船瀬俊介連載コラム
マスコミのタブー200連発〈140〉(月刊『ザ・フナイ』)
トヨタが、あぶない…!EV競争でガラパゴス化 ――イーロン・マスクvs豊田章男、もはや決定的敗北
トヨタ没落は日本経済の死を意味する
トヨタが、あぶない。その未来危機は、もはや壊滅的だ。
破滅は、トヨタにとどまらない。
それは日本の自動車業界全体を巻き込みかねない。それほど、迫りくるクライシスの規模は凄
まじい。
危機の正体を、一言でいおう。
――EV開発――の致命的立ち遅れだ。
中でも、トヨタの出遅れは、目を覆わんばかりだ。
EVとは、いうまでもなく、電気自動車(ElectricVehicle)の略。世界EV開発は、猛速どころではなく〝爆速〟の勢いで進んでいる。
日本を代表する自動車メーカー、トヨタは、EV開発で周回遅れどころか、3周は出遅れている。
もはや世界の競合メーカーは、はるか地平線の彼方だ。
おのおの、未来に向かって爆速で猛進している。後ろ姿すらはるか、けし粒のようだ。後塵を拝するなどといった、生やさしいものではない。
日本勢は、はたして、追いつけるのか……。
中でもトヨタは日本最大企業だ。
トヨタが潰れたら、日本経済が潰れる。それほどまでに、同社の命運に、日本の未来がかかっている。
トヨタのトップは豊田章男社長(65歳)だ(写真1)。
そのトヨタと対照的なEVメーカーがある。
それがテスラだ。率いるのは若きCEOイーロン・マスク(50歳)(写真2)。
テスラは、2003年創設。まだ、創業以来18年という若い会社だ。
それでいて、EV開発と生産で世界トップの座を快走する。
いまや、EV開発のカリスマ的存在であるイーロン・マスクは、2008年、CEOに就任。
同社の社名は、科学史における最大天才ニコラ・テスラ(写真3)へのリスペクトから命名された。
イーロン・マスクによれば、同社の目的も明快だ。
「…… E V やソーラー発電などによって、持続可能エネルギーへの移行を推進する」
トヨタvsテスラは、まさに、豊田章男vsイーロン・マスクの対決に帰結する。
両者のリーダーシップが勝敗を決する。それは、まちがいない。
〝水平展開・ピラミッド〟と〝垂直統合・直線ライン〟決定的違い
両者の企業風土と経営の違いを見てみよう。
トヨタは、水平展開・ピラミッド方式だ。
テスラは、垂直統合・直線ライン方式だ。
分かりやすくいえば、トヨタは傘下に膨大な下請け企業群を抱えている。そのピラミッド構造の頂点に立つのがトヨタ本社だ。これらを総称して、トヨタ・グループと呼ぶ。
まさに、運命共同体だ。トヨタの躍進を支えたものに、有名な〝カンバン方式〟がある。下請け企業が納期にピタリ合わせて部品を納入する。
まさに、一糸乱れぬサプライ・チェーンの奇跡がなしえた技だ。
さらに、トヨタ戦略は、水平展開である。
はやくいえば多方面に展開する。自動車でいえば、ガソリン車、ディーゼル、ハイブリッドさらには水素燃料電池車など、多面展開している。
さらには、トヨタホームなど住宅部門、スマート・シティ構想など、本業とは無関係な分野にも、積極的に投資、グループ会社総数は805社にも及ぶ。
この膨大な企業群が〝ピラミッド〟を構成している。
これに対して、テスラの経営は超シンプルだ。それは〝直線ライン〟で構成される。つまりは、タテ一直線だ。
トヨタは下請け企業に外注する。
つまり、アウト・ソーシング。テスラは、それを一切しない。すべて内注(イン・ソーシング)だ。
すべてはテスラ本社が取り仕切る。ということは、すべてイーロン・マスクが決裁する。
つまり、若きCEOが全権を掌握している。
これが、テスラ爆速スピードの根源にある。
垂直投合は、意思決定システムだけではない。資源調達から販売戦略まで、その垂直統合の思想は、貫かれている。
テスラ爆速を見せつけるのが、売り上げの凄さだ。超人気車種モデル3は、世界EV販売で、ぶっちぎりの1位だ。さらにテスラYも5位に付けている(図4)。
資源は自社調達、CM、ディーラー、営業ゼロ
ガソリン車からEVへ――。その切り換えの成否を分けるのがバッテリーの調達だ。
EVシフトが成功するか? 失敗するか?
それは、一にも二にもバッテリーの確保にかかっている。
テスラは、EV全車種の搭載バッテリーをすべて内製化している。その垂直統合システムを象徴するエピソードがある。
高性能リチウムイオン・バッテリーにニッケルは不可欠だ。そして、世界最大生産国はインドネシア。
しかし、同国はニッケル輸出に厳しい制限をかけている。すると、イーロンの提案は大胆だ。
同国に、ニッケル鉱山経営を申請したのだ。部品調達に必要なら鉱山も自前で所有する。
まさに、垂直統合戦略の真骨頂だ。
さらに刮目すべきは、テスラは一切CMを制作しない。これは、トヨタなど日本の自動車メーカーにとっては仰天だろう。
彼らは、クルマは――CMで売るもの――という固定観念がある。
しかし、イーロンは違う。
「いいものはSNSで拡散される」。
つまり、ネットのクチコミで十分という自信。だからディーラーもゼロ。セールス営業部員もゼロ……。
つまり、CM、ディーラー、営業無し。
それでは、テスラのEVを買いたい人は、どうしたらいいのか?
ネットで購入を申し込む。まさに、アマゾン通販で買うのとまったく同じ。オンラインで〝ポチッ〟とすれば、それで商談成立……!
セールス来訪もなければ、ディーラーに出向くこともない。
トヨタをはじめ、既存メーカーは、これら間接経費に膨大なコストをかけている。
それが、テスラはゼロ……!
まさに――高性能、低コスト、低価格――という同社独自の企業戦略を、爆速で加速している。
テスラ・ショック!年に150万円も値引き
この革命的な企業風土だけを見ても、同業他社がテスラに追いつくことが、極めて困難なことが分かる。
それだけではない。テスラは大胆不敵な値引きを突然行った。
2021年初頭、世界の自動車業界に衝撃が走った。それが、テスラ・ショック。同社は、EV価格を、最大約150万円もの大幅値引きを断行したのだ。
これだけの大胆な値引きを行える体力は他社にはない。さらに、テスラの競争力を支えている戦略の一つに、EV車種の圧倒的な少なさがある。
開発に当たってイーロン・マスクの頭には〝SEXY〟の四文字があった。
だから、テスラS、テスラX……Yなど、これら文字を冠する計画だ。
しかし、同社ベストセラーEVは〝テスラ3〟。これは訳ありだ。イーロンは〝テスラE〟と命名する予定だった。
しかし、ダイムラー社がすでに商標登録済み。そこで、仕方なく、〝E〟をひっくり返して〝3〟とした。〝SEXY〟が〝S3XY〟となった。
少し、ニヤリとする話。これだけでも、車種の少なさが際立つ。
販売するのは四車種のみという圧倒的少数精鋭――。それだけで、同社は世界最大EVメーカーに昇り詰めたのだ。
2021年、上四半期(二期目)で、30万6421台を達成。年産で約80万台だ。前年比1・6倍!まさに爆速成長ぶり。
100万、200万台も時間の問題だ(図5)。
これら四車種のデザインは、ほとんど同じ。そこには、見かけではなく、性能で売る……というイーロンの自信が伝わってくる。
他メーカーは、数十もの車種ごとに、外観、デザインに、凝りに凝りまくっている。
それだけ、さらにコストはかさむ。逆にテスラのシンプル主義は、さらなるコスト・ダウンを可能にしている。
そのEV性能も凄まじい。
テスラSは、わずか2・7秒で時速100㎞まで加速。F1レーサーですらついていけない加速力だ。
一充電の航続距離は630㎞以上。そして、高速道路は、ほぼ自動運転を可能にしている!(写真6)
操作パネル、PCアップグレード、車体一体成型
テスラの奇跡は、まだまだ続く‥‥‥。
テスラの運転席を見たら、だれでも呆気にとられるだろう。
おなじみの計器パネルがゼロ! ただ縦長ディスプレイしかない。つまり、すべての表示と操作は、このパネルで行う。テスラは〝走るコンピュータ〟なのだ。
そして、驚嘆すべきは、その電子制御の集中力だ。
あらゆる機能を一つのソフトで制御する。
これは、既成ガソリン車では絶対に不可能だ。EVだからこそ全機能をコンピュータ制御できる。
さらに、凄いのは、購入後も搭載ソフトが逐次アップデートされること。
各オーナーの走行記録がビッグデータで蓄積される。その走りの個性に応じて、EV性能がカスタマイズされる。
それも、ディーラーなどに出向く手間は一切不要。無料で、またたくまに、性能はアップする。
これは、PCアップグレードと同じ。販売後カスタマーサービスが、あなたの所有するテスラを、刻々、性能向上させる。
だから、買った後も、航続距離延長も可能だ。
既成の自動車技術者……クルマ屋、エンジン屋には、想像すらつかないだろう。
さらに、1年で一気に150万円値引き……。
それができた理由がある。それが、リチウム電池価格の下落だ。巷間では「電気自動車は高い」が常識だった。
価格のほとんどが電池コストで占められていたからだ。
しかし、その電池価格は、年々、下落傾向にある。
10年前に比べて10分の1近い値下がり率だ。だから、テスラは大胆不敵に大幅値引きに打って出たのだ。
さらに、価格は下がり続ける。すると、EVとガソリン車の優位性は、完全に逆転する。
内燃機関のクルマは、すべてガラパゴスに取り残される。
加えて、業界を震撼させるテスラの技術革新がある。それが、車体一体成型だ。ボディのアルミを鋳造して一気プレス……で完成! アッという間の早技だ。
⑴スピード、⑵精度、⑶強度、⑷少部品、⑸低コスト、⑹高リサイクル。
精度も強度も増して、従来比で部品数は約100分の1に激減。それで超低コストが可能に。
加えて、ほぼ100%車体リサイクルも可能になった。
イーロン・マスクは、これら超高性能の超ギ ガ・ファクトリー巨大工場を、中国、上海を皮切りに北米(テキサス)、ベルリン……など世界5か所に爆速で建設を進めている(写真7)。
これらは、おのおの、年間100万台生産を可能にする。
工場内を見ると、ほとんど従業員の姿が見受けられない。つまり、あらゆる工程を行うのはロボットだ。それが、もの凄い速さで、もの凄い数のテスラ車を生み出している(写真8)。
深夜料金でEV電費は約10倍優れる
以上――。テスラが他社の追随を許さないほど先行していることが、よく分かる。
しかし、それだけではない。さらに、テスラが誇るのが〝自動運転(オートドライビング)〟だ。
それは、まさに自動車業界では、見果てぬ夢だった。テスラはこの分野でも他社を引き離している。
最新リポートによれば、高速道路で、テスラ車はほとんどハンズフリーで走行可能という。
さらに、テスラはワン・ペダルで運転可能だ。
つまり、アクセルだけで操作できる。アクセルを離せば、自動ブレーキがかかり、ストップ。これは、EV独特の〝回生ブレーキ〟のなせる技だ。
この〝ブレーキング〟エネルギーを、モーターが回収して、発電し、バッテリーに蓄電する。
他方、ガソリン車などはブレーキ・シューを摩擦で発熱させて無駄に消えていく。
ここでも、EVの省エネ性能に軍配が上がる。さらに、特筆すべきは、EVの燃費の安さだ。
たとえば、ガソリン車はガソリン1リットル、150円で約15㎞走る。つまり、1㎞当たり10円。
ところが、高性能EVは電気代換算で1㎞当たり1円で走る。概算でEV燃費(電費)はガソリン車より約10倍も優れる。
その理由の一つが安い深夜料金で充電するからだ。
つまり、EVは各家庭でフル充電する。
それが、一般的な使用法だ。
これは、ガソリン車に比べて、はるかに長所となる。ガソリン車は、わざわざガソリンスタンドまで行かないと給油できない。
そして、少子化で、給油スタンドの数は急速に減っている。
EVは帰宅して、プラグを差し込んで終わり。スマホとまったく同じ。翌朝は、フル充電で目いっぱい走れる。
一充電1000㎞! 中国製EVの衝撃・・・
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ザ・フナイ 2021年10月号 マスコミのタブー200連発〈139〉 より
月刊『ザ・フナイ』は、船井幸雄が「世の中を変える意識と行動力を持つ人に向けて発信する」と決意し、(株)船井メディアより2007年10月号から創刊した雑誌です。
選りすぐりの豪華執筆陣による、新聞・テレビなどが報道しない世界の裏の動き・情報を、毎月お届けしています。
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船瀬俊介 (ふなせ しゅんすけ)地球環境問題評論家
著作 『買ってはいけない!』シリーズ200万部ベストセラー 九州大学理学部を経て、早稲田大学社会学科を卒業後、日本消費者連盟に参加。
『消費者レポート』 などの編集等を担当する。また日米学生会議の日本代表として訪米、米消費者連盟(CU)と交流。
独立後は、医、食、住、環境、消費者問題を中心に執筆、講演活動を展開。
船瀬俊介公式ホームページ= http://funase.net/
船瀬俊介公式facebook= https://www.facebook.com/funaseshun
船瀬俊介が塾長をつとめる勉強会「船瀬塾」= https://www.facebook.com/funase.juku
著書に「やってみました!1日1食」「抗がん剤で殺される」「三日食べなきゃ7割治る」「 ワクチンの罠」他、140冊以上。