家庭の人体力学 井本 邦昭 (著)

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家庭の人体力学

薬を飲む前に、できることがある――。

不調を感じた場合、症状に対する対処療法が基本となる西洋医学と、症状が現れる原因を探る井本整体―人体力学―の処方の違いを、22の症状ごとに対比して紹介。

カラダにあらわれる不調の原因と、家庭でできる症状の改善法がわかります。

病院、薬に頼る前に、自分、家族のために、今できることがあります。

自然治癒力を上げるための処方箋

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具合が悪くなり内科にかかります。すると医師はこう言います。

「どうしましたか?」

「風邪を引いたみたいで……。熱があって咳も出ます」

そこで、医師は患者の口を開かせ喉の状態を診るなどして、

「のどが赤く腫れていますね。炎症を抑える薬と解熱剤、咳を止める薬を出しておきますね」と薬の処方をして診察は終わります。

目に見える症状にピンポイントで効く薬を出して、症状を抑え一刻も早く通常の生活に戻るお手伝いをする、といった感じです。

しかし、井本整体は違います。

まずは患者さんにどのように発症したのかを聞きながら、目で診て手で触って体の状態を確認します。

脊椎の状態や腹部の硬直具合などを診て、体の声をひろいながら、その人の体の使い方の癖や生活習慣からくる負担などを読み解いていきます。

ただし、問診できないこともあります。

それは赤ちゃんのように言葉を話せないとき、また、ときには相手が本当のことを言わないこともあるからです。

ですから、相手の言葉に惑わされない確かな観察の技術が必要となります。

病気の進行状態にもよりますが、体が快復に向かい熱を出していると判断された場合には患者さんにこう言います。

「熱が出てよかったですね。しっかり出し切って、上手に経過させましょう」
 
井本整体の役割は、人間の生きる力を引き出してサポートすることだと考えています。

すべての人には自然治癒力が備わっていて、病気やケガをすれば、治る方向に力が働くということは誰もがわかっていることです。

井本整体の根幹「人体力学」とは

まっすぐ立っているつもりでも、ちょっと右肩が下がっている。なぜか靴のかかとの外側ばかり早くすり減る。

スカートがいつの間にか回転している。あなたにも思い当たることはありませんか?このような体の癖は、10人いれば10通り存在します。

人それぞれ、体を動かすリズムがあり、楽な筋肉の動かし方があるからです。

しかし、心理的なストレスが加わったり、オーバーワークをしたり、加齢によって筋肉が落ちてくると、そのバランスが崩れることがあります。

その人なりの使い勝手が崩れてしまうと、あちこち別の場所に負担が波及し、病を発症することになるのです。

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井本整体の根幹となる「人体力学」とは、それらの人たちの体の特徴を、診て、触って、読み取りながら本来のリズムで生活ができるように手助けをするメソッドです。

一例を出してみましょう。「肩がこって仕方がない」と井本整体に患者さんが訪れました。

今までマッサージをしたり、湿布薬などでまぎらわせてきましたが、すぐにぶり返し、苦痛に感じるようになったといいます。
 
その人の体を診ると、胃の裏側あたりの筋肉(脊柱起立筋群)がかなり硬直していました。

これは胃腸が絶え間なく動いていることにより胃腸を動かす内臓筋が緊張していることから起こる症状です。

それが影響して僧帽筋まで硬直が広がり、血流をとどこおらせ、慢性的な肩こりを引き起こす原因となっていたのです。

患部から離れた部位にも原因がある

肩こりは食べすぎが原因だった――。これは西洋医学を主とする整形外科では、とうてい診断されないことだと思います。

整形外科では、患部を診るのが当たり前だからです。

しかし、人体力学では「その痛みが起こったのはなぜなのか?」ということを念頭に置き、その人の体全体の動きを診て原因を突き止めていきます。

そして、大元の原因を見つけることで、その人本来の働きを取り戻すための手伝いをする、というのが井本整体の指導なのです。


本書は、西洋医学で診断された病名に対して、井本整体ではどう診るか、どう解決していくかを症状別に記しています。

読み終わったあと、自分の体の声を素直に聞くことができる力をつけていただき、何らかの症状が出たときでも、薬に頼ったり、病院に行く前に、この『家庭の人体力学』が自分自身の力で健康へと向かう最大の手引きとなれば幸いです。

井本邦昭

家庭の人体力学
井本 邦昭 日本文芸社 2015-12-08
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