まちがいだらけの老人介護―心と体に「健康」をとりかえす82の方法 船瀬 俊介 (著)

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まちがいだらけの老人介護―心と体に「健康」をとりかえす82の方法

なぜ、日本の寝たきり老人はヨーロッパの8倍、アメリカの5倍、もいるのか?

だからあなたは“寝たきり”に! これでいいのか! ?日本の介護! 寝たきり老人、欧米の5倍以上!

死ぬまで10年要介護! こんな老後はごめんだ! おかしな日本の介護を一刀両断!!

「私は介護士、やめました!」目の前で、きっばりいい切った、ひとりの女性Oさんの決意です。

ーどうして?とわたしはたずねます。

「先生のおっしゃるとおりです。介護も医療とまったく同じです。老人をわざと寝たきりにして、食事漬け、クスリ漬けで、死ぬまで食いものにしています」

—いわゆる介護利権だネ……。

「そうです!介護現場はひどすぎます。わたしは、本に書いて告発したいぐらいです」

この介護現場からの生々しい告発にたいして、政府はなにも答えてくれません。介護学のセンセイたちも、知らぬ顔です。

そして、ベッドでうつろな顔で、ただ死ぬのを待つお年寄りの数は、空恐ろしい勢いで増えています。

日本の寝たきり老人は、ヨーロッパの八倍、アメリカの五倍といわれます。

なぜ、これだけの大差がついてしまったのでしょう?

日本は長寿国だと、政府は自慢します。しかし、人生の終わり約一0年は、要介護老人なのです。

あなたは、二〇二五年問題……という言葉を聞いたことがありますか?

そのとき、「団塊の世代」約八〇〇万人が、後期高齢者七五歳以上になるのです。

このまま、日本の介護が行われ続けるなら、かれらもまた欧州の八倍、アメリカの五倍……という“寝たきり老人”となるでしょう。

その膨大な介護費用を、いったいだれが負担するのでしょう?

その膨大な介護労働を、いったいだれが負担するのでしょう?

北欧は天国、日本は地獄……

この本は、そんな介護の現実にたいする提案です。介護の現場では、介護士さんたちの笑顔に心がいやされます。

そして、思いやりと、いたれりつくせりの介護……。

お年寄りたちも、それに安心して、たよりきっています。そのとき、ふと、一人の友人Y君の言葉を思い出しました。

Y君は、大手生命保険会社の部長をしています。彼と久しぶりに酒をくみ交わしているときに、こうつぶやいたのです。

「……日本の介護は地獄です」

おどろいて、そのわけを聞き返しました。彼は会社の研修旅行で北欧の介護施設を視察して回ったそうです。

そのとき、欧州の老人介護と、日本の介護の格差に、がくぜんとしたのです。

どこが、ちがうの?わたしは、たずねます。

「向こうの介護とは『自立させる』こと。ベッドに寝たきりなら、起きれるように。起きることができたら、立てるように。立つことができたら歩けるようにする……。それが、基本です」

ーナルホド、そうか……。

「まず、歩いて自分でトイレに行けるようにする。歩けたら、今度は外に散歩させる。介護士は、付き添っているけど、じっと見まもるだけ。手を取ったりとかしない。そして、転びそうになったときだけ、サッと支えてやる」

ーそうして、ふつうの生活ができるようにする。

「そうです。だから、向こうの施設の老人たちの顔は明るい。笑顔で迎えてくれました。日本の老人は、顔が暗い。死んでいます」

ーそういえば、老人施設のお年寄りは、表情が沈んでいる……。

「あちらは天国、日本は地獄です……ネ」

彼は、ポツリとつぶやいて、大きくため息をもらした。

完全介護は“最悪介護”とは!

ー日本は、なんでもやってあげるのが“介護”だと思っている。

「そうです。完全介護は、“最悪介護”なんです」北欧の老人施設を視察に訪れたとき、彼は、お年寄りたちが、全員ハーイ!と手を振って、笑顔で迎えてくれたことに、おどろいた。

日本の老人施設では、まず見られない光景でしょう。

さらに、お年寄りたちが、めいめい、カラフルな衣装でおしゃれを楽しんでいることにも感心した、という。

「年をとっても、人生を前向きに楽しんでいる!恋愛?それもあるでしょうね」この、あちらと、こちらのちがいには、国民性もあるでしょう。

「日本人は、やさしい、親切だ」これは、海外から来た方たちが、口をそろえていう言葉です。

その“やさしさ”が、介護現場での“完全介護”となっているのですね。

しかし、欧州の介護施設を見てきたY君は、完全介護は“最悪”と首をふるのです。

お年寄りのためと思ってつくしている介護が、知らないうちに、その生きる力と心を奪ている……としたら、これほど悲しいかんちがいはありません。

ー自立を助ける—

そのためには、どうしたらいいのか?その提案として、本書をまとめました。

本書の提案は、介護関係者のためだけではありません。これから、老いていくあなた自身への提案でもあります。

ーひとに頼らず、おのれに頼れ!—

まずは、その気概をもって生きていきましょう!

依存心でドンドン老ける

わたしは、この本の帯に「なぜ、日本の寝たきりは、ヨーロッパの八倍、アメリカの五倍もいるのか?」と、問いかけています。

その原因のひとつが、完全介護なのです。

欧米の介護の目的は、自立させること。そして、日本の介護の目的は自立させないこと。現場のひとたちに、そんな“悪意”はまったくないでしょう。.

しかし、結果として、自立させない介護が、日本ではあたりまえになっているのです。なんでもしてやると、依存心でドンドン老ける。

これが、完全介護の恐ろしいところです。そして、弱り、死んでいく。……弱らせる。死なせる。

これが日本の介護の真の目的ではないか?とすら思えてきます。

脳は不活性、手先は不器用に

上膳据膳とは、他人まかせの優雅な暮らしのたとえです。

食べる物がいつでも目の前に出てくる。食べたら片付けてくれる。なんとも、ラクチンの極みです。だけど、わたしにいわせれば、じつにツマラナイ人生です。

わたしは、現在、一人暮らしです。一日一食のシンプルライフです。

その一日一回の食事は、手料理します。それが、ささやかな楽しみです。どんな料理を作ろうか?どういう素材と調理を工夫するか?

料理の楽しみとは、創意工夫の楽しみです。料理をするひとは頭がいい……、とよくいわれます。料理は、いろいろな食材のコンビネーションの妙なのです。

そこで、脳が幅広く活性化され、手の繊細な動きが上達していきます。

他人に料理を作ってもらう。それは、これらの楽しみと喜びを奪われることです。

掃除や洗濯もそうです。掃除洗濯や整理整頓も、それなりに頭と手をつかいます。創意と工夫と達成……これぞ、生きている証しです。

それをすべて他人にまかせる。自分はなにもしない。

とうぜん、脳は不活性化していき、手先はひたすら不器用になっていくでしょう。これが、上膳据膳つまり、完全介護の大きな問題点です。

自分でできることは、自分でやらせるーーこれを原則とすべきです。


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