに再生してきます。

小腸の絨毛を伸ばすことは簡単なことですが、実践は難しいです。人間は、そこに喜びを感じると、継続的な実践を苦にしなくなります。

日々の生活で絨毛を再生させる習慣を身につけると、大きな病気を決して患わなくなります。

この習慣が世界各地に伝わる伝統的な食べ方と生き方にあります。断食が世界中で伝統的に継承されているのは、そこにあります。

日本人であれば、日本の伝統的な食と生活で小腸の絨毛は活性化してきます。

老いによる絨毛減少も、伝統的な食と生活を実践していると非常に緩やかですから、本人はもとより看取る家族や周りの者も心やすらかに最期の時を迎えることができます。

※古代大和言葉で綴られた一万行に及ぶ叙事詩

月刊マクロビオティック 2018年2月号より

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磯貝 昌寛(いそがい まさひろ)

1976年群馬県生まれ。

15歳で桜沢如一「永遠の少年」「宇宙の秩序」を読み、陰陽の物差しで生きることを決意。大学在学中から大森英桜の助手を務め、石田英湾に師事。

食養相談と食養講義に活躍。

マクロビオティック和道」主宰、「穀菜食の店こくさいや」代表。

知らないことは罪である。知ろうとしないことはさらに深い罪である。シェアして拡散しましょう!

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