「健康食」を信じてしまうのが日本人です。
けれど、そこには大きな落とし穴があります。
医学者・科学者の立場から著者は警鐘を発します。
次のことはウソ。医学的な裏付けはまったくありません。それを本書では一つ一つ実証していきます。
・ビタミンCで風邪が予防できる ・サラサラ血液は健康の証
・コラーゲンで肌しっとり ・アルカリ性食品は体にいい
・日本人はカルシウム不足 ・漢方薬は副作用がない
・カテキン入りのお茶は体にいい ・天然添加物は安全
・アガリスクで癌が治る ・ウコンは肝臓にいい・・・・
「健康食」の常識が覆る、目からウロコの新・「家庭の医学」!
納豆を食べても血液はサラサラにならない
「納豆を食べれば血液がサラサラになる」というウソの情報は、約20年前、ある学者、が「納豆のナットウキナーゼが血栓を溶かす」
そして「納豆を食べると脳梗塞や心筋梗塞の要因である血栓を溶かす」と言い出したことが始まりのようです。
その後「血液サラサラ」のブームに乗って「納豆を食べると血液がサラサラになる」という健康トリックがテレビで取り上げられるようになりました。
かつて「発掘!あるある大事典Ⅱ」では、納豆をテーマにしていました。
まず、試験管内で人工的に血栓を作っていました。血管の中の血栓をイメージさせているようです。
そこにナットウキナーゼを入れると、血栓がみるみる溶けていき、30分後には血栓、が半分になっていました。
まるで、血管内の血栓も同じように溶けていくかのようです。
さらに、ナットウキナーゼを発見した学者が出てきて「出来た血栓を溶かす食品は世界に納豆しかない」と言っていました。
このように言われれば、「納豆を食べていれば血栓は溶けてしまう」と思ってしまい、人によっては「脳梗塞や心筋梗塞になっても納豆を食べれば治ってしまう」
と極端に間違った考え方をして、納豆を過信してしまう人もいるかもしれません。
ではどこに健康トリックがあるのでしょうか?
このように思い込んでしまうのは、納豆を食べれば血栓を溶かすナットウキナーゼは腸から吸収されると信じているからでしょう。
ところが、納豆を食べるとナットウキナーゼは胃腸の消化液で分解されます。
たとえ分解されずに腸にいったとしても、分子量(粒子の大きさ)が大きすぎて腸から血液、には吸収されません。
ナットウキナーゼの分子量は2万です。腸からは分子量が約1万以下の物質しか物理的に血液中には吸収されません。
その証拠に、人が納豆を食べて血液中にナットウキナーゼが検出された、などというデータはありません。
当然、脳梗塞や心筋梗塞になった人が納豆を食べて血栓が溶けた、などという確実な症例もありません。
これらの疑問についてフジテレビに質問しましたが、回答はありませんでした。
これが、「納豆のナットウキナーゼが試験管内で血栓を溶かす」という事実を強調しておき「納豆を食べると血栓が溶ける」「納豆を食べると血液がサラサラになる」という間違いを信じ込ませる健康トリックなのです。
また、ナットウキナーゼが試験管内の血栓を溶かすのは事実でしょうが、血栓だけを特異的に溶かすのではなく、タンパク質を溶かす単なるタンパク質分解酵素である可能性があります。
もし人にナットウキナーゼを点滴したら、ナットウキナーゼはタンパク質ですから拒絶反応を起こすかもしれません。
さらにナットウキナーゼが血栓のみならずタンパク質を分解する酵素であれば、血小板や赤血球や白血球が壊れてしまい出血しやすくなったり、貧血になったり、黄痘になったり、免疫力が低下するかもしれません。
農薬を使うために有機認証を取る
長年、無農薬で農作物を栽培してきた農家の人がいました。天候不順などで、どうしても農薬を使わざるをえなくなり、無農薬の表示を減農薬の表示に変えようとしました。
そのことを納入業者の人に話したら、「使った農薬は有機認証で認められているので有機認証を取ったほうがよい」と言われました。
確かに減農薬と表示してあるより、有機認証の農作物のほうが高く売れ、消費者にも安心感を与えられるでしょう。
しかし、この農家の人はそんな消費者を欺くようなことはできない。
しかも、有機認証を取るためには費用もかかるとの理由で有機認証を取らず、正直に減農薬と表示して販売しました。
納入業者の話によれば、同じ状況で農薬を使って有機認証を取り、有機農産物を販売しているところがあるようです。
これでは農薬を使うために有機認証を取るようなものです。こんな消費者を欺くような有機認証制度は、即刻改めるべきです。
「健康食」はウソだらけ (祥伝社新書 109) | ||||
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