歩き方できまる 長生き父さん、早死に父さん。 (生活と身体シリーズ)
歩かないことが、病気をつくる!
現代人は、歩かなくなりました。サラリーマンでよく歩く人でも、1日6000歩から7000歩。時代を遡って江戸時代の庶民は1日3万歩歩いていたといわれていますから、今の時代に生きる私たちがいかに歩かなくなったか、おわかりいただけるでしょう。
とくにパソコンひとつで世界中とつながるようになってからは、1日中パソコンに向かって仕事をしている人も多くなり、運動不足はもちろんのこと、コミュニケーション不足からくる心の病に苦しむ人も増えています。
こういう人たちが生活習慣病や心の病が原因で、薬づけになっていく姿をなんとかしたくて、私は今から8年前に薬剤師の白衣を脱ぎました。
数ある運動療法の中で、なぜウォーキングがもっとも効果的なのでしょうか。
生活習慣病や心の病で悩んでいるみなさん。今のあなたの悩みは、すべて歩かなくなったことからはじまっています。
「歩かなかったことが原因で、病気になった」といっても、いい過ぎではありません。あなたが「長生き」できるかどうかを決めるのも、「歩いているか」「歩いていないか」の差ではないかと私は考えています。
この本を手に取られた人は、身体や心の悩みを抱えられているのではありませんか。
病院で検査を受け、薬をたくさん処方され、途方に暮れているみなさん。薬を飲む前に、ぜひこの本を読んでください。
「今からでもあなたの悩みは、歩くことできっと改善されます」
例えば、生活習恨病といわれる肥満、高血圧症、高脂血症、糖尿病の4つは、いずれも食生活、迎動不足が原因で起きる病気です。
薬を飲んで一時的に症状を抑えたとしても、薬で治すことはできません。
根本的に生活習慣を見直し、その原因を見つけて食事旅法、迎動療法などをすることで治すことができます。食事療法で気をつけなければいけないのが、ダイエットです。
ムリなダイエットをして身体を壊しては元も子もありません。食べ過ぎやかたよった食事を改めることも大切ですが、自分の身体や生活のリズムに合った食事療法を実践することが大切です。何事も楽しくなければ続きませんから。
では、数ある運動療法の中で、なぜウォーキングがもっとも効果的なのでしょうか。
その答えは、簡単です。人間の身体の筋肉は、およそ7割が足の筋肉です。
歩くだけで大きなエネルギーが消費され、たまっている脂肪も分解されます。しかも「第二の心臓」といわれているふくらはぎを動かすことで、血流を上げることができます。
良質の筋肉が維持され、基礎代謝も促進されるため、メタボはもちろん、高血圧症、高脂血症、糖尿病といった生活習慣病も改善されるというわけです。
ウォーキングの効能は、これだけではありません。
日本人3人のうち1人が悩まされているのが、頭痛です。頭痛は長時間のデスクワークやたび重なるストレスから血流が悪くなり、肩が緊張して起こる、まさに現代病です。
私も30年以上頭痛に悩まされ、薬を手放すことができずにいました。
ところが、本格的にウォーキングをはじめてわずか3ヶ月で、頭痛がウソのように消えてなくなり、長年手放すことができなかった薬を手放すことができたのです。
便秘や下痢といった過敏性腸炎にも、ウォーキングは最適です。過敏性腸炎は、ストレスなどが原因で腸の動きがコントロールできなくなることで起きる病気です。
ウォーキングをすることで、腸の動きを活発にする副交感神経が高まり、下痢や便秘といった腸のトラブルも解決されるのです。
さらに死亡原因の第1位に挙げられるがん。
この「不治の病」といわれるがんも、ウォーキングをすることで予防することができると、私は考えています。
がんは、加齢やかたよった食生活、冷え性、運動不足やストレスで免疫力が低下することによって発症する可能性が高くなるといわれています。
そういう意味では、がんも生活習慣病の1つに数えられますね。
ウォーキングはこうした生活習慣を改善するだけではなく、最近の研究ではがん細胞を撃退してくれる「NK(ナチュラルキラー)細胞」を活性化することが明らかになってきました。
がん以外にも、ウォーキングによる驚くべき効能が、昨今の研究を通して解明されています。
例えば「心のカゼ」といわれるうつ病、認知症や不眠症といった病も、歩くことで改善がみられます。
たった「300歩」、薬は必ず手放せる
「では、毎日何歩、歩いたらいいですか?」
これはセミナー受講者に限らず、多くの人から聞かれる質問です。
「1日1万歩ですか?」と聞かれることもよくあります。「毎日1万歩歩こう」は、厚生労働省が健康のために推奨しているスローガンです。
1歩の歩幅が平均50センチと考えても、およそ1日5キロ。
歩く速度にもよりますが、毎日少なくとも1時間は歩く計算になります。
外出する機会の多い営業マンの人なら、仕事をしながら歩くことができるかもしれません。ところが、デスクワークや車で移動することが多い人にとっては、最初から毎日1万歩は、現実的にムリがあります。
しかも、いきなり1万歩も歩いたために身体のあちこちが筋肉痛に襲われ、翌日は歩けなかったということにもなりかねません。
それだけで済めばよい方です。
ムリなウォーキングを続けることで、ヒザや腰、足首やアキレス腱を痛める人も多くみられます。
疲労によって「免疫力」が低下して、ウイルスや細菌などを抑えることができず、病気にかかることもあります。
さらにウォーキングの途中で動脈硬化が悪化して倒れ、亡くなってしまったケースも耳にします。
これは過度のウォーキングによって血流が増え、大量の血液が細くなった血管を通ろうとして、詰まってしまったものと考えられます。
何事も、過ぎたるは及ばざるがごとし。こうなっては元も子もありません。
では、1万歩が多すぎるのであれば、いったい1日何歩歩いたらいいのでしょう。6000歩ですか? 8000歩ですか?
私は、「1日300歩で大丈夫です」と公言しています。
すると、大抵の人は、「ええっ、1日300歩って何の根拠があるの?」と驚かれます。300歩では、確かに少なく感じるのもわからなくはありません。
しかし「たかが300歩、されど300歩」。300歩にはじつは深い意味があるのです。もちろん、300歩を、ただ漫然と歩いているだけでは、効果は現れません。
「300歩、正しい姿勢で規則正しく、歩く!」 ここがとても重要なのです。
「たった300歩で何を大げさなことを!」、ほとんどの人は、そう思うかもしれません。しかし、これには私なりの根拠があります。
ウォーキングは、けっして「歩く量」や「歩く時間」が問題なのではありません。
ウォーキングは、「歩き方の質」=「正しい歩き方」で歩くことが大切なのです。お話ししたとおり、実際に私は正しい歩き方で3ヶ月歩くうちに頭痛がなくなり、30年飲み続けてきた薬を手放すことができました。
まずはあなたも、「正しい歩き方」で実際に300歩、歩いてみてください。その時はじめて「300歩」歩く難しさを理解できるはずです。
私はセミナーを通じて、多くの生徒さんの歩き方を見てきました。
その経験からいわせていただくと、最初から「正しい歩き方」ができる人はほんのひと握りです。
私もそうでしたが、最初はどの人も長年のクセや身体のトラブルが原因で、バランスを崩しています。
人間の身体は、とても正直です。
いつもカバンを左肩から下げたり、重い荷物を右手で持っていることで、身体の中心がズレていきます。
そのクセを何年、何十年も続けていると、背骨や骨盤が歪んでしまい、さまざまなトラブルを起こす原因になります。
歩く時は、なるべく両手を自由にしておくことを心がけてください。
そのために、リュックタイプのカバンを背負って歩くことが身体には良いでしょう。仕事柄、どうしても片手で重たい荷物を持たなければならないのなら、身体を傾けずに、まっすぐ歩く練習をしてください。
どんな状況でも、「正しい歩き方」で歩く、これがウォーキングの極意です。
「正しいウォーキング」にこだわるあまり、「なかなか歩き出すことができない」と、嘆く人もいます。
確かに自己流でも、歩かないより歩いた方が効果は見られます。
ただし、自己流の歩き方では、トラブルを招く可能性があります。まず、自分の歩き方の間違いに気がつくこと、それが正しく歩くための第1歩です。
自己流の歩き方 ⇒ 正しい歩き方に直す ⇒ 故障のリスクがない
「正しい歩き方」に直して「300歩」歩くことができたら、あなたも「長生き父さん」の仲間入りですよ。
歩き方できまる 長生き父さん、早死に父さん。 (生活と身体シリーズ) | ||||
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