薬剤師は抗がん剤を使わない 宇多川久美子 (著)

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薬剤師は抗がん剤を使わない (廣済堂健康人新書)

薬剤師として長年医療現場に身を置き、薬を使うことの弊害を目の当たりにしてきた私は、

「薬はむやみやたらに飲むものではない」

「薬は副作用があることを理解したうえで、必死のときにのみ使うもの」

「生活習慣病になったら、薬だけでよしとしないで生活習慣を改めるべき」と、みなさんにお伝えしてきました。

長年の経験から、薬のすばらしさも充分にわかっているつもりです。ですから、薬を全面的に否定しているわけではありません。

自分の力ではどうにもならず、やむなく薬を使っている人たちに対して、使わないほうがいいと主張するつもりもありませんし、私自身も絶対に使わないと決めているわけでもありません。

緊急の場合には、薬は適切に使われるべきだと思いますし、私も緊急事態に直面すれば、自分の命をつなぐために、薬のお世話になることもあるでしょう。

では、がんの場合はどうでしょう?

薬についての講演会やセミナーをすると、必ず出てくるのが、「薬は使わないといっているけれど、がんになっても使わないのですか?」「がんは風邪とは違うし、がんになったら抗がん剤を使いますよね」といった質問です。

確かに、風邪なら布団に入って休んでいれば治りますが、さすがにがんはそういうわけにはいきませんね。がんになったことがわかれば、私も一大事ととらえ、必死になります。

しかし、もし私自身ががんになったとしても、基本的には抗がん剤を使おうとは思いません。

本書タイトルの『薬剤師は抗がん剤を使わない』とは、あくまでも「薬剤師の宇多川久美子は抗がん剤を使いたくない』という意味です。

薬剤師さん全員が使わないという意味ではありません。

万一、私の家族ががんになった場合も、抗がん剤が身体に与える影響とそれに伴うデメリットをしっかり伝え、そのうえで本人にどうするか判断してもらうつもりです。

なぜなら、抗がん剤には、毒性の強いものが多くあり、人の免疫力やQOL(quality of life=人生の質、生活の質)を著しく低下させてしまうからです。

抗がん剤は人の免疫力も抑えてしまう

「毒をもって毒を制す」といいますが、抗がん剤は強い毒性によってがん細胞の増殖を抑えようとするものがほとんどです。

増殖を抑えるだけではなく、抗がん剤の毒性はがん細胞以外の細胞にもおよびます。

抗がん剤は、基本的には、がん細胞の増殖速度が正常細胞より速いことを利用して、「増殖速度の速い細胞を攻撃する」ようにつくられています。

こうして正常細胞には攻撃がいかないようにしているのです。しかし、現実には多くの副作用が見られます。

抗がん剤の副作用でもっとも多いのは「吐き気・嘔吐」ですが、特に女性にとってつらい副作用に「髪が抜ける」ということがあります。

これは、毛根の細胞が他の細胞よりも増殖速度が速いために、抗がん剤の作用が、がん細胞だけでなく毛根細胞にもおよんでしまうからです。

外部からの病原菌やウイルスの侵入を防いだり、身体の中にできた悪い細胞を除去しようとする自己防衛システムを免疫といいますが、皮肉なことに、抗がん剤の中には、その免疫の働きを抑えてしまうものもあるのです。

抗がん剤が増殖速度の速い細胞を攻撃するとお話ししましたが、骨髄(赤血球、白血球、血小板)や生殖器(卵巣、精巣)なども増殖速度が速いので、抗がん剤を服用することによって白血球の数が減って免疫力が落ちたり、不妊への影響があることも多いのです。

また、口内炎に苦しむ患者さんも何人も見ました。

たかが口内炎と思われるかもしれませんが、口の中全体が潰瘍化して、食べ物を飲み込むことができなくなることもあるのです。

いったんよくなっても抗がん剤を使うとまたぶり返してしまう患者さんもいました。

しかも、抗がん剤による治療というのは、多くの場合、がんが転移した、ステージ3、ステージ4といわれる病期の方に対して行われます。

がんが特定の場所にとどまっているステージ1、ステージ2といわれる状態であれば、がん細胞を手術で取り除いたり、がん細胞に放射線を当て消失させたりすることもできます(場合によっては手術前などに抗がん剤が使われることもあります)。

しかし、身体の各所にがんがある場合、身体のあちらこちらを切除したり、何力所にも放射線を当てたりしては、身体に多大な負担を与えることになります。

だからこそ、全身をくまなく巡る抗がん剤が使われるわけです。

手術が必要な病気は重く、薬で対処できる病気は軽い、と思われがちですが、ことがんに関しては、事情が異なるのです。

つまり、抗がん剤治療はおうおうにして、がんがすでに転移し、身体が正常な機能を果たせなくなっている人に対し行われるのです。

がんに餡まれ、ただでさえ弱った状態の身体に、強い毒性のある抗がん剤を投入するのです。

がんは情報戦であり、判断するのはあなた自身

2013年、国立がん研究センターがん対策情報センターは「生涯でがんと診断される確率は男性で63% 、女性47%」というデータを発表しました。

日本人の平均寿命は男性が80.79歳、女性が87.05歳(2015年厚生労働省調査)であり、人生のどの時期にがんと診断されかによって、当然その意味合いは変わってきます。

しかし「約2人に1人ががんになる」という数字を耳にすると、誰もが不安な気持ちになりますね。

たとえ自分がならなくても、家族がなってしまうかもしれません。

それほど、がんは身近な病気になってしまったのです。

私自身、多くのがん患者さんに接し、実際にこの手で多くの患者さんに抗がん剤をお渡しし、そこでたくさんの人間模様を見てきました。

今でこそ食事やウォーキング等による薬に頼らない健康法をお伝えしている私ですが、30代の頃には毎日、17錠の薬を常用していました。

おかげさまで、10年ほど前にすべての薬を手放して以来、私は心身ともに健康で、ちょっとした病気にかかっても、自分の免疫力だけで完治させる自信があるほどです

(実際、数年前にインフルエンザにかかったときは睡眠をとるだけで、ほどなく完治しました)。

とはいえ、「これだけやっているのだから、がんになるはずはない」などとは思っていません。

2人に1人ががんになると聞けば、「自分ががんになる可能性はゼロではない」と素直に受け止めています。

がんは命にかかわる恐ろしい病気でありながら、非常に身近な病気であるだけに、私自身も、自分と家族の命は自らで守らなければ、という強い思いがあります。

テレビドラマや映画などで、がんになった人やその家族が、担当医に「どうか先生助けてください」と懇願するシーンがよくあります。

担当医も「力を尽くします」などと神妙な面もちで答えるわけですが、ひとつしかない自分の命を、他人の手にすべてゆだねてしまうのはいかがなものでしょう?

本書では、がんに関するさまざまな情報の中から、みなさまに知ってほしいものを提示し、同時に私なりのがんに対する姿勢や考え方についてお伝えしていきます。

縁あってこの本を手にされた方には、旅行に行くときにいろいろな情報を集めるように、何かを買うときに複数の商品を見比べてその中から選ぶように、この本もがんに関する―つの情報として読んでいただきたいと思います。

そして、読み進める中で「こういうことがあるんだ」「それは本当なの?」など、さまざまな感想や意見を持っていただきたいのです。

もしも、「そんなことはあり得ない」と思われたら、ぜひご自分で調べてみてください。

私とは違う考え方をする方がいても、それはその方の考え方です。

本書でお伝えする内容をどうとらえ、どう受け止め、それをどう活かしていくのかは、読んでくださったみなさんに判断していただければと思います。

薬剤師は抗がん剤を使わない (廣済堂健康人新書)
宇多川久美子 廣済堂出版 2016-12-23
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by ヨメレバ